「心理学」で紐解く、保育士という選択が一生の武器になる理由

「子どもが好きだけど、仕事にして大丈夫?」
でも、好きっていう気持ちだけで厳しい保育の仕事をやっていけるのか不安で……」
進路相談を受ける中で、高校生のみなさんから一番多く聞くのがこの言葉です。
でも、心理学や発達の専門家として、私ははっきりとお伝えしたいことがあります。
あなたが感じている「好き」という気持ちは、決してフワフワした単なる感情ではありません。
保育士として最も重要で高度な能力である「高い感受性(専門性の芽)」そのものだと言えるからです。
今回は、心理学の概念である「社会的参照(Social Referencing)」という視点を交えながら、未来の仲間であるみなさんに
「今、保育士という道を選ぶべき3つの理由」をお伝えします。
現在子育て中の保護者の方も、日々現場で子どもと向き合う保育士の方も、ぜひ一緒に「保育の魅力と専門性」を感じてみてください。
目次
「子どもが好き」は単なる気持ちじゃない。
~心理学が明かす、あなたの素晴らしい「才能(専門性の芽)」~
幼い子どもは、まだ言葉で自分の気持ちを100%説明することができません。
「お腹が空いた」「眠い」だけでなく、「なんだか不安」「言葉にならないけど甘えたい」という
複雑な感情(シグナル)を、泣き声や視線、微細な体の動きで発信しています。
「子どもが好き」な人が、なぜ子どもの変化にすぐ気づけるのか。
それは、あなたの脳と心が「子どもの発する微細なサイン(シグナル)を高感度で
キャッチする受信機」になっているからです。
心理学者のメアリー・エインスワースは、子どもの発達において大人の「応答性(Sensitivity)」が
不可欠であると提唱しました。大人が子どものサインに正確に気づき、適切に応答することで、
子どもは「自分は愛されている」「世界は安全だ」という自己肯定感を育みます。
だからこそ、「子どもが好き」という気持ちを持っている時点で、あなたはすでに保育士としての最も重要な「専門性の芽」を手にしているのです。
「好きだけで食べていけるの?」と心配されるかもしれませんが、「好き」は他者への高い共感力(エパシー)の現れです。
これはAI時代においても最も代替されにくい、非常に堅実で価値の高い人間力です。その豊かな感性を、
心理学では、人間が他者に対して寄せる親和的な感情や関心を「対人感受性(Interpersonal Sensitivity)」や
活かせる仕事を選ぶことは、自分の才能を活かす仕事に就くということなのです。
「アタッチメント(愛着)への応答性」という文脈で捉えます。
こどもたちが、はじめて「ダンゴ虫」を見つけた時、はじめての公園で「遊具」を見つけた時、
保護者や、保育士という身近にいる信頼できる大人の顔を見る動作をします。
・保育士が笑顔でうなずくと、子どもは安心して遊び始めます。
・保育士が驚いた顔や心配そうな顔をすると、子どもは危険を感じてその行動をやめます。
このシーンは、子育てをしたことのある人であれば、保育士でなくても「ある、ある」とこどもたちの表情を思い出せるのではないでしょうか?
子どもが不安や迷いを感じたとき、身近な大人(保育士など)の表情や態度を見て自分の行動を決める行動のことを『社会的参照』と呼びます。
生後1歳頃(9か月~12か月頃)から見られるようになる発達に欠かせない行動特徴です。
保育士になるために勉強をしたことがある人は、「視覚的断壁実験(ギブソン(Gibson E.J.)とウォーク(Walk R.D.))」として紹介された内容を、
勉強したことがあるのではないでしょうか?
あなたが保育士という仕事を選ぶべき理由
ステップ①である「気づく力」の土台なのです。 ステップ②と③(知識と技術)
自分自身の一生の武器になる:「自己効力感」を高る仕事
心理学者のバンデューラが提唱した「自己効力感(Self-efficacy=やればできるという感覚)」というものがありあます。
保育士の仕事は、子どもたちの「自己肯定感」という自分に自信を持つことができる力を育てる仕事です。そのためには、こどもたちに寄り添い、
こどもたちの出来た!を応援して、やってみたいという気持ちを育てていきます。この気持ちは子どもだけでなく大人にとっても重要です。
保育士として子どもの「できた!」に寄り添い、感情のプロセスを支える経験は、自分自身の自分を信じる力や、やればできるんだという感覚を飛躍的に高めます。
この力は、人の成長を支える土台となります。将来、あなたがどんなライフステージ(自分自身の子育て、他者との協働、人間関係の構築)
を迎えても、決して揺らがない強い力となります。仕事を通して、一生役立つ力を身に着けるチャンスがある仕事なのです。
人間にしかできない領域:「感情の共同調整」の専門家へ
AI(人工知能)がめざましいスピードで進化する今、多くの仕事が機械に代替されると言われています。
しかし、賢い選択をしようとするあなたにこそ知ってほしい事実があります。それは、「AIがどれほど発達しても、
人間の『心』の発生と発達を支える仕事だけは代替できない」ということです。
知識の教授や単純作業はAIが得意とする領域です。苦手とするのが、感情の共有や温もりを伝える事です。
小さい子供は、自分で感情をコントロールすることができません。そのため、保育士が心の声を代弁して、
「怖かったね」「一緒に遊びたかったんだよね」などと目を合わせて、時には抱きしめて伝える事で子どもたちは安心して気持ちを落ち着かせることができます。
このように保育士の仕事は、乳幼児期の心の発達において最も重要な「感情の共同調整(Co-regulation)」は、人間にしかできません。
子どもが常に落ち着いて過ごせるのは、保育士が「心の安全基地(アタッチメント)」となり、日々この感情の共同調整を行っているからです。
この専門的価値は、人だから生み出せる価値となります。AIに、代替えされない仕事としても将来性があると言えます。
例えば、こどもたちが、はじめて「ダンゴ虫」を見つけた時、はじめての公園で「遊具」を見つけた時、
保護者や、保育士という身近にいる信頼できる大人の顔を見る動作をします。
・保育士が笑顔でうなずくと、子どもは安心して遊び始めます。
・保育士が驚いた顔や心配そうな顔をすると、子どもは危険を感じてその行動をやめます。
このシーンは、子育てをしたことのある人であれば、保育士でなくても「ある、ある」とこどもたちの表情を思い出せるのではないでしょうか?
子どもが不安や迷いを感じたとき、身近な大人(保育士など)の表情や態度を見て自分の行動を決める行動のことを『社会的参照』と呼びます。
生後1歳頃(9か月~12か月頃)から見られるようになる発達に欠かせない行動特徴です。
保育士になるために勉強をしたことがある人は、「視覚的断壁実験(ギブソン(Gibson E.J.)とウォーク(Walk R.D.))」として紹介された内容を、
勉強したことがあるのではないでしょうか?
まさに、人がする仕事でAIにはこの発達の基本となる支援はできません。「こどもが好き」という才能の芽を持っていない大人は、こどもが振り返っても
特に、表情を変えることなく「どうしてこっちを見てるんだろう?」と思うだけで、目が合っても気にせず、大人同士での会話を続けてしまう。
携帯を見ていて、こどもたちを公園に連れて行っているのに、こどもたちがたくさんの初めてに出会っているのに、気づくことができません。
AIにはできにない仕事でもありますが、人であっても「向いている人」と「向いていない人」がいるということも事実です。
保護者の中には、「子育てが難しい」と感じる方もおられますので、そんな保護者への対応もやはり、人にしかできない仕事だと思います。
一生の記憶と感動に出会う:子どもが「世界を信頼する瞬間」を知る喜びがある
「この仕事でしか味わえない心の震えるような感動」を得ることができます。何でも手軽に手に入る時代ですが、
リアルな世界の人と人との繋がりは、貴重な体験です。
子どもは未知の物体や状況に出会ったとき、信頼する大人の表情を見て「これは安全か・危険か」を判断します。
画面の中のAIがどれほど笑顔を見せても、子どもは生身の人間が発する微細な体温や表情の揺らぎ(非言語コミュニケーション)で
「世界は安全だ」と学習します。その学習した瞬間のこどもたちの笑顔は、体の疲れもそうですが、心の疲れを吹き飛ばす力を持っています。
人と人との間でしか生まれない信頼関係の構築を、子どもたちは周囲の大人と作っていきます。信頼する大人から、多くのことを吸収していきます。
保護者以外の信頼できる大人(保育士)の存在は、子どもの世界に対する信頼感を二重、三重に広げていくと言えるでしょう。
仕事としてこのようなご褒美があるのは、やりがいとは違う価値を得られると思います。
おわりに:未来の保育士さんへ
子どもが新しい世界へ一歩を踏み出すとき、最初に振り返る「信頼の鏡」になること。 それが、保育士という仕事の本質的な美しさであり、誇るべき専門性です。
学校選びをする際は、単に「資格が取れるか」だけでなく、「子どもの心や発達のメカニズムをどこまで深く学べるか」という視点を持ってみてください。
そして、その学びがあなたの「自己効力感」を高める学び方になっているか?保育士として必要な知識、技術だけを学ぶ学び方かを見極めて在学中から
豊かな学びができることを願っています。
今、現場で働いている保育士の皆様、子育てを頑張っている保護者の皆様も、この乳幼児期の発達、大人になって大きく影響する能力の育成を
行っているという誇りを持って、胸を張ってこどもたちと接して頂きたいと思います。何気なくやっている、子どもが好きだから当たり前にやっている行動は、
実は、心理学で解説するととても価値ある行動であり、この行動なくして子こどもたちの発達は成り立ちません。
「三項関係」が、1歳までに確立して『社会的参照』が可能となります。今回のコラムで取り上げたことの前後にも、こどもたちの成長をつなぐために
連続して、発達課題が次々と起こっています。この年齢の子どもたちの成長は、1年間でぐんぐん伸びていきます。
大人の成長の5年~10年分にあたるのではとも言われています。小学校に入学する前に、身長も体重も伸びていく。その伸び方と同じくらい、
心の発達も、「去年の服がもう小さくて入らない」「靴をまた買い替えなくっちゃ」と感じるのと同じように、あんなに何もできなかった子が、こんなに
色んな事ができるようになって、成長を感じない日は無いのではないでしょうか?
それは、全て自分が安心して、信頼できる大人がそばにいるおかげなのです。専門性の高さとして、こどもの成長を知り、日々関わる保育士の
皆さんの、努力があってこそなのです。この夏の終わりの時期は、疲れが出やすく体調も崩しやすいと思いますが、こどもたちと笑顔を1回でも多く交わしてもらえたら
いいなと、願っております。
進路を考えている皆さんは、あなたの「好き」という素敵な才能が、専門知識と出会って大きな花を咲かせることを応援しています。
【出典・参考文献】
*「心理学者のメアリー・エインスワース」
*『保育所保育指針解説』(平成30年告示)第2章「発達過程」および「乳幼児期のアタッチメント形成」『保育所保育指針解説』(平成30年告示)第2章「発達過程」および「乳幼児期のアタッチメント形成」
*「日本の学術論文データベース(J-STAGE)」
*アメリカ心理学会(APA)の学術解説(海外の原典データ)
*Encyclopedia on Early Childhood Development(乳幼児期発達百科事典)