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海外で働きたい、夢がかなって南米へ
作業療法士になって12年になります。初めの6年間は日本の病院で、あとの6年間は海外で仕事をしてきました。ぜんぶ精神障害の分野です。今も、精神障害を持つ方の生活を研究しています。Fさんにだったのは、南米ボリビアの精神病院でのことでした。私は以前から海外で働いてみたいというきもちがあった上に、サルサというラテンアメリカのダンスが大好き。そして派遣されたのが、世界遺産にも登録されている、スクレという古い街にある病院だったのです。
この病院では、編み物、ダンス、読み書きといった活動が作業療法として行われていました。でも、患者さんの中には、そういった活動に参加できなくらいに症状が重い人も多くいます。Fさんもそのひとり。生活の多くの場面で、看護師さんからの声掛けや誘導が必要でした。看護師さんに連れられて作業療法室に来ても、ただいすに座っているだけで時間になると帰っていくだけという毎日が続いていたのです。
私にもできた!
「刺繍をしてみませんか?」
ある日私はぼんやりと座っているFさんにすすめてみました。するとたどたどしい針使いではありましたが、少し出来ました。「まぁ 上手!」と言うと、顔にも表情が生まれてきます。こうしてFさんは刺繍グループに参加するようになり、自分から作業療法室まで来て、「下絵を描いてほしい」と布を探してきたりするようになりました。そして、だんだん難しい作品もできるようになっていったのです。
これまで「何もできない」と否定されてきたFさん。そんなFさんが「自分にもできた」、そして「ほめられた」体験を持つ中で、自分の生きる価値を取り戻した瞬間に、心の中から生まれた言葉だと思うのです。このFさんの言葉も、私にとって何よりの贈り物でした。

鈴木章子
・作業療法士
学校を卒業後、作業療法士として病院に勤務。その後、青年海外協力隊員としてボリビア、コスタリカに派遣。NGOの一員としてカンボジアにも駐在経験がある。作業療法は、相手によって違うだけでなく、相手が置かれている地域や環境、そして作業療法士の価値観や技量によっても、何がベストか変わってくる。そのことを学生に伝えたい。
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