コラム

木 NEW

保育現場に広がるAI活用の今とこれから~活用事例や国の取り組みに学ぶ~

近年、さまざまな業界でAIの活用が進んでいます。保育の現場も例外ではありません。「AIが保育士の仕事を奪うのでは?」と感じる人もいるかもしれませんが、現在注目されているのは、保育士の代わりになることではなく、保育士の業務をサポートし、子どもと向き合う時間を増やすという使い方です。保育の仕事には、子どもの成長を見守ることに加えて、記録や計画、保護者との連絡、安全管理など、多くの業務があります。こうした業務の一部をICTやAIで効率化することで、保育士が専門性を発揮しやすい環境をつくることが期待されています。

1 保育現場にAIが広がり始めている理由

保育業界でAIやICTの活用が進んでいる背景には、いくつかの課題があります。代表的なのが「保育士不足」「業務量の多さ」「書類負担の増加」「ICT化の推進」です。

保育士の仕事というと、子どもと遊んだり、生活を支援したりする姿をイメージする人が多いでしょう。しかし実際には、日々の記録、指導案、発達記録、連絡帳、保護者対応など、子どもと直接関わる以外の業務も数多くあります。これらを丁寧に行うことはもちろん大切ですが、事務作業に時間がかかれば、その分、子どもと関わる時間を確保することが難しくなる場合があります。

そこで期待されているのがAIです。AIを使って文章作成や記録などの業務をサポートできれば、保育士はより多くの時間を子どもの観察や遊び、声かけ、保護者とのコミュニケーションなどに使えるようになります。

国も保育の質の向上や業務負担の軽減を目的として、ICT・AIの活用を進めています。つまり、AIは「保育士の仕事をなくすもの」ではなく、「保育士が本来の専門性を発揮するためのサポート役」として考えられているのです。

2 AI活用の今

では、実際に保育現場ではAIがどのように活用されているのでしょうか。現在注目されている活用方法を見ていきましょう。

① 書類・記録の自動化

保育士の負担の大きな部分を占めるのが、「連絡帳」「日誌」「指導案」「発達記録」などの書類業務です。

AIを活用したシステムでは、保育中に残したメモや写真などをもとに、記録の文章作成をサポートする機能が増えています。例えば、写真から遊びの様子を整理したり、保育士が入力した簡単なメモを文章としてまとめたりする使い方が考えられます。

具体的には、次のような活用が挙げられます。

・写真をもとに、遊びのねらいや発達の視点を文章化する
・日誌の下書きをAIが作成し、保育士が内容を確認・修正する
・連絡帳の文章作成をサポートする

ここで大切なのは、AIが作った文章をそのまま使うのではなく、保育士が内容を確認することです。子どもの状態やその日の出来事を最もよく知っているのは、実際に子どもと関わっている保育士です。AIを下書きや整理のために使い、最終的な判断を人が行うことで、業務効率と保育の専門性を両立しやすくなります。

書類作成にかかる時間を減らすことができれば、子どもの表情を観察したり、一緒に遊んだり、個々の子どもに合わせて声をかけたりする時間を確保しやすくなります。

② 園児の見守り・安全管理

AIやセンサーを活用した見守りシステムも、保育現場で注目されている分野です。

AIを活用することで、園児の動きを検知したり、危険につながる可能性のある状況を通知したりする仕組みが考えられます。また、午睡中の見守りを支援するシステムなども導入され始めています。

例えば、

・園児の動きを自動で検知する
・危険な行動などをアラートで知らせる
・午睡中の状態確認を支援する
・園庭などでの転倒・衝突の検知を支援する

といった活用があります。

こうした技術の目的は、保育士の目や判断を置き換えることではありません。あくまで補助的な役割として、保育士がより安全に子どもを見守るための情報を提供するものです。

特に安全管理では、AIだけに任せるのではなく、保育士による確認や判断が欠かせません。技術を上手に取り入れることで、保育士の負担を軽減しながら、安全に関する確認を支援することが期待されています。

③ 保護者とのコミュニケーション支援

保護者とのコミュニケーションも、AIやICTによって効率化が期待されている分野です。

保育園では、連絡帳のやり取り、欠席連絡、写真や動画の共有、日々の情報発信など、保護者との連絡が日常的に発生します。こうした業務をデジタル化することで、情報を整理しやすくなり、保護者とのやり取りをスムーズにできる場合があります。

例えば、連絡帳の作成支援、欠席連絡の管理、写真・動画の共有、問い合わせ対応のサポートなどが考えられます。

保護者にとっても、スマートフォンなどから必要な情報を確認しやすくなることはメリットの一つです。一方で、子どもの成長や家庭での悩みなど、機械的な対応だけでは十分でない内容もあります。

だからこそ、AIやICTで定型的な業務を効率化し、人だからこそできる相談対応やコミュニケーションに時間を使うという考え方が重要になります。

④ 子どもの発達支援

AIは、子どもの発達を支援する場面でも活用が期待されています。

例えば、子どもの行動データを蓄積したり、遊びの様子を整理したり、発達に関する情報を分析したりすることで、保育士が子どもの様子を振り返るための材料を増やすことができます。

・子どもの行動データを蓄積する
・発達に関する情報を整理・分析する
・遊びの様子から発達段階を考えるための材料を提供する
・個別支援計画の作成をサポートする

といった活用が考えられます。

ただし、AIの分析結果だけで子どもの発達を判断するものではありません。子どもの表情、言葉、友だちとの関係、その日の体調など、数字やデータだけでは捉えきれない情報があります。

AIがデータ整理をサポートし、保育士が日々の関わりから得た専門的な視点を加えることで、より丁寧な発達支援につなげていくことが重要です。

3 国の取り組み|保育DXの推進

保育現場でのAI・ICT活用は、園ごとの取り組みだけで進められているわけではありません。国も保育のデジタル化、いわゆる保育DXを進めています。

資料では、主な取り組みとして次のようなものが挙げられています。

・ICT導入補助金
・保育所等における業務効率化のガイドライン
・AI・ICTを活用した保育モデル事業
・午睡チェックのICT化推進
・保育記録のデジタル化支援

こうした取り組みは、保育園がICTやAIを導入しやすくし、現場の業務負担を軽減することにつながります。

国が目指している方向性の一つは、保育士が子どもと向き合う時間をより確保できる環境をつくることです。AIを導入することそのものが目的なのではなく、保育の質を高め、保育士が専門性を発揮しやすい環境を整えるための手段として活用することが重要です。

また、保育士の働き方を考えるうえでは、業務効率化だけでなく、家庭と仕事を両立しやすい環境づくりも大切です。資料では男性の育休取得の促進についても触れられており、保育の仕事を長く続けるための環境整備という視点も重要になっています。

4 AI活用のこれから|保育の未来はどう変わる?

AI技術がさらに進化すると、保育現場でできることも広がっていくと考えられます。資料では、今後期待される活用として次のようなものが挙げられています。

・子どもの感情に関する分析の支援
・保育計画の作成支援
・保育士の業務量の予測
・園全体の運営の効率化
・保護者とのコミュニケーションの自動化
・発達支援の高度化

例えば、園内に蓄積された情報をAIが整理することで、忙しい時間帯や業務の偏りを把握し、職員の働き方を考える材料にできるかもしれません。また、過去の記録を振り返りながら保育計画を作成する際に、AIが情報整理をサポートすることも考えられます。

一方で、保育にはAIだけでは置き換えられない部分があります。子どもの「今日はいつもと少し違う」という変化に気づくこと、安心できる声をかけること、一緒に遊びながら興味や成長を見つけること、保護者の気持ちを受け止めることなど、人と人との関わりは保育の中心です。

だからこそ、これからの保育士には、AIを恐れるのではなく、必要な場面で活用しながら、AIにはできない専門性をさらに高めていくことが求められるでしょう。

AIを使えることだけが保育士の専門性になるわけではありません。子どもを理解し、観察し、考え、関わる力を持ったうえで、AIやICTも活用できる。そんな保育士の姿が、これからの保育現場でより重要になっていくと考えられます。

5 まとめ

AIは、保育士の仕事を奪うためのものではなく、保育士が子どもと向き合う時間を増やすためのサポート役として活用が期待されています。

今回見てきたように、AI・ICTは、書類作成、記録、安全管理、保護者とのコミュニケーション、発達支援など、さまざまな場面で活用され始めています。また、国も保育DXを進め、保育現場の業務効率化やデジタル化を支援しています。

これからAIがさらに進化すれば、保育士の仕事は「AIに置き換えられる」のではなく、「AIを活用しながら、より専門性の高い仕事に集中する」方向へ変化していく可能性があります。

大切なのは、AIに任せる部分と、人が担う部分を適切に分けることです。AIが情報整理や定型業務を支え、保育士が子どもの表情や気持ち、成長の変化を見つめる。そんな役割分担ができれば、子どもにとってより安全で豊かな保育環境につながるでしょう。

これから保育士を目指す人にとっても、保育の専門知識や子どもと関わる力に加えて、ICTやAIを活用する力を身につけていくことは、これからの保育を考えるうえで大切なテーマになりそうです。

東京福祉専門学校で、これからの保育を学ぶ

保育士を目指すなら、資格取得だけでなく、実際の保育現場で必要となる知識や技術、子どもとの関わり方を学ぶことが大切です。

これからの保育現場では、従来の保育の専門性に加えて、ICTやAIなどの新しい技術をどのように活用していくかも重要なテーマになっていくでしょう。

東京福祉専門学校では、保育士を目指す学びを通して、子どもの成長を支えるための専門的な知識や実践力を身につけていきます。

「子どもが好き」「子どもの成長に関わる仕事がしたい」という気持ちを、将来の仕事につなげてみませんか。変化していく保育の現場だからこそ、これからの時代に必要とされる保育士を目指すことができます。

 

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