コラム

作業療法士という仕事の将来性について

作業療法士の職業について将来性を考える際には、他の医療職や福祉職との比較を行い、待遇や社会的地位などの要因も考慮することが重要です。以下では、作業療法士と他の医療職や福祉職との比較を通じて、作業療法士の将来性について詳細に検討します。

1.作業療法士の役割と必要性

作業療法士の役割
作業療法士は、患者や対象者が日常生活の活動を達成できるように支援する専門家です。日常生活の活動とは、人が日々行っていること、すなわち眠ったりご飯を食べたり、学校へ行ったり、カラオケに行ったり、掃除をしたり、犬の散歩をしたりなど、普段人が当たり前に行っていることすべてを指します。作業療法では、それを「作業」と呼んでいます。作業療法士は、病気やケガ、高齢などの日々の活動をやりにくくする要因をなくす、そうした人の状態を安定して適応させることでその人の生活をしやすくしていきます。作業療法士が働く場所としては、リハビリテーション病院、介護施設、学校、診療所、就労支援施設、行政、企業などで活動します。

必要性
作業療法士の存在は、高齢化社会や障害者支援、子どもの発達支援、メンタルヘルスケアなど多くの分野で必要とされています。人が生活する上で必要になる活動=「作業」を詳細に分析し、介入の方法を提供する専門職は作業療法士だけです。現在わが国には約10万人の作業療法士がいて、毎年国家試験に4,000人程度合格しています。我が国の人口が現在約1億2千万人ですから、人口で割ると1200人に1人の割合です。高齢化率が35%で子どもや脳卒中、がん患者などを含めた作業療法の対象となり得る人の数を人口の40%と考えると、1人の作業療法士が500人以上抱える計算になり、高齢者の増加や発達障害の対応が増えるにつれ、まだまだ作業療法士の需要が高まっています。

ちなみに理学療法士(PT)は、現在わが国に20万人以上おり、毎年8,000名程度の理学療法士が誕生しています。理学療法士の対象となる人が、スポーツ整形等も含め人口の50%と考えると、理学療法士一人当たりの対象人口は300名程度ですので、養成増加数も考えると、今後も作業療法士の需要の方が高いと考えられます。

 

給与
作業療法士の給与は、地域、経験、訓練、雇用場所によって異なります。一般的に、医療施設や大都市圏での給与はやや高く、新卒からのスタート給与は他の医療職に比べて競争力があるとされています。医療施設の収入は、わが国では診療報酬という全国一律の価格で決まっており、医療施設に働く人の待遇はその影響を大きく受けます。各医療機関の経営状況も関係しますが、我が国全体の医療や経済状況についても関心を持つ必要があります。

待遇
作業療法士の待遇は、雇用主や勤務場所によって異なりますが、一般的には年金や健康保険といった社会保険に加入されるので、安定感のあるキャリアと言えます。休日についても、その地域の内情にはよりますが、シフト制で月9-10日の休日が多いようです。

3.社会的地位

専門性と認知度
作業療法士の専門性は、医療・リハビリテーション分野で高く評価されています。彼らは患者の生活の質を向上させる役割を果たし、多くの場面で不可欠な存在として認識されています。

ただ、対象者の生活や経験に合わせた活動を用いて介入するといったスタイルなので、とてもユニークな介入方法に見えます。そのことが、初めて作業療法を見る人にとっては理解しにくい要因だと考えられます。

深く作業療法を知っていくと、その魅力を感じる人がとても多いです。作業療法の活動は、今後医療・福祉業界だけでなく、人が「作業」をしている場でますます広がっていくと考えられます。

 

4.専門分野の拡大

高齢者ケア
作業療法士は、高齢者のリハビリテーションと日常生活支援において重要な役割を果たしています。高齢化社会の進行に伴い、高齢者ケアの分野での需要が今後も増加すると予測されています。

メンタルヘルスケア
メンタルヘルスの重要性が高まり、作業療法士は精神的な健康の支援においてますます重要な役割を果たしています。ストレス管理、社会参加の促進、精神障害のリハビリテーションなど、幅広いメンタルヘルスケア分野で活躍が期待されています。

子どもに対するケア
近年、発達障害に対する関心が高くなっていますが、心理的・環境的な課題だけでなく、認知や運動といった生物学的な課題も指摘されています。作業療法士は、学んだ専門的な内容から、子どもたちの行動を科学的に分析し、その原因がどこにあるかを突き止め、どのように対処することが求められるのかといった提案ができる数少ない専門職です。

それらが改善を見ると、劇的に行動が変わる子もいます。そうした行動の変化を、学校や家庭と連携を取って生活の場面に活かしていくという重要な役割を果たしています。

5.教育と資格の要件

教育
作業療法士になるためには、文部科学省で認定を受けた大学・短期大学、あるいは厚生労働省の認可を受けたで専門学校での教育必要で、学校の課程を卒業すると作業療法士国家試験の受験資格がもらえます。
作業療法士養成課程は、最低101単位・3150時間以上の教育内容が必要です。この中に含まれますが、学外に出かけて教育を受ける臨床実習が合計22単位以上必要とされています。
約22週間、月に直すと約6か月間は学外での実習になります。
他の医療職に比べても、臨床実習の時間がかなり多い設定になっています。

資格
養成課程を卒業後、作業療法士国家試験を受験して合格し、厚生労働省に登録することで、作業療法士の資格を取得できます。近年では国家試験の試験日は2月下旬、合格日は3月下旬になっています。

6.国際的な展望

国際的な需要
作業療法士の国際的な需要も増加しており、日本から他国で働く機会も徐々に増えています。特に発展途上国や高齢化が進んでいる国々での需要が高まっています。

総括すると、作業療法士の職業は将来性が高く、医療分野や福祉分野で重要な役割を果たしています。高齢化社会や障害者支援、メンタルヘルスケアの増加に伴い、需要が拡大しており、給与や社会的地位も、国によってはかなり高い水準にあります。アメリカやカナダなどでは6年制教育になっており、より一層専門職としての地位が高くなっています。発展途上国では、JICAなどで青年海外協力隊として海外勤務を重ねる道もあります。

どの国であっても、作業療法士は他の医療職や福祉職との連携を強化し、専門知識とスキルを活かして患者やクライアントの生活の質を向上させています。将来性のある医療職や福祉職を検討する際に、作業療法士の職業を真剣に検討する価値があると言えるでしょう。

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