公認心理師と臨床心理士の違いとは?比較表でわかりやすく紹介
心理の専門職を目指すにあたって、「公認心理師」と「臨床心理士」のどちらの資格を取得すべきか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。公認心理師は比較的新しい国家資格のため、資格の内容や就職先について具体的なイメージを持ちにくいという声もあります。
この記事では、公認心理師と臨床心理士の違いや、それぞれの資格取得の流れなどを解説します。
目次
公認心理師と臨床心理士の違いを比較
公認心理師と臨床心理士の違いについて、まずは以下の表で比較してみましょう。
項目 | 公認心理師 | 臨床心理士 |
資格の種類 | 国家資格
(公認心理師法に基づく) |
民間資格
(日本臨床心理士資格認定協会が認定) |
受験資格 | 4年制大学の卒業+(指定大学院の修了または2年以上の実務経験) | 指定大学院の修了が必要 |
資格取得の難易度 | 合格率の変動が大きい | 合格率は例年60%台で安定 |
必要なスキル | コミュニケーション力、観察力、洞察力、想像力、判断力など、両方に共通する要素が多い | |
仕事内容 | 心理査定、カウンセリング、関係者との面接、教育・情報提供など | 心理査定、カウンセリング、地域援助、臨床心理学の研究など |
活動分野 | 医療・教育・産業・福祉・司法 | |
給与 | 勤務先や雇用形態、経験年数によって異なる |
公認心理師は「国家資格」、臨床心理士は「民間資格」
公認心理師と臨床心理士の大きな違いは、資格の位置づけにあります。
公認心理師は、2017年に施行された「公認心理師法」に基づいて創設された、日本で初めての心理職における国家資格です。心理学の専門知識と技術を活かし、保健医療や福祉、教育、司法などの現場で、心理的な支援を必要とする人々に対して、指導や助言、援助を行う専門職として活動します。
一方、臨床心理士は「日本臨床心理士資格認定協会」が認定する民間資格で、臨床心理学に基づく知識と技術を用いて、主にメンタルヘルスの問題に対応する専門家です。活動分野は公認心理師と重なる部分も多いですが、国家資格ではない点が大きな違いです。
なお、公認心理師の資格は一度取得すると更新の必要はありませんが、臨床心理士は5年ごとの資格更新が義務付けられている点も大きな違いのひとつです。
公認心理師と臨床心理士の受験資格の違い
公認心理師と臨床心理士の資格を取得するには、それぞれ異なる受験資格があり、目指すルートも異なります。
公認心理師は「大学または専門学校の所定科目修了」
公認心理師試験の受験資格を得るには、厚生労働省が定めたカリキュラムに沿った教育課程を修了する必要があります。
資格取得には大きく分けて6つ(A~F)の受験区分があり、その中でもAとBの区分が一般的なルートです。
- 区分A
大学または4年制専門学校で所定の科目を修了し、その後、大学院で指定科目を修了した人
- 区分B
大学または4年制専門学校で所定の科目を修了し、その後、法の規定する認定施設で2年以上の実務経験を積んだ人
どちらのルートを選ぶ場合でも、指定科目の履修が受験資格の必須条件となります。
その他のルート(区分C~F)は、海外の大学・大学院で心理学関連の科目を修了した人や、
公認心理師法が施行される前から臨床心理士として活動していた人、現在、臨床心理士を目指して大学または大学院に在学中の人を対象としています。
臨床心理士は「大学卒業+指定大学院修了」
臨床心理士の資格を取得するには、日本臨床心理士資格認定協会が指定する大学院を修了することが必要です。大学院を修了すると受験資格が得られ、その後、所定の資格試験に合格することで臨床心理士として認定されます。公認心理師とは異なり、大学での専攻は関係なく、どの学部を卒業していても支障はありません。
公認心理師と臨床心理士の仕事内容の違い
公認心理師は厚生労働省によって、臨床心理士は日本臨床心理士資格認定協会によって、仕事内容が定義されています。
公認心理師 | 臨床心理士 |
● 心理支援を必要とする人の心理状態の観察と分析
● 本人への心理相談・助言・指導・援助 ● 本人の関係者への心理相談・助言・指導・援助 ● 心の健康に関する教育や情報提供 |
● 心理テストなどを用いた心理査定や面接査定
● 臨床心理学的にかかわる面接を通じて、問題解決につながるように対応と処置 ● 地域住民や関係機関に対しても支援を行う ● 援助や査定の技法を含む心理臨床の実践に関して、調査・研究を行い、その成果を発表する |
それぞれ表現の違いはあるものの、実際の仕事の内容に大きな差はありません。
ただし、それぞれの4つ目の仕事を比べてみると、公認心理師は「心の健康について教育や情報提供を行うこと」、臨床心理士は「心理に関する研究をして、その結果を発表すること」が含まれています。これは「公認心理師は人に教える活動に重点を置く」、「臨床心理士は研究することに力を入れている」、という違いがあるという見方もできるでしょう。
公認心理師と臨床心理士の就職先・活動分野の違い
公認心理師と臨床心理士の就職先や活動分野に違いはありません。どちらの資格でも「医療・教育・福祉・司法・産業」の5つの分野で活躍できます。法律による業務の独占はなく、どちらの資格でもほぼ同様の仕事に従事できます。
具体的な活動の場は、次のとおりです。
- 医療分野
(精神科を主とする病院など)
- 教育分野
(小学校~大学・特別支援学校・教育委員会など)
- 福祉分野
(児童相談所・福祉施設・障がい者支援施設・高齢者施設など)
- 司法分野
(家庭裁判所・少年院・少年鑑別所・刑務所など)
- 産業分野
(企業の健康管理室・専門機関など)
しかし、今後は公認心理師に関する制度がさらに整備されることで、勤務先や仕事内容に違いが出てくる可能性があります。その一例が医療機関での勤務です。現在は、公認心理師の資格がなくても心理職として働いていた人に対して、公認心理師とみなすという「みなし規定」が適用されています。
ただし、これは公認心理師が十分に育成されるまでの一時的な措置であり、将来的に医療現場で働くには公認心理師の資格が必須になる可能性が高いと考えられています。将来的に勤務先や仕事内容に違いが出る可能性がある点は、知っておくとよいでしょう。
公認心理師と臨床心理士の給料の違い
公認心理師と臨床心理士のそれぞれの具体的な平均給料は公表されておらず、詳細な違いについては明らかになっていません。
厚生労働省の「令和6年度 賃金構造基本統計調査」によると、両者を含む「その他の保健医療従事者」の平均月収は約30万円でした。ただし、実際の収入は勤務先や雇用形態、経験年数によって異なります。たとえば、保健医療・福祉・教育分野で働く場合の年収は300万〜400万円、司法・犯罪分野では500万〜600万円とやや高い傾向があります。
公認心理師と臨床心理士の資格取得難易度の違い
公認心理師と臨床心理士は、どちらも専門的な知識と訓練が求められる資格ですが、資格取得までの難易度や合格率には違いがあります。ここでは、それぞれの資格試験の傾向について紹介します。
公認心理師は「合格率の変動が大きい」
公認心理師試験の合格率は回によって差があり、変動が大きいのが特徴です。初回試験での合格率は79.6%と高い水準でしたが、第2回以降の合格率は46.4%〜76.2%と変動しています。
変動が大きい理由として、公認心理師という資格そのものが新しいことが挙げられます。たとえば第6回試験からは「区分G(心理職として働きながら受験するルート)」が廃止され、受験者の多くが、大学や大学院で心理学を学んだ学生中心に移行しました。これにより、より専門的な知識を持つ受験者の割合が増えたと考えられています。
臨床心理士は「例年60%台の合格率」
一方、臨床心理士試験の合格率は、毎年比較的安定しています。日本臨床心理士資格認定協会によると、過去10年間(平成27年〜令和6年)の合格率は、61.8%〜66.5%で推移しています。
公認心理師と臨床心理士になるのに必要なスキルの違い
公認心理師と臨床心理士は、業務内容に大きな違いがないことから、必要とされるスキルにも大きな差はありません。どちらの職業においても、以下のようなスキルが共通して求められます。
- コミュニケーション力
- 観察力と洞察力
- 想像力
- 判断力・客観性
スキルの面で明確な違いがある点としては、臨床心理士の業務に「心理臨床に関する調査・研究の実施」が明記されていることが挙げられます。臨床心理士はカウンセリングだけでなく、心の問題に関する研究活動にも積極的に取り組む姿勢が求められています。
一方、公認心理師は調査や研究が業務として定められてはいませんが、相談者に対して質の高い支援を行うためにも、常に新しい知識を学び続けることが重要です。
公認心理師に向いているのはこんな人
公認心理師には、人の心や感情に関心を持ち、相手に寄り添い信頼関係を築ける姿勢が求められます。複雑な問題に根気強く向き合い、支援を続けるための思いやりと誠実さが欠かせません。また、大学や大学院での専門的な学びに加え、現場に出てからも知識を深め続ける勉強熱心さが重要です。
臨床心理士に向いているのはこんな人
臨床心理士も、人の心や感情に関心を持ち、相手に寄り添い信頼関係を築ける姿勢や、根気強さ、誰かの役に立ちたいという気持ちを持つ人が向いています。
また臨床心理士は5年ごとに資格の再認定が必要であり、生涯にわたって学び続ける姿勢が求められます。そのため、心理学への深い関心や、学び続ける前向きな姿勢も大切な資質です。
まとめ
公認心理師と臨床心理士は、いずれも人の心に寄り添い心理的な支援を行う専門職です。資格の種類や取得ルート、更新制度に違いはありますが、仕事内容や求められるスキルには多くの共通点があります。医療・教育・福祉・司法・産業といった幅広い分野で活躍できる点も、心理専門職の魅力といえるでしょう。
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