コラム

「不登校」や「引きこもり」から、抜け出す方法

「ずっと不登校だから」「欠席日数が多くて内申点がないから」「家族以外の人とは会わずに、引きこもっているから」など。「不登校」や「引きこもり」という現在の状況だけで、進学や仕事をするなどの社会に出ていくことをあきらめていませんか?
「不登校」や「引きこもり」で、悩んでいる方の主な悩みは
・今の自分に自信がもてない
・完璧主義で、恥をかくかも、失敗するかもしれないと思うと動けない
・進学やアルバイト、仕事を始めても上手くできると思えない
・自分から友人を作ったり、人間関係を作る方法がわからない
・今の状況から抜け出したいけれど、そのきっかけが見つからない
・何をすればいいのか、自分に何が向いているのかわからない

など、抜け出したい、何とかしたい、何とかしなければと焦る気持ちも
持ち続けているのではないでしょうか?

今回は、「不登校」や「引きこもり」の人が今の状況から抜け出す方、新しい生活を成功させるコツなどを解説したいと思います。

 

目次

「不登校」「引きこもり」とは?
「不登校」「引きこもり」の主な原因は?
「不登校」「引きこもり」から抜け出す方法
抜け出した先輩たち
まとめ

「不登校」「引きこもり」とは?

不登校の定義は、法律と文部科学省によってそれぞれ示されています。
法律における不登校児童生徒の定義は、「相当の期間学校を欠席する児童生徒であって、学校における集団の生活に関する心理的な負担その他の事由のために就学が困難である状況として文部科学大臣が定める状況にあると認められるもの」としています。
文部科学省が定義しているのは、「心理的または情緒的、身体的、社会的要因などが理由で、登校したくてもできない児童生徒です。文部科学省では、一年度の間に30日以上登校しなかった児童生徒」を不登校としています。
不登校の現状は、小・中学校の不登校児童生徒数は11年連続で増加し約34万6千人。また、高等学校の不登校の生徒数も約6万9千人と過去最多となっています。
そこから抜け出すことができて、進学し大学や専門学校では登校している児童・生徒もいます。仕事を始めたり、アルバイトをしたりと社会生活を送ることもただ、そのまま継続して20代、30代になっても社会のどこにも所属せず、「引きこもり」と言われる状況になっている人も多いのが現実です。
厚生労働省は、引きこもりの定義を「様々な要因の結果として、就学や就労、交遊などの社会的参加を避けて、原則的には6ヶ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態のこと。(他者と交わらない形での外出をしている場合も含む。)」としています。

「不登校」「引きこもり」の主な原因は?

文部科学省が毎年、主な原因の割合について報告しています。
不登校の原因を以下の3つに分類して数字を出しています。
1学校に係る状況
学校が原因となって生じる問題が影響しています。「いじめ」や「友人関係」、「教師との関係」、「学業不振」、「入学、転編入学、進級時の不適応」などが含まれます。
2家庭に係る状況
家庭環境や家庭内で起きた問題が不登校の原因となっています。
「急激な生活環境の変化」や「親子の関わり方」、「家庭内の不和」などです。
3本人に係る状況
学校や家庭とは関係のない本人自身の問題が原因となっています。「生活リズムの乱れや非行」、「無気力や不安」などが含まれます。
2024年度の報告で、最も多いのは「本人に係る状況」(生活リズムの乱れや非行、無気力や不安など)で、その中でも「無気力,不安」が全体の39%と最も多くなっています。
実態を捉えられているかどうかはわかりませんが、学校での人間関係がきっかけという人よりも、「なんとなく行きたくなくて」「ちょっと疲れてしまったので休み始めたのがきっかけで」ということが多いようです。
要素は、1つではなく複合的に影響し、不登校の人数や割合が増加していると考えられます。この現状を小・中や高校の現場でも深刻にとらえ、対策を立てていますが、年々増加しています。

「不登校」「引きこもり」から抜け出す方法

この状況から抜け出すために、様々な対策が学校だけではなく、市区町村や国のレベルでも様々な取り組みや支援体制がありますので、それを利用している、またはしたことがある方も多いのではないでしょうか?
NPO法人や塾なども、支援を行っている所が増えています。対策や抜け出す方法は、不登校の要因別に違いますので、個別に相談することで、抜け出せない不安を軽減することができるのではないでしょうか?
学校や社会という自分にとっては、外の世界で新しい生活を始めるというのは、周囲の大人が思うほど簡単ではありません。不安よりも、怖いという気持ちも同時に起こってきます。今の生活が、安心でとりあえず居場所がある人にとっては、そこからの変化は必要だとわかっていても動けなくなるのが普通だと思います。
どのような要因で、「不登校」「引きこもり」の状態になったにしてもその期間が長くなればなるほど、最初の要因や原因よりも、現在の悩みや状況で対応することが最も重要になります。
本人が、「まだまだ家にいたい」「変化は怖い」「今の自分が新しく進路を探すなんて、エネルギーがない」等の現状であれば、周囲の大人が何を言っても、どんなサポートを用意しても活用するのはとても難しい状況です。
このような状況の場合は、ご家族がキーパーソンです。兄弟やいとこ、親戚の方や祖父母の方など身近なかたと信頼を深め、進路ではなく別の色々な会話の機会を持つことが有効です。本人の中の心のエネルギーをためることで、「まだまだ自信は無いが、なにかを始めてみたい」「いとこがするなら、自分もやってみようかな」等の変化を受け入れる、変化を好む状況になってきます。
私がカウンセラーとして、このようなお話をした時、保護者の方が拒否されることもあります。「そんなに甘やかしていては、いつまでたっても自立できない」と思えるからだとおっしゃいます。
このコラムを読んでいただいている方の中にも、そう考える方もおられるでしょう。ご自分の人生で、「こころのエネルギーがなくなる」という状況になったことがないからかもしれません。
失敗しても、「失敗した、だから次は〇〇してみよう」「自信が持てない、だから勉強しよう、教えてもらいに出かけよう」等と考えられる状況だったのではないでしょうか。
「甘えているだけ」「さぼっているだけ」「誰だって、自信なんかない」等の思いが出てくるのは当たり前だと私も思います。
ですから、そんな時は保護者の方の代わりにその思いを伝えていくようにしています。なぜならお子さんも、十分わかっているからです。甘えている、このままでは自立できないと。だから自信がなくなり、学校にも行けず、社会に入っていくことが怖いと思って動けないでいるからです。
誰もがそうですが、自分が良い状況にない時に現実をつきつけられると辛くなって、心のエネルギーは減っていきます。自信も失っていきます。その時間や期間が長いと、すぐにエネルギーを回復することができなくなります。
親子だけの会話で上手くいかない、親から何度言って本人がわかってくれないと感じた時は、カウンセラーを使うのも良い方法です。
本人が「進学したい」「働きたい」「お金を稼ぎたい」と思っている状況であれば、変化を受け入れる時期にありますので、新たな居場所を探すことが対策になります。一人では探せませんので、保護者だけでなく、第3者の誰かが加わる、協力することでスムーズに進みやすいです。第3者は、現在の学校の先生でもいいですし、相談機関の人、カウンセラー、新たな進路先の人などが現実的ではないでしょうか。
・本当は進学したいけれど、続けることができるの?
・うまく人間関係をつくっていけるかな?
・勉強はついていけるかな?
という悩みを同時に持つため、何とかしたいけれど不安もさらに大きくなるのが常です。そんな時は、「普通は〇〇だから」と考えずに、長い目で見た将来(5年先、30歳になったとき)の自立した生活を考えて決めるようにしてください。
中学生であれば、全日制の高校だけではなく、通信制高校やサポート校など「続けられそう」「不安が少しは低い」と思える所を価値観を広げて考えてみてください。
高校生や高校を卒業してからしばらく時間がたっている方であれば、大学か専門学校という進路、就職する、アルバイトを探すという進路になるかもしれません。

・やりたいことが無いので、どこに進学したり、就職すればいいのかわからない
・まだまだ、人と関わる自信がない

と悩みはさらに深くなっているかもしれません。そんな人のリ・スタートを応援し、支援していきたいと考えて作られた学科がるのをご存じですか?「キャリアデザイン科」という学科です。自分に合った進路を見つける、コミュニケーションの上手な取り方が科目に入っている学科です。
色々な職業の体験的な授業を受ける、同じ悩みを持つクラスメイトと友達になる等の刺激が自分を知るきっかけにもなっているようです。

抜け出した先輩たち

ここで、実際にあった卒業生の話を少し紹介します。小学校から不登校を繰り返し、数か月は行けるが途中で不登校になって、中学校でも2年生から学校に行かなくなったそうです。きっかっけは、友達とうまく話せないと感じたことからなんとなく学校が楽しい場所ではなくなった。休むと勉強が進んでしまって、登校した時に勉強がわからなくて悲しくなって、自信がなくなってきたからとのことでした。保護者の方は、中学校までは、できるだけ登校してほしいと思っていたけれど、高校に進学するときには元気で楽しく過ごせることが一番大切だと思うようになり、高校はサポート校に通いながら、通信制高校に進学することを勧めたそうです。
高校は楽しく過ごしたようですが、進路に困って色々と考えて資格が取れる学校に進学しました。でも続かず、不登校になりました。その後、東京福祉専門学校のキャリアデザイン科に入学し無事に卒業することができました。現在は、自分の好きなことをしたいので、9時~17時で終わる規則的で残業のない仕事に決めて働いています。
在籍中は友人もでき、不登校にもならず過ごしました。現在の仕事も休まず続けています。専門学校に進学しても不登校になったので、自信を失っていましたが、自分に合った仕事を一緒に考えてもらえたので、働くことも少し怖かったけれど、なんとかなると思えたと話していました。
他にも高校を卒業して、どこに行けばいいのか困っていたら、この学科を見つけてと言って入学してくれた学生もいました。不登校は、中学校からで、高校は、途中で通信制に転校して卒業したので通える自信がなかった。オンラインでも出席になるというキャリアデザイン科なら通えそうと決めたそうです。専門学校では楽しく過ごして、その後やりたいことが見つかったのと自信もついたので、2年生の専門に進学しました。今年、その専門学校を卒業します。
1年間の学科ですが、「自分一人で悩んでいた時よりも価値観が広がった」「完璧主義で、できない自分をなさけないとずっと思っていたけれど先生たちがずっと褒めてくれて自分の長所を沢山見つけてくれて嬉しかった」など卒業するとき、全員が自分の成長について語る日があるのですがその時の顔はとても誇らしく、かつての自分のことを素直に表現し、笑顔があふれていて、私の大好きな日なので毎年楽しみにしています。

まとめ

「進路が決まる」という喜びと、「続けられている」という自信が得られている卒業生が多くいます。興味のある方は、学校見学、説明会を行っていますので、一度相談にお越しください。お待ちしています。

(参考資料)
令和5年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果及びこれを踏まえた対応の充実について(通知):
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1422178_00005.htm
ひきこもりボイスステーション:
https://hikikomori-voice-station.mhlw.go.jp/information/

 

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対象:高校卒業以上の方

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ソーシャルワーカー公認心理師心理カウンセラー精神保健福祉士臨床心理士

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この記事を書いた人

山岸 有里 先生

精神保健福祉士・臨床心理士・公認心理師の資格をもち、本校学生相談室を担当しながら心理カウンセラー科の講師も担当する。

座右の銘:未来の自分にとって優しい選択をする

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