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Aさんは病院勤務時に担当していた難病の方で、
自分の体をほとんど動かせず、話すこともできず、自分の気持ちを相手に伝えることができず、常に苦虫を噛んでいるような表情の方でした。
作業療法士として関わる中で入院中に笑顔を見ることはほとんどできませんでした。
もっと何かできたのではないかと自分の力不足を感じたものでした。
Aさんに再会したのは数年後。
訪問看護ステーションに活動の場を移したときでした。Aさんは以前よりも具合が悪くなっており寝たきり状態になっていましたが、表情は別人のように朗らかでした。
ご主人と娘さんが献身的に介護されており、寝たきりになっても尊厳ある生活をされているのだと強く感じました。そのような状況で作業療法士になにができるか、自分にとって大きな課題でした。

Aさんは寝たきりが長く、車椅子に座ることも苦痛でほとんど外に行くことがなく、家族も本人も外に行くことを希望していました。
結果からいうと車椅子を工夫することである程度座れるようになったために、Aさんの世界が広まったと言うことなのですが、外の桜を見たときの笑顔は私にとって忘れることができないものとなりました。
その後、車椅子ごと乗れる自動車をレンタルしてドライブにまで行けるようになり、寝たきりで自分では動けないけれども外出を楽しむことができるようになりました。
あくまでも在宅生活では家族が主役ですが、ほんのわずかなことでも障がいをもった方がより楽しく生きていくきっかけになれることが、私の作業療法士としての一番の仕事のやりがいにつながっています。

平野努
・作業療法士
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