コラム

丸い背中とお漬物~作業療法の魅力〜

作業療法の魅力について

リハビリテーションを行う上で、そしてより良い効果・結果を引き出すために、必要なもの(要素)はいったい何でしょうか。考えれば沢山あるかもしれませんが、その中でも私は最初に『意欲』を挙げたいと思います。セラピスト(=療法士)側の意欲は当然のこと、これが無いのは論外としますが、患者様、利用者様側の意欲は、実はまちまちであるのが現状です。

例えば精神科におけるリハビリテーションの場合、ご本人に「自分が病気である」という自覚が乏しかったり、それを認めることに何とも抵抗があったり、あるいは「自信が無い」「何も出来ない」「こわい」「楽しくない」などの訴えから、スタッフの働きかけが空振りに終わることも少なくありません。何もせずゆっくり休むことも大切な治療のひとつではあるのですが、ずっと自室(病室)にいるだけというのも、あまり健康的ではありませんし、場合によっては、ますます「何も出来ない」「こわい」が増幅してしまい、負のスパイラルに陥ってしまうこともあります。しかしながら、リハビリテーションを行うための『意欲』を引き出すことは、意外と簡単ではないのです。

『意欲』について考えるとき、私はある漫画を思い出します。国民的漫画「サザエさん」の中のエピソードです。

「サザエさん」に出てくるエピソード

敬老の日、あるお婆さんが、背中を丸め、お部屋で静かに座っています。お孫さんらしき子供たちが「おめでとう」と次々にプレゼントを持ってきて、お婆さんは丸い背中で座ったまま、それを優しい笑顔で受け取ります。とても微笑ましいシーンです。お婆さんは、目を細めてじっと座っています。

次のシーンでは、娘さんらしき人物がお婆さんのところに来て、こう言います。「漬け物の漬け方を教えて」と。その瞬間、お婆さんの丸い背中はシャキッと伸び、両目がクワッと開き、「あいよっ!」と足取り軽くお部屋を飛び出していきます。

「漬け物づくり」も「作業療法」になりうる

作業療法における「作業」とは、生活におけるあらゆる行為を指しています。「漬け物を漬ける」というのも、もちろんそのひとつですし、それを用いてお婆さんの心身が健康的になるのなら、立派な作業療法と言えるでしょう。お婆さんの意欲を高め、より効果的なリハビリテーションを行うためには、はたしてどのような作業が良いのか。「漬け物」は万能ではありませんが、先ほどのお婆さんにとっては、それが最高に効果的な作業だったように思われます。

その方その方にとっての必要な「作業」を見極め、それを提供する。対象者の方の『意欲』を引き出し、より良い効果を導き出す。いつの間にか、楽しくリハビリテーションになっている。そういった点で専門性を発揮できるのは、作業療法の大きな魅力ではないかと、私は考えています。

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この記事を書いた人

小林 誠 先生

作業療法の専門学校を卒業後、千葉県内の精神病院に入職し、主任を勤める。 責任者として、後輩に対する指導と、実習生に対する指導を行うにつれ教育の道を目指し今に至る。

座右の銘:一期一会

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