コラム

精神保健福祉士の仕事について

精神保健福祉士について

精神保健福祉士は精神保健福祉法で定められた国家資格の名称になります。役割についても規定がありますが、簡単に言い換えると、「精神的な病気や障害を抱える方に対して、主に生活支援を行う人」のことを言います。では、生活支援とはどのような行為なことを指すのか・・・イメージがつきませんよね。実際にAさんの事例を通してご説明していきましょう。

 

AさんとB精神保健福祉士との出会い

Aさんは若い頃から統合失調症を患っていました。ご家族とは疎遠となり、今は一人暮らしをしています。ここ数年、聞こえるはずのない音に悩まされ、外出することができなくなっていました。しばらくすると、その音が自分の悪口に聞こえるようになり、怖くなって自分で救急車を呼び、郊外の大きな精神科病院に入院しました

病院では回復のための治療や投薬が開始されましたが、入院中のAさんは穏やかで特に問題はなく、早期の退院が見込まれる患者さんでした。しかし、主治医と何を話したのか、Aさん自身には全く記憶がありません。

度々同じような状態となり、入退院を繰り返すようになったAさんに対し、精神科病院は、アパートで一人暮らしを続けるために、訪問医療、訪問看護、家事援助のホームヘルパーの利用を勧めました。ホームヘルパー制度は福祉サービスであるため、サービス利用にあたりAさんの個別支援計画を立てることになったのが、B精神保健福祉士です。

B精神保健福祉士がAさんに初めて会った時、Aさんは聞かれたことに対して、イエスかノーか、せいぜいそのくらいの返答しかできなかったそうです。もしかすると、自分の気持ちを口にせず、文句も言わず、言い訳も興奮もしないAさんは、「入院中の様子が穏やかである」と判断されていたのかもしれません。

B精神保健福祉士の支援

B精神保健福祉士は、ゆっくりと時間をかけて実に辛抱強く、Aさんが心を開いてくれることを待ちました。何かと理由をつけて電話してみたり、近くに用事があるときはちょっとだけ顔を見にいってみたり・・・そのうちに、AさんはB精神保健福祉士に、「実は、アパートの水道の蛇口やシャワーヘッドから、自分を罵倒する声が聞こえてくる」と、いつもとは別人のように、激しい感情を伴って告白してくれました。このことを口にしてはいけないと指示されていたため、どうしても怖くて誰にも話すことができなかったのです。

それを聞いたB精神保健福祉士は、Aさんが、一日中、誰とも会わず誰とも喋らない、人と全くかかわらない生活が「当たり前」になっている点に、課題を感じました。そこで、まず、自分の家ではない場所でお風呂に入ることを勧めました。幸い、近くの地域活動支援センター(主に精神障害者を対象とした地域福祉施設)にシャワーを貸し出すサービスがあり、Aさんはこの施設を利用するようになりました。次に、Aさんの通院に同行し、主治医と相談して訪問看護とヘルパーの日数を増やし、毎日誰かしらがAさんを訪問するような仕組みを作りました。もちろんこの間にも、B精神保健福祉士は、こまめにAさんへ連絡し続けました。様々な人との会話によって、Aさんは自分の思っていることを話しても良い、話しても大丈夫と考えられるようになり、少しずつ自分を取り戻していきました。

Aさんの変化

次第にAさんは、自分の生活は自分で守らなければいけないと思うようになりましたが、かといって、どうすれば良いのか見当もつかなかったので、B精神保健福祉士に相談してみました。早速、B精神保健福祉士が、少し離れた場所ではありましたが、手作り昼食の提供がある生活訓練の事業所を見つけてきました。この時は他の支援者から、「まだ焦らなくても良いのでは」との意見があったそうです。「でも、自分からチャレンジしてみたいという思いが強く、できるかできないかは全く気にしていなかったんです。B精神保健福祉士だけが応援してくれた感じ。」と振り返るほど、Aさんの気持ちはいつの間にか前向きになっていました。

その後のAさん

現在、朝から夕方まで作業訓練を行っているAさんですが、Aさんがますます頑張れるようになったのは、意外なことに食堂職員の存在でした。ちょうど、Aさんのお母さんくらいの年齢の食堂職員が、「今日の体調はどう?」「今日は寒いわね、風邪ひかないようにね」「今日のおかずはおいしいかな」等々、毎日かけてくれる何気ない言葉に、本当の家族に迎えられているような温かさを感じていました。Aさんの心が、「一人でなんとかしなければいけない」という思いから解放され、「明日も頑張ろう、私はこれでいいんだ」というように考えることができるようになったと言います。B精神保健福祉士が考えた通り、人との交流を通して、Aさん自身の居場所や拠り所を見つけたようでした。

まとめ

B精神保健福祉士がAさんの支援で係わった、精神科病院の入退院支援を行う相談員、地域活動支援センターの支援相談員、生活訓練事業所の支援員も精神保健福祉士が担っています。このように、一人の利用者に対し複数の支援者がチームとして本人を支えていきますが、そのための連絡調整を行うのも精神保健福祉士の役割でもあります。しかし、何より、精神保健福祉士とは、本人の個性、障害病気の特性、生活環境を見立てながら、本人の生活上の問題を解決する専門家です。つまり、生活を送る上で本人が感じる課題に対して、「本人と一緒に考え立ち向かう人」といえるでしょう。B精神保健福祉士は、Aさんを直接介護するわけでも、定期的に家事を手助けしたわけでもありません。Aさんの人生において、まず信頼しあう関係性を作り、Aさんが生きていく術を考え、時にはアドバイスし、時には先回りして道を整え、時には一緒に悩んできたのです。

 

精神保健福祉士の活躍

精神保健福祉士は、精神科などの医療機関、精神保健福祉センターや自治体などの行政機関、精神障害者支援施設や事業所、司法関係機関、学校などに配置されています。また、精神保健領域の対象者は、双極性障害、気分障害(うつ病・双極性障害)、依存症、発達障害、高次脳機能障害、認知症等です。昨今ではこのような枠組み以外でも、心の不調を抱えた結果として日常生活に支障がある場合、例えば不登校、引きこもり、ゴミ屋敷、虐待、生活困窮など、取り上げられる社会問題の中にも精神保健福祉領域の対象者になるケースが増えています。

現代の社会は、以前に比べ、複雑で多様になってきたと言われています。そして、これからもこの傾向が強まるでしょう。今を生きる私たちにとって、精神保健福祉士の需要はますます高まってきているのです。

みなさんが少しでも精神保健福祉士に興味を持ってくださったら、ぜひ東京福祉専門学校のオープンキャンパスに来てみてくださいね♪

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