コラム

子どもと関わる作業療法士のお仕事とは?

子どもと関わる作業療法士のお仕事とは?

みなさんは、子どもと関わる作業療法士がどんな仕事をしているか知っていますか?
今回は、最近人気が高くなってきた子どもを対象にした作業療法について紹介します。

子どもの現場で働く作業療法士の中には、とにかく子どもが大好きという方や、人に対して精神的ケア、心理的ケアをしたいという気持ちがある方が多くいます。
筆者が作業療法士として子どもと関わる現場を希望した当時は就職先が少なく、療育センターの育休代替職員という、1年だけの仕事に就きました。そのあとは発達支援センターを経て、就学前の子どもたちと関わっていく中で、就学後の生活も見てみたいと思い、そこからフリーランスで作業療法士をすることに決め、その辺りからは運と縁に恵まれ、特別支援学校をベースに様々な区の発達支援センターで働いたり、色々な仕事をさせていただきました。

今回は、そんな子どもと関わる作業療法士の仕事についてご紹介します。

子どもの作業療法とは?

一般的に作業療法士は、病院や施設にいて、ケガや病気になってしまった大人に対して精神面をケアしながらリハビリをすることが多いようです。
それに対し、子どもの作業療法とは、発達の遅れや偏りのあるお子さん(遺伝的な疾患、発達障害、病気の後遺症など)に対して、遊びを中心にしたいろいろな作業活動を通して個々のお子さんの発達課題や、現在・将来の生活を考慮した関わりを行います。
さらに、障害があっても家庭や学校、社会で生活できるような工夫を一緒に考えたりして、支援していきます。

作業療法を実施している場面では、おもちゃを使ったり遊具のようなものを使ったりするので、たまに「子どもと遊んでいるだけみたいで、家でやっていることと同じなのでは?」と思われることもありますが、その通り!子どもと遊んでいるのです!だって、子どもは遊ぶことが仕事。「辛いリハビリをやりなさい」といっても、子どもは本当にマイペースで正直者。嫌なこと、辛いことは絶対にやってくれません。

そのため、おもちゃを使ったり、子どもが好きなことをやりながら、またはうまくこちらの遊びに誘いながら、そのお子さんに必要な動作や手の使い方、認知や理解力の向上につながるやりとりをします。今日はどんな手を使って子どもの心を掴もうか、という駆け引きもあり、それもまたとても面白いところですよ。

さらに、対象が大人の作業療法と大きく違うことは、『作業療法中に保護者の方が一緒にいる』ということです。自分の大切なお子さんが、「発達が遅れている」「病気や疾患がある」ということは、どれほど心配で不安に感じるでしょうか。お子さんを診ることはもちろんですが、保護者の方への対応や会話も非常に大切にしたいところです。
また、お子様の今の状態と、どのようになればお子さんと保護者の方が生活しやすいか、ということを一緒に確認して共通認識を深めます。保護者によっては、あまり相談する機会や相手がいないと、自分の考えだけに陥ってしまい、悲観してしまうことも少なくありません。しかし他者と共通認識を持つことで、自分が全て抱えなくていいんだという安心感を持ってもらうことができます。

そのことも、子どもと関わる作業療法士の仕事としては大変重要なところです。ですので、コミュニケーション力はたくさん磨いていくことが求められます。コミュニケーション力というのは、自分から話をすることと、他者の話をじっくり聞くことの2点が重要です。これは、日々の生活の中で鍛えられることなので、難しい課題だと心配しなくても大丈夫です。

子どもと関わる作業療法士の働き方

働く場所、働き方は多岐にわたります。ほんの一例ですが、いくつか紹介したいと思います。

  • 児童発達支援センター

いわゆる「発達障害」や、特性のあるお子さんに対し、おもちゃや遊具のようなものを使いながら問題点を検討し、どのようなかかわりが発達を促すことにつながるかを検討し、日常生活に必要な能力や社会性を身に付けていきます。

  • 医療療育施設

総合的な医療施設の中で作業療法が行われます。重症心身障害など、重い障害のお子さんもいらっしゃいます。身体の障害がメインであることが多いですが、心理や認知といった機能にも影響があることもありますので、総合的なチームで診療します。

  • 特別支援学校

特別支援学校には、肢体不自由あるいは知的、視覚、聴覚、病弱という種別があります。幼稚園から小学校、中学校、高校があり、児童生徒に対して、個々の発達課題を考えて、作業療法士は教師と一緒に対象者を直接指導したり、教師に専門的知識と技術を伝えたりします。

  • 保育園・幼稚園の巡回

保育者から依頼がある場合、保育者が気になるお子さんが園で遊ぶ様子やお食事の場面を見学させてもらい、保育者にお子さんの特性や課題、対応方法などを伝えます。

  • 教材開発アドバイザー

こうした子どもを対象にしている学習教室などで使用する教材を開発したり、現在ある教材の改善のアドバイスをします。

  • オンラインでの発達相談

診断の有無にかかわらず、日々の子育ての悩みやお子様とどのように関わっていったらよいか、どのようなことをしたらスムーズに身の回りのことや細かい動作ができるようになるかなどといったあらゆる相談に専門家の目から答えます。

  • 勉強会や講演会など

地域にいる保育士や学校の教員、発達支援をしている企業向けに、発達障害や発達支援についての勉強会や講演会、セミナーなどを行います。

小児分野の作業療法士の今後

いかがでしたか?発達障害の作業療法士、少しはイメージがついたでしょうか。いろいろなところで働けて、とても楽しそうだと思いませんか?

筆者は作業療法士になってもうすぐ14年になりますが、本当にたくさんのお子さんとその保護者の方に出会ってきました。どの出会いもその一つ一つが私の宝物であり、人生の財産となっています。
今は結婚をし、2児の母ですが、週に1回1時間だけ保育園の訪問をしているのと、子ども達が夜寝た後に、オンライン相談等を毎日自宅で実施しています。子どもを産んでもなおすぐに働けるなんて、こんなにありがたいことはないし、社会から必要とされていると感じ、とても幸せです。
小児分野の作業療法士には様々な仕事があり、様々な場所から作業療法士を求めていただけるからこそ、このような働き方ができるのだなと思って、この仕事に就いて良かったなという思いと、本当にやりがいがある仕事だなという思いを毎日感じています。

世の中には、障害や病気の名前はつかないけれど、「不器用」「運動が苦手」「おもちゃでうまく遊べない」「体力がない」などというお子さんはたくさんいます。その子たちが、学校などの集団の中に入ると、その中でうまく遊べなく、それによって人間関係がうまく作れないことにつながる恐れも出てきます。ほんの少しの工夫で、その中で遊ぶことができるようになれば、その後の人間関係も、それを通して学ぶ社会性も変わります。それは、その子の将来が変わる可能性につながります。

少子化も進んでいる現代は、社会が複雑になってきて価値観も多様化しています。「子どもとはこうあるものだ」というステレオタイプのものの見方では、理解しにくい状況も生まれています。その時に、広い視点で子どもの発達を捉えることのできる作業療法士が世の中に求められることは、必然と言っていいでしょう。そしてそれは当分の間、社会が複雑になればなるほど必要になる仕事であると思います。
子どもと関わる作業療法士が増えることは、世の中が幸せになることにつながります。ぜひ、自分の進路として「子どもとかかわる作業療法士」について考えてもらいたいと思います。

子どものリハビリが体験できる!オープンキャンパスはこちらから

関連学科

作業療法士科【4年制】
対象:高校卒業以上の方

人の心と身体に寄り添うリハビリのプロを目指す!

詳細はこちら

コラム:カテゴリー

作業療法士

コラム:タグ

こどもリバビリ作業療法作業療法士子育て

この記事をシェアする

カテゴリー