コラム

新しい国家資格!?「子ども家庭福祉」資格創設の報道を読み解くために

大手新聞社により、「子ども家庭福祉」の国家資格を創設する検討に入ったという報道が1月31日になされました。Yahoo!ニュースにも転載されましたので、目にした方も多いと思います。今回はこの報道を受けて、現在検討されているこの新たな制度について理解するための2つのポイントを紹介します。

ポイント1 厚生労働省のホームページでどんな議論がなされているかを把握する

報道後、早速インターネット上でも賛否を含め、さまざまな意見表明がされているところですが、まず留意する必要があるのは、新聞記事で伝えられる内容には限りがあるということです。

報道される内容は、多様な情報から受け手が最も関心を持つと考えられることに絞りこみ要約されているものですので、良くも悪くも切り取られた内容です。大事なのは、記事から読み取れる限られた情報からその背景にあることを「想像して」議論を交わすのではなく、そもそも何の情報を出典として記事が書かれているのかを探り、より正確な事実を把握することです。

今回の記事の出典は、おそらく、1月26日に開催された厚生労働省の社会保障審議会の「児童部会」におけるワーキンググループ「子ども家庭福祉に関し専門的な知識・技術を必要とする支援を行う者の資格の在り方その他資質の向上策に関するワーキンググループ」の第10回の会議の情報です。この会議の議事次第や会議で実際に使用された資料は、厚生労働省のホームページで閲覧することができます。

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-kodomo_554389_00011.html

こちらを確認すると、今回の「子ども家庭福祉」は、「ソーシャルワーク」の資格として

・社会福祉士や精神保健福祉士で学ぶ「共通科目」を基礎として、子ども家庭福祉分野の専門課程を学ぶ、既存のソーシャルワーク2資格と並列の資格としての位置づけ

・社会福祉士と精神保健福祉士を基礎として子ども家庭福祉分野に関する上乗せの教育課程を修了した者に付与される資格としての位置づけ

の2案を候補に、「とりまとめ」にむけて資格取得方法の議論や資格の位置づけの検討などがなされていることが分かります。また、ホームページでは、過去9回の全て会議資料や第7回までの議事録も確認できますので、ここに至る議論のプロセスや有識者のヒアリング結果、中間整理などをつぶさに把握することができます。もちろん、すべてに目を通すことはなかなか難しいですが、インターネット上でつぶやかれている疑問点や課題の多くは、ワーキンググループにおいてすでに議論の俎上にあることを把握することができると思います。

ポイント2.社会福祉士や精神保健福祉士養成で「子ども家庭福祉」をどれくらい学んでいるのかを把握する

今回の議論の背景のひとつには、現行の社会福祉士・精神保健福祉士の学びのなかに「子ども家庭福祉」に関する学びが十分ではないという課題が指摘されていることがありますが、実際はどうなのでしょうか。その判断材料となるのが、社会福祉士養成課程のカリキュラムで想定されている学習内容(令和3年度から大学・4年生専門学校でスタートするカリキュラム)で、以下の厚生労働省のページから参照することができます。

https://www.mhlw.go.jp/content/000606419.pdf

ちなみに、最も関連性の高い講義科目「児童・家庭福祉」において必要とされる時間数は最小で30時間、大学や専門学校の授業に換算すると90分授業の場合、15コマ分(半期分)になります。もちろん「ソーシャルワーク演習」などの他の科目でも児童・家庭福祉に関連する内容は扱うので、それが全てではありませんが、保育士養成における講義科目では「子ども家庭福祉」「社会的養護Ⅰ」があり、それだけでも社会福祉士養成課程の倍の時間の学びをしていることをふまえると、児童分野のソーシャルワーカーを目指す方により深く幅広い学びが必要という議論の方向性も一定の確からしさがあるところです。

まとめ 子どもに関わるソーシャルワーカーを目指すために今からできることは

報道の背景になる資料を読み込むことで、「子ども家庭福祉」の資格化については、検討の途中ではありますが、現段階では全く新しい専門職養成の資格ではなく、社会福祉士・精神保健福祉士の養成課程と共通する学びがベースとなるソーシャルワークの資格として検討が進められていることがわかるところです。そのため、これから「子ども家庭福祉」分野を目指す方は、資格創設や養成課程の開設を待って学びをスタートするだけではなく、まずは社会福祉士や精神保健福祉士の養成課程でソーシャルワーカーとしての基盤を学び、来たる資格創設に備えることも選択肢のひとつと言えるかもしれません。
その点で私たちソーシャルワーカー養成を担う専門学校も、今後の議論の展開を注視しています。

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