コラム

介護保険法改正について

“地域包括ケアシステム”

という言葉を聞いたことがありますか?一般にはなじみが少ないかもしれませんが、われわれ福祉の業界や、医療・保健分野に関わる方にとっては、いま最も取り上げられることの多い言葉のひとつです。

平成29年5月、改正介護保険法が成立し、平成30年4月1日より施行されます。今回の改正は、この“地域包括ケアシステム”の構築・強化のねらいが焦点となっています。改正の背景にはまず、我が国の高齢化の問題があります。少し、厚生労働省のホームページから引用してみます。

日本は、諸外国に例をみないスピードで高齢化が進行しています。65歳以上の人口は、現在3,000万人を超えており(国民の約4人に1人)、2042年の約3,900万人でピークを迎え、その後も、75歳以上の人口割合は増加し続けることが予想されています。

このような状況の中、団塊の世代(約800万人)が75歳以上となる2025年(平成37年)以降は、国民の医療や介護の需要が、さらに増加することが見込まれています。

このため、厚生労働省においては、2025年(平成37年)を目途に、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進しています。

(厚生労働省HPより)

次に同ページより、地域包括ケアシステムについてです。

団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を実現していきます。

 今後、認知症高齢者の増加が見込まれることから、認知症高齢者の地域での生活を支えるためにも、地域包括ケアシステムの構築が重要です。

 人口が横ばいで75歳以上人口が急増する大都市部、75歳以上人口の増加は緩やかだが人口は減少する町村部等、高齢化の進展状況には大きな地域差が生じています。

地域包括ケアシステムは、保険者である市町村や都道府県が、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じて作り上げていくことが必要です。

地域包括ケアシステムは2011年の介護保険法改正で大きなポイントとなりました。それから6年経ち、これを強化し軌道に乗せることが、喫緊の課題となっています。詳細については、他の先生のコラム掲載予定がありますので、ここでは割愛しますが、改正介護保険法は、高齢者が地域で長く住み続けられるよう、地域包括ケアシステムの構築・強化を法制化することが柱となっています同時に、増大する医療・介護給付費(医療と介護にかかるお金)に対応し、介護保険制度の持続を確保することが目的です

そして、その介護保険法の改正内容は、大きく分けて次の5つです。

①保険者機能の強化による自立支援・重度化防止に向けた取組の推進

②新たな介護保険施設の創設

③地域共生社会の実現に向けた取組の推進

④利用者負担の見直し(2割負担者の一部が3割負担へ)

⑤介護納付金の総報酬割の導入。被用者(会社員等)に適用。

5つを簡単に見ていきましょう。

①保険者機能の強化による自立支援・重度化防止に向けた取組の推進

保険者機能の強化とは、簡単に言えば市町村の機能の強化ということです。具体的には、市町村が、その地域に特有の高齢者医療・福祉の課題を分析し、対応策の計画・実行を行います。

②新たな介護保険施設の創設

介護医療院という、新たな介護保険施設を創設し、「長期療養のための医療」と「日常生活上の介護」を一体的に提供します。一般に、医療と介護の現場は分かれていることが多いのですが、重度化した、介護度の重い高齢者は、医療と介護が同時に必要となることが多いからです。

③地域共生社会の実現に向けた取組の推進

地域の支援体制の強化のために、住民や福祉関係者が、分野を超えて協力体制を築いていくこと。福祉サービスには、「分野」があります。つまり高齢者福祉については高齢者福祉専門の施設や機関がサービスを提供する、というスタイルが一般的で、これは児童福祉、障害者福祉など他の分野においても言えることです。この垣根を「地域に共生する住民」という共通項で捉えなおします。障害や課題を抱えた方も、福祉専門職も、老若男女問わず、すべての住民という観点で、垣根を越えて協力体制を作っていこうとする試みです。これが、地域包括ケアシステムの構築です。またここでは、地域のネットワークを活性化させるためのコーディネーターの活躍が期待されています。

④利用者負担の見直し(2割負担者の一部が3割負担へ)

介護保険サービスは、サービスにかかる費用の一部を利用者が自己負担し、残りが保険料などから支払われる仕組みです。病院に行ったときに、医療費の一部を自分で支払う仕組みと同じです。介護保険サービスは、もともと利用者が利用料の1割を支払う、というきまりでした。たとえば1回のサービス利用料が5,000円だったら、利用者はその一割の500円を支払う、ということです。この「1割負担」が前回の改正(平成27年施行)により変更されました。一部の所得の多い者が、2割負担することになりました。今回改正ではさらに、2割負担者の中でも所得の高い層が3割負担することになります。高齢者が増え、介護給付費(介護にかかる費用)が増大するなかで、介護保険制度そのものを持続していくためにやむを得ない選択ということのようです。

⑤介護納付金の総報酬割の導入。被用者(会社員等)に適用

医療保険を使うためには、毎月、医療保険(健康保険)料を納める必要があります。これと同じく、40歳以上の人は、介護保険料を支払います。介護納付金とは、この介護保険料を、収入額に応じて増減する仕組みです。一度にどんと値上がりすることの影響を踏まえ、こちらは29年8月からすでに段階的に施行されています。公務員や一部大手企業の会社員などの支払う介護保険料は増え、中小企業の社員は減額されます。これも④と同じく、介護保険制度をいかに持続させるか、という課題に対する施策です。

最後に

改正介護保険法のポイントを見てきました。複雑でわかりにくい法改正ですが、興味のある方は厚生労働省HPなどの資料にあたっていただくことをお勧めします。

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この記事を書いた人

小島 修 先生

大学卒業後、社会福祉士を取得し、高齢者福祉施設の相談員として5年間働いた後、社会福祉士を目指す学生の支援をしている。 現在FUREAI事業所で相談員として活躍している。

座右の銘:人生いつも勉強

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