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医療ソーシャルワーカーになるには?必要資格やスキルを紹介

医療ソーシャルワーカーは、医療と福祉の専門知識を組み合わせて患者を支援する職業として、多様な役割を担っています。超高齢社会の日本では、病院や地域医療の現場でその重要性が年々高まっており、医師や看護師などの他職種との連携や幅広い制度の理解が求められます。
そこで今回は、医療ソーシャルワーカー(MSW)として働くために必要な資格やスキル、就職までの具体的な手順をわかりやすく解説します。医療現場で人の役に立ちたいと考えている方や社会福祉士を目指している方は、ぜひ参考にしてください。

医療ソーシャルワーカー(MSW)とは?

医療ソーシャルワーカー(MSW)とは、病院やクリニックなどの医療現場で、患者やその家族が抱える心理的・社会的な問題に対して、具体的な支援や助言を行う専門職です。単に相談を聞くだけでなく、治療や療養に伴って生じる経済的困難や生活上の問題に対して、各種制度や地域の支援サービスを活用しながら解決策を提案する役割を担っています。
医療ソーシャルワーカーの主な目的は、患者が安心して治療に専念できるような環境を整えることです。そのために、医師や看護師、リハビリスタッフ、ケアマネジャーなどの他職種と情報を共有しながら、患者の生活状況や価値観に配慮した支援を行います。
高齢化が進む現代社会において、入院から退院後の生活まで一貫して支援する医療ソーシャルワーカーへのニーズはますます高まっており、医療現場で欠かせない専門職として注目されています。

医療ソーシャルワーカーの仕事内容

医療ソーシャルワーカーは多岐にわたる業務を担当しています。具体的な仕事内容は、以下のとおりです。
医療ソーシャルワーカーの仕事内容

  • 経済的問題に関する相談(医療費助成制度、障害年金、生活保護などの案内・申請補助)
  • 退院後の生活支援(介護サービス、訪問看護の手配、住宅環境の整備)
  • 精神的なサポート(患者本人や家族への心理的ケア、カウンセリング)
  • 地域との連携(地域包括支援センター、行政機関、民間福祉団体との調整)
  • 就労・復学支援(リワーク支援、学校との連携など)
  • 終末期の支援(緩和ケアや在宅看取りに向けた準備)

一般的なソーシャルワーカーとの違い

一般的なソーシャルワーカーは、高齢者福祉施設、障害者支援施設、児童相談所など福祉全般の領域で支援を行います。一方、医療ソーシャルワーカーは医療機関に常駐し、病気や怪我により生じる問題に特化したサポートを行うのが大きな特徴です。
たとえば、働けなくなった方の生活支援や難病、がん治療に伴う経済的・心理的困難への対応、緩和ケアなど、より医療的な事情に基づいた専門知識と判断力が求められます。医学的知識、福祉制度への理解、対人援助スキルの3つをバランスよく身につけることが、医療ソーシャルワーカーには重要です。

医療ソーシャルワーカーになるには

医療ソーシャルワーカーになるために、特別な国家資格が必要とされているわけではありません。しかし、実際の採用では「社会福祉士」や「精神保健福祉士」の国家資格が求められることが一般的です。以下で、医療ソーシャルワーカーになるための具体的な流れを解説します。

1.医療福祉系の学校で専門知識を学ぶ

高校卒業後、大学や専門学校に進学して、社会福祉や医療福祉に関する専門的な知識を身につけます。福祉制度や医療の基礎知識だけでなく、職業倫理やコミュニケーション力、制度活用理解など、実務に必要な能力を幅広く学びます。学内では事例研究や実技演習が行われることも多く、現場を想定した実践的な学習が中心となります。
大学と専門学校の違い

  • 大学
    社会福祉学部、福祉系の医療学部、看護・保健医療系学部などで、医療と福祉の連携を重視した福祉教育を受けられます。
  • 専門学校
    社会福祉士養成課程を設置し、医療現場で即戦力となる人材育成に力を入れている学校が多数存在します。実習時間が大学より多く、現場経験を積みながら実践的なスキルを学べる点が特徴です。

2.専門資格の取得をする

多くの医療機関では、社会福祉士や精神保健福祉士の資格保有者を優先的に採用します。専門資格を取得することで、専門知識を有することを客観的に証明でき、就職活動で大きな強みになります。資格取得には、指定された教育課程を修了し、国家試験に合格することが必要です。
最近では、養成校と国家試験対策講座が連携してサポート体制を整備している学校も増えており、受験生への支援体制が充実しています。資格取得後は、現場での即戦力として活躍できるほか、将来的な昇進やキャリアアップの道も開けます。

3.国立病院の場合は公務員試験を受ける

国立病院や国公立大学附属病院などの医療機関で勤務する場合は、地方上級公務員試験や国立病院機構の職員採用試験に合格する必要があります。この試験では、社会福祉の専門知識だけでなく、一般教養、論文試験、面接などが実施されるため、早めの試験対策が重要です。
国立病院では、医療と福祉の両分野にまたがる複雑な業務が多く、制度への深い理解力や他業種との協働力も求められます。採用後は安定した雇用条件と手厚い研修制度が用意されており、長期的なキャリア形成を目指す人には魅力的な職場環境といえます。

4.医療ソーシャルワーカーとして働く

資格取得後は、病院や診療所、福祉施設などの医療機関に就職し、医療ソーシャルワーカーとしての実務を開始します。配属先によって担当する患者層や業務内容は異なりますが、いずれも患者やその家族と密接に関わりながら支援を行うことが求められます。
現場では、患者の立場に立った支援計画の作成、他職種との情報共有、地域の支援サービスとの連携など、幅広い対応力が必要です。経験を積みながら、特定分野(緩和ケア、精神科、地域連携など)での専門性を深めたり、チームリーダーや指導的立場を目指したりもできます。資格取得後も継続的に研修会に参加し、最新の知識とスキルを身につけることが重要です。

医療ソーシャルワーカーが取得しておくとよい資格

医療ソーシャルワーカーとして働く際に、次の国家資格を取得しておくと採用や業務で有利になります。ここでは、医療ソーシャルワーカーとして、取得しておくとよい資格について紹介します。

社会福祉士

社会福祉士は、福祉分野全般で活躍できる国家資格であり、医療・福祉・介護の現場で高く評価されます。具体的には、高齢者福祉施設、障害者支援施設、地域包括支援センター、病院などで、個々の状況に応じた支援計画の作成・実施を担います。
相談援助に関する専門的知識を活用して、経済的困難や家族問題を抱える人々に対して、複数の角度からサポートが可能です。福祉制度や支援サービスの情報提供・利用支援に加えて、地域の支援機関との連携や関係機関との連携など、複雑な課題の解決にも対応する能力が求められます。
社会福祉士は心理的なケアや傾聴のスキルも駆使しながら、本人の意思決定を尊重し、自立した生活への支援を促進する役割を果たします。相談者の立場に立った柔軟な対応力と、状況を客観的に分析する判断力も重要な資質となります。

資格取得方法

社会福祉士の資格を取得するには、文部科学大臣や厚生労働大臣が認定した養成機関で、必要な専門科目や実習を修了する必要があります。進学するルートにより条件が異なりますが、主に以下のような方法があります。

  • 4年制大学の社会福祉系学部や福祉系学科で、指定された科目(相談援助、福祉制度、心理学、法律、医学など)を履修し、必要な単位を修得することで、受験資格を取得
  • 福祉系短大・専門学校を卒業した後、厚生労働省が認める相談援助業に1年以上従事し、さらに養成施設で指定科目を履修することで受験資格を取得
  • 大学で福祉系以外の学科を卒業した場合、福祉系の養成施設に進学し、1年以上の課程を修了すれば受験資格を取得

上記の方法で受験資格を得たあと、社会福祉士国家資格試験を受験し、合格することで資格を取得できます。大学の通学年数により実務経験の必要な年数が異なるため、事前の確認が必要です。国家試験は毎年1回実施され、合格率は例年30〜50%前後となっており、計画的な学習と試験対策が必要です。

精神保健福祉士

精神保健福祉士は、精神疾患や精神障害を持つ方の支援に特化した国家資格です。主に精神科病院やメンタルクリニック、地域の精神保健福祉センター、就労支援施設などで活躍できます。
近年では、一般病院や行政機関、学校現場など、活躍の場が広がっており、幅広いフィールドで必要とされる職種となっています。精神保健福祉士の主な業務は、精神疾患を抱える方やその家族が直面する社会生活上の困難を解決に導くことです。
たとえば、入院・通院に関する医療費相談、地域生活への移行に向けた住居確保支援、障害福祉サービスの利用手続き、生活リズムの改善に向けた具体的なアドバイス、家族へのカウンセリングなど、多岐にわたる支援を行います。
患者の社会復帰を実現するためには、医師や看護師などの医療スタッフ、福祉事務所の職員、地域支援機関の担当者との密接な連携も欠かせません。精神保健福祉士は、こうした多職種チームの調整役としても重要な役割を果たし、対象者の生活の質の向上を支援する専門家として高い評価を受けています。

資格取得方法

精神保健福祉士の資格を取得するには、いくつかルートがあります。厚生労働省が指定する養成機関(大学・短大・専門学校など)に進学し、必要な科目を履修するルートが基本となります。履修科目には、精神保健学、社会福祉援助技術、心理学、精神医学、社会保障制度などがあり、理論と実践の両面から幅広く学習することが求められます。
また、一般大学を卒業して実務経験を積むことで受験資格を得られる場合もありますが、卒業した大学の種類に応じて相談援助業務の経験年数が異なるため、事前の確認が必要です。以下に、精神保健福祉士になるための主なルートを紹介します。

  • 指定の保健福祉系大学で4年間学習し、国家試験に合格するルート
  • 指定の福祉系大学で4年間学習、短期養成施設に6か月通学、国家試験に合格するルート
  • 一般大学に4年間通学、一般養成施設に1年間通学、国家試験に合格するルート

国家試験は年に1回実施され、出題範囲は福祉の基本理論から精神障害者の支援技術、関連法制度、職業倫理など多岐にわたります。合格率はおおむね60〜70%前後となっていますが、十分な試験対策と実習経験が合格には不可欠です。福祉系以外の学部を卒業した人も、指定の一般養成施設に1年以上通うことで受験資格を取得できるルートも用意されています。

医療ソーシャルワーカーに求められるスキル

医療ソーシャルワーカーには、専門知識だけでなく、実際の現場で必要な実践的なスキルが求められます。患者やその家族の気持ちに寄り添い、時には医師や看護師などの医療スタッフと支援方針を調整しながら最適な解決策を導いていくため、バランスのとれた対人関係能力が必要です。以下に、代表的なスキルを紹介します。
医療ソーシャルワーカーに求められるスキル

  • コミュニケーション能力

患者や家族と信頼関係を築くために欠かせません。明確で優しく、不安を和らげる温かい対応が求められます。

  • 傾聴力と共感力

相手の話を最後まで丁寧に聞き、感情や状況を理解しながら適切に対応する姿勢が大切です。

  • 臨機応変な対応力

予期しない緊急事態や突発的な相談にも柔軟に対応できる冷静さが必要です。

  • 他職種との連携スキル

医師・看護師・リハビリスタッフ・ケアマネジャーなど他職種との円滑な連携が求められます。

  • 医療制度の知識

生活保護、障害者支援、介護保険、医療費助成制度など、多岐にわたる制度への深い理解が必要です。

これらのスキルは座学だけでなく、現場での実習や就職後の実務経験を通じて徐々に身についていきます。経験を重ねることで、状況に応じた判断や効果的な対応ができるようになり、患者や医療スタッフから信頼される医療ソーシャルワーカーとして活躍できるでしょう。

医療ソーシャルワーカーになるには専門学校がおすすめ

医療ソーシャルワーカーを目指すルートには、大学や専門学校への進学などがありますが、実践的な学習と資格取得の両立を重視するなら、専門学校への進学がおすすめです。専門学校が有利である理由は、以下のとおりです。
医療ソーシャルワーカーを目指すには専門学校がおすすめの理由

  • 実習重視で即戦力が身につく
  • 少人数制で手厚いサポート
  • 資格取得までのカリキュラムが整っている
  • 就職支援や医療機関との連携が強い

東京福祉専門学校では、医療ソーシャルワーカーを目指すための「社会福祉士・医療福祉専攻」が設置されており、資格取得と実践力をバランスよく習得できます。医療ソーシャルワーカーを目指している方は、ぜひ検討してみてください。
詳細はこちら:東京福祉専門学校|社会福祉科・医療福祉専攻

まとめ

医療ソーシャルワーカーは、医療と福祉の両面から患者を支える重要な職種です。国家資格である社会福祉士や精神保健福祉士の資格を取得することで、より専門性の高い支援が提供できます。専門学校での学習は、現場に直結した実践力を身につけるうえでも効果的です。患者とその家族に寄り添う存在として、医療ソーシャルワーカーを目指してみてはいかがでしょうか。
詳しいカリキュラムは、こちらをご確認ください。

東京福祉専門学校|社会福祉科・医療福祉専攻

関連学科

社会福祉科 4年制【高度専門士】

高校卒業以上

国家資格:社会福祉士・精神保健福祉士

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