はじめに
近年、精神疾患により医療機関を受診している人は増加傾向にあります。合わせて、医療機関につながっていなくても、こころの病気を抱えている人も少なくないことが指摘されています。また、コロナ禍における生活の変化がうつ病や不安障害につながるケースがあることも示唆されているところです。
そのようななかで大事なのは、こころの病気を抱える人が安心して必要な治療を受けられるようにすることと合わせて、日常生活をともに過ごす家族をサポートする視点です。

たとえば、小さい子どもをもつお母さんがうつ病の症状に苦しんでいるとき、子どもは変わってしまったお母さんの様子に混乱するかもしれません。また、お父さんはお母さんの病気のことをどう子どもに伝えたらよいか、悩むかもしれません。また、子どもやお父さんは、その混乱や悩みを誰に相談したらよいかわからずに抱え込んでしまったり、病気の原因を「自分のせい」ととらえて自分を責めてしまったりするかもしれません。
心の病気をサポートする福祉専門職
こころの病気を抱える人をサポートする福祉専門職は、本人だけでなく、このような本人の家族が抱えている混乱や悩みの存在にも気づき、さまざま職種と連携しながらアプローチすることも役割のひとつです。その力を発揮する専門職が、精神保健福祉士や社会福祉福祉士などに代表されるソーシャルワーカーです。
たとえば病院の精神科ソーシャルワーカーは、患者の家族の存在をふまえた、日常生活のサポートを提案することができます。各学校を巡回しているスクールソーシャルワーカーは、普段子どもたちに関わる先生方に対し、子どもの様子の変化の背景に親のこころの病気が存在する可能性を認識してもらう働きかけができます。
なお、こころの病気を抱えながら子育てをする家庭と子どものサポートについては、
NPO法人ぷるすあるは がサポートに活用できる絵本などのツールの開発やWEBでの情報発信に取り組んでいます。様々なツールにアンテナを張り、実際の支援場面に活用していくことも、精神保健福祉士や社会福祉士に求められる姿勢です。
家族や子どもの困りごとを支えるために
最近は、病気や障がいを抱える家族の介護を担う18歳未満の子どもや若者たち、いわゆる「ヤングケアラー」の実態把握や支援の必要性に注目が集まっています。しかし、すべての子どもたちが本来持っている権利を尊重された生活を送れるようにするためには、他にも課題が広く認識されていないものの支援が必要な「名前のない問題」がまだまだ多く存在することも事実です。
家族はいろいろな形があって、なかには外からは見えにくい困りごとや生活のしづらさに悩んでいる子どもたちもたくさんいることを認識しつつ、家庭を支えるソーシャルワーカーはさまざまな方と連携しながら日々アプローチしています。