スクールソーシャルワーカーに必要な資格は?取得しておくと有利な資格を紹介
昨今では不登校やいじめなど、学校ではさまざまな問題が増えており、スクールソーシャルワーカーの需要が増しているのが現状です。スクールソーシャルワーカーの仕事はたいへんな仕事でもあるため、具体的な仕事内容について知っておくことが望ましいです。
そこで今回は、スクールソーシャルワーカーの概要や必要な資格について解説します。取得しておくと有利な資格も紹介するため、スクールソーシャルワーカーを目指している方は確認しましょう。
目次
スクールソーシャルワーカー(SSW)とは
スクールソーシャルワーカーとは、生徒や児童の悩みや問題を解決する仕事です。子どもの相談に乗るだけでなく、保護者や学校の先生と協力しながら問題解決を目指します。近年では児童虐待やいじめ、不登校などさまざまな問題が増えています。スクールソーシャルワーカーの役割として、複雑化された子どもの問題を解決することが期待されています。
スクールカウンセラー(SC)との違い
スクールソーシャルワーカーと似ている仕事にスクールカウンセラーがあります。スクールカウンセラーとスクールソーシャルワーカーとの違いは、心理的な専門家であるかどうかです。
スクールカウンセラーの仕事は、子どもの悩みを聞くカウンセリングやストレスチェックなどの心のケアを行うのが中心です。一方、スクールソーシャルワーカーの仕事は現在直面している問題に直接働きかけて、保護者や関連機関といっしょに問題を解決していきます。
子どもの問題を解決する点はどちらも同じです。しかし、心理的なことを支援するか生活環境を改善するかの違いがあるため、スクールカウンセラーとスクールソーシャルワーカーの仕事は区別する必要があります。
スクールソーシャルワーカーに資格は必要?
スクールソーシャルワーカーになるためには、専門資格は必須ではありません。しかし、スクールソーシャルワーカーとして働く現場では資格を必要とする職場が多いため、関連資格を取得してからスクールソーシャルワーカーを目指すのがよいでしょう。そこで、スクールソーシャルワーカーとして必要な資格を4つ紹介します。
社会福祉士
社会福祉士とは、高齢者や子ども、障害を持っている方などの相談に乗り、福祉に関する相談を行う仕事です。社会福祉士になるためには国家試験に合格しなければいけないため、指定された学校を卒業する必要があります。
精神保健福祉士
精神保健福祉士とは、精神障害やこころに病気を抱えている方を対象に助言や相談を通じて回復を目指す仕事です。精神保健福祉士も社会福祉士と同じく国家資格であるため、試験に合格する必要があります。
臨床心理士
臨床心理士は社会福祉士や精神保健福祉士のように、国家資格ではありません。しかし、臨床心理士の資格は歴史が長く、心理系の資格のなかでは有名な資格の一つです。臨床心理士は、患者の心理状態の問題を解決するスペシャリストです。専門的知識や技術を習得することで、患者のこころの病の改善を目指します。
公認心理師
公認心理師とは、教育現場や保健、福祉分野において心理的な知識や技術を提供する仕事の一つです。公認心理師は国家資格であるため、国家試験に合格する必要があります。公認心理師は心理的に病を抱えている患者に対して、相談したり指導したりするのが主な仕事です。
スクールソーシャルワーカーになるための主なルート
スクールソーシャルワーカーになるためにはいくつかルートがあります。ここでは、各資格を取得してからスクールソーシャルワーカーになるための方法について解説します。
社会福祉士の資格を取得する場合
社会福祉士の資格を取得するルートはいくつかあります。福祉系の大学に4年間通い、指定された科目を履修すると社会福祉士の受験資格を得られます。大学で基礎科目だけを履修した場合では、大学を卒業したあとに短期養成施設で6か月間以上学ぶ必要があります。大学で基礎科目を履修していない場合は、大学を卒業したあとに一般養成施設に1年間通うと社会福祉士の受験資格を得られます。大学を卒業して社会福祉士を目指す方法は主にこの3パターンです。
短期大学を経て社会福祉士になることも可能です。短期大学の場合は、3年制か2年制の短期大学を卒業するかで道のりが異なります。指定科目を学ぶ方法で社会福祉士を目指す場合は、3年制大学を卒業したあとに相談援助業務等を1年以上経験しなければいけません。2年制の大学を卒業した場合は、相談援助業務等を2年以上経験する必要があります。
福祉系の短期大学を卒業した場合は、相談援助業務等を経た後に国家試験を受験可能ですが、履修科目や基礎科目の履修が足りない場合は、6か月もしくは1年間養成施設に通うと受験資格が得られます。
どの方法でも資格を取得すると社会福祉士の資格を登録できます。社会福祉士として資格を登録できると活躍の幅が広がるため、スクールソーシャルワーカーとしての需要が高まります。そもそもスクールワーカーとしての採用は、資格を持っていることを前提として募集をかけていることがあります。スクールソーシャルワークの教育課程を修了して、都道府県などの自治体の選考で合格すると内定がもらえます。
精神保健福祉士の資格を取得する場合
精神保健福祉士になるためには、指定された大学か短期大学を卒業して目指すのが一般的です。指定科目を履修する場合は、4年制の保健福祉系大学を卒業すると精神保健福祉士の受験資格を得られます。福祉系大学や一般大学に通う場合は、養成施設に6か月もしくは1年間通う必要があります。
短期大学の場合は、3年制の大学を選ぶか2年制の大学を選ぶかで異なります。3年制の短期大学を卒業した場合は、卒業したあとに相談業務を1年以上経験しなければいけません。2年制の短期大学の場合は、卒業したあとに相談業務を2年以上経験する必要があります。保健福祉系短期大学を卒業した場合は、実務経験を1年経験すると受験資格が得られますが、一般の短期大学の場合は卒業後に実務を1年以上経験し、養成施設に1年間通う必要があります。
国家試験に合格すると、精神保健福祉士として登録できます。ソーシャルワーカーとして働く際に、精神保健福祉士の資格を持っていると活躍の幅が広がります。社会福祉士と同様にスクールソーシャルワーク教育課程を修了して、都道府県の自治体などの選考に合格するとソーシャルワーカーとして働けます。
臨床心理士の資格を取得する場合
臨床心理士になるためには、いくつかの方法があります。臨床心理士養成に関わる大学院もしくは専門大学院を卒業すると受験資格を満たせます。また、外国で指定大学院と同等の通学歴があり、日本で2年以上の臨床経験がある場合でも受験可能です。
医師免許取得者の場合は、2年以上の臨床経験があると受験資格を満たしています。受験資格を満たしていても合格しなければ臨床心理士の資格は取得できません。日本臨床心理士資格認定協会が運営する資格に合格するためには、計画的に勉強を進める必要があります。
資格を取得したあとは、スクールソーシャルワーカーとしての働き先を探します。臨床心理士の資格を持っている方はそれほど多くはないため、スクールソーシャルワーカーとして働く際には活躍が期待されるでしょう。また、資格を取得して保健福祉系の大学院を卒業したあとに、都道府県によるソーシャルワーカーの選考を受ける方もいます。内定がもらえるとソーシャルワーカーとして働けます。
公認心理師の資格を取得する場合
公認心理師の国家試験を受験するには4年制の大学で指定科目を履修し、さらに大学院でも指定された科目を履修すると受験資格を満たせます。ほかの方法としては、4年制大学で指定科目を履修して卒業したあとに、指定の施設で2年以上の実務経験を積むと試験を受けられます。
公認心理師は、心理にかかわる相談を行うスペシャリストです。公認心理師の資格を持っていると、スクールソーシャルワーカーとして内定されやすいでしょう。
スクールソーシャルワーカーの主な就職先
スクールソーシャルワーカーの主な就職先は、小学校や中学校、高校、特別支援学校などが挙げられます。そのなかでも、小学校で働くスクールソーシャルワーカーが多く、次いで中学校が多いです。
学校などで働けることが多いですが、どの学校にも必ずスクールソーシャルワーカーが在籍しているわけではありません。単独型として一つの学校で働く方もいますが、基本的には複数の学校を受け持つことが多いです。単独型以外の働き方として、複数の学校を担当する「拠点型」、教育委員会に指示された学校を訪れる「派遣型」、教育委員会に配置された域内の学校を回る「巡回型」に分けられます。
これらの働き方は自治体により異なります。スクールソーシャルワーカーを目指している方は、希望の自治体の主な就職先について調べておくことをおすすめします。
スクールソーシャルワーカーになるために必要なスキル
スクールソーシャルワーカーになるためには、いくつかスキルが必要です。必要なスキルについて事前に知っておくと、スクールソーシャルワーカーとして働いた際に活躍できるでしょう。スクールソーシャルワーカーに必要な5つのスキルについて確認してください。
コミュニケーションスキル
スクールソーシャルワーカーは、コミュニケーションスキルが必要です。スクールソーシャルワーカーの仕事は患者だけでなく、周りの関係者とも連携をとって業務を行わなければいけません。患者との接し方について、実習や座学を通して学んでいきましょう。
情報収集スキル
情報収集スキルがあると、スクールソーシャルワーカーとして働いた際に困ったことがあってもすぐに対応できます。スクールソーシャルワーカーは、地域のコミュニティーと連携することがあり、同じ作業を繰り返すだけの仕事ではありません。法の改正により知っておくべきことが状況によっては大きく異なるため、常に新しい情報を手に入れるスキルが必要です。
情報収集を行う方法として、日ごろからニュースに敏感になっておくのが望ましいです。大きな法律の改正があった際には、テレビやネットニュースなどで大々的に報道されるため、仕事に関わる情報を確認しましょう。
また、新聞や広報誌などを日常的にみておくと、より具体的な内容が掲載されている場合があります。スクールソーシャルワーカーとして活躍するためにも、いろいろな情報を取り入れる習慣を身につけてください。
分析スキル
スクールソーシャルワーカーとして働く際には、分析スキルが必要です。子どもの性格は多種多様なため、子どもの特徴について分析しなければいけません。スクールソーシャルワーカーとしての分析力が欠けていると、問題を解決できずに落ち込んでしまう可能性があります。
子どもの性格を分析する際は、問題点や状況、長所、強みなどに目を向けましょう。問題がある子どもでも、長所や強みは必ずあります。よい部分を高めてあげることで、子どもの成長につながります。
マルチタスク能力
スクールソーシャルワーカーの仕事は、一つの仕事を淡々と繰り返すのではなく複数のことを同時に行わなければいけません。子ども一人ではなく複数人の相談を行う必要があるため、マルチタスクな能力が求められます。
子どもの悩みや問題を解決するために、家族や学校の関係者の方と協力していく必要があります。スクールソーシャルワーカーとして働く場合は、マルチタスクの能力が得意な方が向いているでしょう。
マルチタスク能力は経験や意識で向上させられます。向上させるおすすめの方法として、常に時間配分を意識することです。終わらせられるタスクを数分で終わるもの、数十分で終わるもの、数時間で終わるものに分類します。時間で分けておくと可視化され、優先順位を明確に決められます。複数のことを同時にできない方は、日常生活からマルチタスクのトレーニングを行う意識をもちましょう。
法律に関する知識
スクールソーシャルワーカーとしての法律に関する知識は必要です。悩みを抱えている子どもが何か犯罪に巻き込まれたり、刑事事件の対象になったりすることもあるため、法律全般の幅広い知識をもって働かなければいけません。
スクールソーシャルワーカーが向いている人
スクールソーシャルワーカーは、向き不向きがあります。スクールソーシャルワーカーとして向いている方の特徴を4つ紹介します。
相手の気持ちに寄り添うのが得意な人
まずは、相手の気持ちに寄り添って話を聞ける人が向いています。スクールソーシャルワーカーの主な仕事として相談者の悩みを聞く業務があり、相談者の気持ちをくみ取れないと、スムーズに問題を解決できないでしょう。
相手の気持ちを考えずに、見当違いのことを発言すると子どもが傷つく恐れがあります。相談者のことを考えて優しく接せれる人に、スクールソーシャルワーカーは向いています。
冷静な判断ができる人
冷静に判断できるかもスクールソーシャルワーカーとしては重要です。なかなか一人では判断しづらい場面も多いため、冷静になって他の人といっしょに解決する力が必要です。なにも考えずに焦って行動してしまうと、大きな失敗をしてしまう可能性があります。
人と関わるのが好きな人
人と関わるのが好きな人はスクールソーシャルワーカーに向いています。とくに子どもが好きで、成長を嬉しく感じられる方は長期的に働けるでしょう。相談者の問題を解決した際には、直接感謝されることがあり、とてもやりがいを感じられる仕事です。悩んでいる人を助けたいという「熱い気持ち」を持っている方におすすめの職業です。
チームでワークを大切にできる人
スクールソーシャルワーカーの仕事は、チームで業務を行うことが多いです。単独で相談することもありますが、迷った際には誰かに相談しながら業務を進めなければいけません。学校の関係者や保護者などと協力することで、スクールソーシャルワーカーの仕事の負担も減らせます。わからないことや悩んだ際には、相談する勇気をもつことが重要といえます。
まとめ
今回は、スクールソーシャルワーカーに必要な資格や有利な資格について解説しました。スクールソーシャルワーカーは社会福祉士や精神保健福祉士、臨床心理士、公認心理師などの資格を持っておくと、自治体からの内定がもらえやすいです。
大学や短期大学など、どこに通うかによりスクールソーシャルワーカーになるまでの道のりが異なります。ご自身の希望のルートをみつけて、立派なスクールソーシャルワーカーを目指しましょう。