コラム

作業療法士はいらなくなる?今後の需要について

作業療法士って何をする人?

みなさんは朝起きて何をしますか?
トイレへ行ったり、着替えたり、ご飯を食べたり。そのあとは何をしますか?学校へ行く準備をしたり、自転車に乗ったり、勉強したり、部活をしたり。家に帰ってからは?お風呂に入ったり、ゲームをしたり、音楽を聴いたり。
「作業」とは、日常生活の中で行う生活行為を指します。食事やトイレ、仕事や勉強、趣味や地域活動なども作業の一つです。
もし、ケガや病気によって右手が動かなくなってしまったら?ご飯を食べるのが大変、着替えるのも大変、自転車には乗れるかな?部活はできるかな?
もし、心の病気で気分が落ち込んだら?学校へ行きたくない、人と関わりたくない、何もしたくない…。
作業療法士はケガや病気により障害を持ってしまった人、もしくはそれが予測される人の「失われた作業」を再び取り戻すお手伝い、「新たな自分にとって意味のある作業」を生活に組み込んでいくお手伝いをします。右手が動かなくなってできなくなったことを取り戻したい。気分が落ち込んでできなくなったけど新たにこんなことができるようになった。日常の中に作業を取り戻すための支援をします。
作業療法士が何をするのか、もう少し具体的にみていきましょう。
日常生活動作の支援: 作業療法士は、食事、着替え、入浴などの基本的な生活動作を自分でできるように練習を手伝います。たとえば、手を怪我した人には、手の使い方や片手でできる動作の指導、道具の工夫などをします。
身体機能の改善: 怪我や病気からの回復を目指す患者さんに対して、身体機能を改善するためのプログラムを作成します。これには、筋力トレーニングや柔軟性を高める運動、手を動かす訓練などが含まれます。
職業復帰の支援: 仕事に戻りたいと考えている患者さんに対して、必要なスキルを再習得するための訓練を行います。これにより、患者さんは自信を持って職場に復帰できるようになります。
心理的サポート: 精神的な問題を抱える人々に対して、ストレス管理やリラクゼーション技術を教えます。作業療法士は、患者さんが心の健康を保つための方法を学ぶ手助けをします。
家族のサポート:障害を持った方のご家族に対して、介助方法の指導やご家族の心理的支援などを行います。ご本人の生活に深く関わるご家族への支援も大切な仕事の一つです。
発達障害児の支援:遊びを通して、コミュニケーションや心身機能の成長を促します。現在は、障害の有無にかかわらず、子どもの成長を促す職種として認められてきています。
環境調整: 患者さんが生活する環境を見直し、必要に応じて改善する提案を行います。たとえば、家の中での動きやすさを考慮して、家具の配置を変えたり、特別な道具を使ったりすることがあります。
グループ活動の実施: 作業療法士は、患者さん同士が交流できるグループ活動を企画・実施します。これにより、社会的なつながりを持つことができ、孤独感を軽減することができます。

なぜ作業療法士が必要なの?

作業療法士は国に認められた国家資格です。医療職として働くことができ、病院からの求人募集はたくさんあります。また、作業療法士は「作業」の専門家であるため、病院以外にも地域のいたるところでその専門性を発揮することができ、社会に必要とされている職種です。
最近、社会では以下のような理由から作業療法士が求められています。
・高齢者の増加:日本を含む多くの国で高齢化が進んでおり、身体的・精神的な健康問題を抱える高齢者が増加しています。作業療法士はそのような方々の日常生活の自立を支援するために必要不可欠な存在です。
・認知症の増加:高齢化に伴い、認知症を持つ患者さんが増加しています。作業療法士は認知症があってもその人らしく暮らせるように支援する職種です。認知症によって記憶力が低下しても、その人らしさを引き出せる作業(元々得意だった趣味など)を用いて楽しく過ごせるようにしたり、見た目でわかりやすい環境にすることで迷わないようにしたりするなど、これからの社会にとって必要な職種として求められています。
・障害者支援:障害を持っていても社会に参加することが求められています。社会参加への支援は作業療法士の得意とするところです。日々の生活を考え、どういう道具を使えばよいか、どういう環境にするとよいか、どういう訓練をすればよいかなど、その人に合わせたオーダーメイドのプログラムを構築します。障害を持っても安心して社会参加するための支援に作業療法士が求められています。
・精神的な健康:昨今は精神的な健康が重要視されています。作業療法士はストレス管理や社会適応を支援する役割を求められています。精神的な部分で学校や仕事に行けないという方に対して、心理的なサポートはもちろん、どうしたら生活が良くなるかを考えることができます。
・発達障害児の支援:発達障害児の割合は少子化になっても増加しています。遊びを通して社会に適応するための能力や心身機能を育てていくことを作業療法士が行っています。障害があってもなくても誰でも参加できる社会の実現に作業療法士は不可欠です。

求められる場所と役割

作業療法士は、以下のような多様な場所で求められています。
医療機関: 病院やリハビリテーションセンターでは、入院患者さんや外来患者さんに対してリハビリテーションを行います。
介護施設: 特別養護老人ホームやデイサービスセンターでは、高齢者の生活支援やリハビリテーションを担当します。
福祉施設: 障害者支援施設や児童発達支援センターなどで、障害を持つ子どもや大人への支援を行います。
教育機関: 特別支援学校や教育委員会で、学習支援や生活技能の向上を図る活動を行います。
地域活動: 地域包括支援センターやボランティア団体などで、地域住民の健康促進や社会参加を支援します。
作業療法士は、社会の多様なニーズに応えるために重要な役割を果たしています。高齢化や障害者支援、精神的健康の重要性が高まる中で、作業療法士の専門的な知識と技術が求められています。これにより、より多くの人々が自立した生活を送ることができるよう支援することが期待されています。

作業療法士の特別なスキル

作業療法士は、患者さん一人ひとりの状況に合わせたプランを作ります。そのため、患者さんは自分の目標に向かって進むことができ、より良い生活を送れるようになります。また、患者さんが大切にしている作業は何かを深く理解することで、その作業をどう実現するか、違う形で実現できないかを考えて提案し、動作の指導や道具の工夫を行います。患者さんは日常生活の中で楽しみや価値を見出すことができ、生活の満足感が向上します。

まとめ

作業療法士は、患者さんの身体的、精神的、社会的な側面を総合的に支援する専門家です。患者さんがより良い生活を送るために作業療法士は不可欠であり、リハビリテーションの過程において重要な役割を果たしています。
作業療法士は、たくさんの人が自立して生活できるように助ける大切な仕事です。これからの時代、作業療法士の役割はますます重要になっていきます。将来、作業療法士を目指す高校生の皆さんには、この仕事の魅力を感じて、社会に貢献する道を選んでほしいと思います。

関連学科

コラム:カテゴリー

作業療法士

この記事をシェアする

この記事を書いた人

渡辺 陵介 先生

作業療法士免許取得後すぐに大学院へ入学。介護老人保健施設で働きながら高齢者の研究を行う。修士取得後は回復期リハビリテーション病院にて勤務する傍らで学会発表にも力を注ぐ。現在も学会発表や研修会の企画・講師等、幅広く活動している。

座右の銘:良く生きる

カテゴリー