コラム

のんびりやりませんか 英語教育

海外での生活

海外に長く暮らしていると、現地に住む日本人の子ども達やその家族の様子をうかがい知る機会があります。その家族構成は、両親ともに日本人の家庭、お父さんかお母さんのどちらかが日本人で、その配偶者は外国人。このような感じでしょうか。私が住んでいた地域では、お母さんが日本人でお父さんが外国人というケースが最も多くありました。

そうした海外に住む日本人家庭の外国語教育についてですが、外国に住んでいるという生活条件や環境、親御さんの子育てに対する考え方、経済的な理由などもあるために、それは日本国内以上のものがあります。海外において日本人の子ども達が外国語を身につけることは環境にも恵まれ成功した例は多くありますが、すべての子どもがそうではないということも親はちゃんとわきまえておく必要があると思います。これは日本国内に住んでいても同じだと思われます。

英語力を身につける

みなさんは幼児(児童も含みます)向け英語教育についてインターネットなどで調べたり、記事を読んだりしたことがありますか。もしお時間がありましたら、興味のある方はご覧になってください。よく目にするのは、次のような文言です。

①日本人の英語力は世界で〇〇番目(TOEICの結果などから)

②英語の聞き取り(英語耳と言うそうです)は幼児期で決まる

③英語思考の脳を作ろう

④小学校で英語!学校で遅れないために  などなど たくさんあります。

こうした文面は保護者の不安をあおり、「うちの子にも英語をさせなきゃ!」って保護者を追い立てるだけだと思います。

例えば、①の「日本人の英語力は世界で〇〇番目(TOIECの結果などから)」についてですが、明らかに調査の仕方に偏りが見られます。経済的に日本よりかなり厳しい国のランキングでは日本よりもずっと上にありますが、そうした国では国民の中のごくわずかの富裕層と言われる人しかTOIECなどは受けられません。特別な環境で英才教育を受けた人の結果が用いられています。それに対して日本の場合は、ごく一般の受験者が数多くいます。国民全体の英語力や英語教育については日本の方が格段に高いと判断できます。つまり調査の対象や分母が異なるところで比較をしても、読み手に間違えた情報を与えるだけなのです。

②~③はまさにこども対象で、保護者の方を心配にさせてしまうメッセージとなりかねません。外国語を話せても、その子がもともと持っているコミュニケーションに対する意欲が低いと外国人とコミュニケーションは図れません。母国語だって他人と話すのが苦手で思うように自分の言いたいことを言えない人はいるではありませんか。それと同じです。確かに聞く力は低年齢の方がよいのですが、年齢が低いと母国語の獲得に影響を与えてしまうということもきちんと知っておきましょう。

英語思考を作るとか外国語の考え方を幼い時期から学ぶことも、後年になってから始めるより効果はありますが、日本人としてのアイデンティティをきちんと備えたうえでの国際人を目指すなら、あまり早すぎるというのもどうかと思います。周囲から「変わった人」という目で見られて、本人が日々の生活の中で返って苦しむ結果を招くかも知れません。  言葉を学ぶということは、文化や考え方、生き方を学ぶということに通じますから、幼い子供に対しては親がしっかりと必要なものといらないものを判別して与える義務があると思います。こどもにとっては成長の過程の中で学ぶ時期も大切ですから、流行りの情報に振り回されて、こどもに不幸な結果を招いてしまわないようにしましょう。

私の知人には今も外国で生活している人や今は日本に生活していますが、現地の外国人よりも正しい美しい外国語を話す方もたくさんいます。その人たちは決して幼児期から外国語を学んでいたのではなく、正しく日本語や日本の文化を身につけ、母国語でのコミュニケーション力を培い、自分の意志で外国語を学んだ方がほとんどです。彼らは日本人としての考え方や習慣を身につけた上で、外国語や文化、人々の生き方をちゃんと理解して受け入れています。私はそれが日本の外国語教育が目指すところだと思うのです。

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この記事を書いた人

海老原 孝一 先生

国内の公立小中学校で教育に携わった後、文科省の海外派遣がきっかけでドイツに渡り、現地での幼児教育に長くかかわってきました。その後、東京福祉専門学校の職員として勤務しています。

座右の銘:『謙虚』

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