コラム

介護福祉士になるためのルートについて

はじめに

「介護福祉士になりたい」と思っている方々は、その思いを、まず誰に相談するのでしょうか。保護者、高校の先生、友人、先輩など身近な人でしょうか。もしかすると、今の時代、知りたい事は相談するより、SNSで検索をするのかなと考えられます。どれも間違った方法ではないと思います。しかし、心配なことは、正しい情報をどこまで知っているのか、偏った情報に惑わされないかなど、考えるための情報が多すぎて、迷ったり、考えすぎたりして、進路決定を誤り、途中で進路を変えてしまうことです。

ここでは、「介護福祉士になりたい」と思った方々の希望を叶えるため、どんな仕事なのか、どのように資格を取るか、についてお伝えしたいと思っています。その中でも、本校は介護福祉士養成校ですから、そのメリットについては、詳しくお伝えする事になるとは思います。しかし、あくまでも進路を選択する際に有効な情報をお伝えすることを第1としますので、最後まで読んでいただき、進路決定のための参考としていただければ嬉しいです。

 

介護福祉士の資格についての知識確認

・介護福祉士はいつ誕生したの?

「介護福祉士」とは、今から38年前の1987年(昭和62年)5月に施行された「社会福祉士及び介護福祉士法」でしめされた介護領域の国家資格です。この法律では、国家資格である介護福祉士について、どんな仕事をするか、どのような試験をするのか、どんな質の向上が必要か、してはいけない事などがこの法律に詳しく示されています。※興味のある方は「社会福祉士及び介護福祉士法」と検索すると、法の全部を確認することができます。

では次にこの法律の中から、介護福祉士という資格、その仕事について、わかりやすく説明します。

・国家資格とはなに?

介護福祉士は国家資格ですとお伝えしました。では国家資格とは何でしょう。国家資格とは、国がその業務に専門性があることを認め、その仕事をするための知識や能力を認定するしくみ等を設けているものです。介護福祉士は国が専門性のある仕事だと認めているのです。そのため、介護福祉士になるためには、国家試験を受ける必要があります。また、介護福祉士は名称独占の資格でもあります。

・名称独占とはなに?

名称独占とは、その資格を持っている人だけがその名称を名乗れます。例えば、介護福祉士の国家試験に合格していないのに「私は介護福祉士の○○です」などと名乗ることはできません。介護分野の仕事をする中では、介護職員や介護士、ホームヘルパーや訪問介護員、という名称で仕事をしている方々が多くいます。それは、施設等での業務上の呼び名です。施設を利用している人や家族にとっては、細かな資格名を伝えても、何が違うか良くからないという現状もあるからです。しかし、最近介護福祉士の専門性を認めている施設等では、介護福祉士○○、実務者研修修了○○と、その方の持っている資格と専門性を利用者やその家族にもわかるように、ユニフォームの名前の前に示したりしている施設等も出てきました。また、名刺に資格名を記入している施設等も多くあります。このことは、後で少し触れますが、お給料やキャリアアップの差にもなっています。

・介護の対象者と具体的な仕事はなに?

最初にお伝えした、社会福祉士及び介護福祉士法では、対象者は、「身体上又は精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある者」とされています。介護福祉士イコール高齢者というイメージが強いですが、法的には高齢者と限定してはいません。つまり対象者は「子供からお年寄りまで、身体や精神に障害がある方で日常生活に支障がある方」幅広い方が対象ということがわかります。

具体的な仕事の主なものは、「日常生活を営むのに支障がある方の心身の状況に応じた介護」です。日常生活とは、朝起きて夜寝るまでに行われる、起床、洗面、着替え、排泄、食事、移動・移乗、入浴などの行為をいいます。日頃何気なく行っている行為ですが、病気等で障害があることで、介助が必要な場合になることがあります。そのできなくなった部分を介助して、できる部分は維持向上できるように支援していくのが介護の仕事です。この部分は法的な書き方だと「心身の状況に応じた介護」という表現になっています。介護の対象者は、一人ひとりが人権を持つ生活者です。心身の状況は異なりますから、その人を理解した上で日常生活の介護を行います。人を理解する事の重要性がここにみえてきます。また、介護福祉士は、利用者及びその介護者に対して、介護に関しての指導を行うことを業とするとされています。介護の指導を行うためには、知識や技術、人間性も日々研鑽していく事が重要になります。

さて、心身の状況に応じた介護の中には、喀痰吸引その他の行為を含むという記述があります。これは、介護福祉士であれば必要な研修を終了し、合格した場合、喀痰の吸引など(口や鼻などから機械を使って痰などを取り出す行為、管を使って食事をする際の介助行為)ができるようになっています。医療的ケアと呼ばれる内容です。介護福祉士は医療職ではありませんから、医療行為を行うことはできませんが、高齢化が進む中、利用者にとって生活上必要な行為とされた内容を行うことができます。

 

介護福祉士養成校に入学して、介護福祉士になる

~介護福祉士とはどんな資格、どうすればなれるの、比べてみた~

 

介護福祉士になるためには、どんなルートがあるの?

介護福祉士になるためには、どんなルートがあるのでしょうか。令和7年度4月現在の状況を確認してみましょう。

介護福祉士になるためには、大きく2つのルートがあります。1つは高校卒業後、介護福祉士養成校(専門学校、短期大学、大学等)で1年~4年間学んで、介護福祉士国家試験を受験するルートです。もう1つは、介護職員として介護現場で3年以上の実務経験を積み、さらにその3年間のあいだに介護職員実務者研修を受験し、受験資格を得て介護福祉士国家試験を受験するルートです。

 

詳しくはこちらをご参照ください。

https://www.sssc.or.jp/kaigo/shikaku/route.html

 

介護福祉士養成校ルートで学ぶ時間と実務者ルートで学ぶ時間など

・介護福祉士養成校で学ぶ時間など

介護福祉士養成校は、学びを中心として介護福祉士をめざします。標準的なのは高校卒業後、2年間の養成課程に入学して学ぶルートです。基本的カリキュラムは1850時間以上(実習含む)と定められています。各養成校によって、必要と思われるカリキュラムが追加されているので、養成校によって総時間数は異なります。しかし、介護福祉士養成に必要な1850時間の定められたカリキュラムはどの養成校でも実施しなくてはいけない科目と時間数が規定されています。

・実務者ルートで必要な働く時間と学ぶ時間など

実務者ルートは、働くことが主となります、そこに学びをプラスして介護福祉士をめざします。実務経験が3年以上ある事に加え、実務者研修450時間以上を終了しているが必要になります。研修は施設内で行われるものではなく、外部の研修施設で行われます。実務者ルートの場合、どこで働くかによっていつ、どんな資格を取るかも変わってきます。施設に就職する場合は、無資格でも就職できます。就職中に実務者研修を取得すれば、介護福祉士をめざすことができます。もし、訪問介護員として在宅現場で働く場合には、就職する前に介護初任者研修(130時間以上)等を取得しないと訪問介護員としての業務ができません。

 

2つのルートを比較してみると何が違うの?

・介護福祉士養成校の学びの中心は学校と複数の実習先

介護福祉士養成校の学びは、約2年間1850時間以上のカリキュラムの中で、知識を技術、そして何故その介護が必要か、利用者にとって必要な介護は何か学ぶ時間が中心となります。しかし学校に利用者はいませんから、得た知識や技術等をもとに1850時間以上のカリキュラムのうち450時間以上、2年間の中で約3カ月以上の時間を、介護施設等での実習として、学外で利用者や家族、施設の方々と一緒に考え、行動する時間があります。2年間の中の約3カ月間と聞くと、短い時間のように感じると思います。しかし、この3か月間の実習では、高齢者の施設や障害者の施設等様々な生活の場を体験する事ができます。そのため、2年間の中で複数回実習が組まれえいます。実習に行く前に学んだことを実習で確認し、利用者等との関りで疑問や課題を確認したら、また学内に戻り、教員や同級生たちと話し合い、考え学びを深め実習に向かう。という事を繰り返していきます。複数の実習先を経験できる、多くの利用者と接する事ができる、自分自身が介護福祉士として、どのような知識と技術を活用したら良いのか、考え時に悩みながらも成長できる時間となります。

・学生を支える教員は介護等の経験者で教育者としての学びがある者たち

学生の学びを支える教員は、介護等の経験者でありかつ教育者としての学びをした者たちです。介護等の経験者ですから、この学びが何故必要かをよく理解しています。ですから、学生が感じる質問等にも適切なアドバイスを行うことができます。さらに教育者であることは、アドバイスだけではなく、学生一人ひとりに必要な力は何か、どうすればその力を発揮できるようになるかを考えて関わります。学生の悩みも理解しながら支えていきます。悩みが学校以外の場合には、必要な専門家等とも協力していきます。介護福祉士になりたいと思う学生を支える専門家がいる場が学校だと思ってください。

・実務ルートでは働く場での学びが中心

一方、実務ルートでの学びは、働く場所での介護の方法、そこで生活する利用者の介護の方法を知り、行動する事から学ぶというスタイルになります。働いてお給料をいただくわけですから、その施設の方針等を理解することが基本となります。高齢者が生活する施設なのか、通ってくる施設なのか等その環境によって、どのような知識や技術が必要か、細かな点は異なります。入職時には戸惑うことも多い中で、年数を重ねていくと業務内容はある程度理解できるようにもなります。しかし、環境がお内であるという事は、他の施設等ではどのような介護を行っているか等、知る時間は限られることになります。よく聞かれるのは、高齢者とは関われるが障害者とは関われない、関わったことがない。ということです。異なる環境での関りには、不安を感じるようです。反対に、養成校を卒業した方々は、学生時代の実習が役に立つたと職員になった時に強く感じるようです。

・実務ルートでの働きを支えるのは現場の先輩たち

働きながらの学びの場では、先輩たちが業務を伝えたりして支えてくれる中心人物となります。先輩たちが必ずしみ介護福祉士であるとは限りません。広い視野でみれば、多職種が働く現場ですから多くの指導者がいるとも考えられます。少し狭くみると、教育者としての視点を全ての方々が持っているわけではないという点も見えてきます。仕事ができるか、できないかが評価の視点になる事は否めないのが働く現場です。近年は施設の中で新人をどう育てる事が良いか考えシステムが作られてもいます。が、学びが出なる現場ではないという点は養成校との大きな違いになっています。3年後介護福祉士を目指したいという思い、国家試験に合格したいという思いを支える職員が現場にいることは少ないのが現状です。働きながら学ぶ場には、学ぶ場に自分から出向くために、どこに行くか、どのように学ぶかを自分で考える事も必要になります。

 

どちらで学ぶかどんなことを考えたらいいの

2つのルート、どちらのルートを選ぶかは、ご自身の思いや環境から、考え判断していくことが必要になります。考え判断する際に1つアドバイスをするとしたら、費用についての情報があります。介護福祉士養成校で学び介護福祉士をめざすためには、入学金や授業料等2年間で約200万位が必要になります。実務ルートで働きながら介護福祉士をめざす際には、給料が支払われますから、入ってくるお金があります。しかし、国家試験を受験するためには、介護福祉士実務者研修を受講する必要がありますから費用が発生します。どちらのルートで介護福祉士を受験するとしてもお金はかかるという事に変わりはありません。額は異なりますが、どちらのルートでも就学資金等の支援があります。どこからの支援を受けるのか、返済の必要はあるかないか等、条件は異なりますが、介護福祉士になるためには国や自治体等の支援がある場合が多いです。介護福祉士は国が必要だと感じている資格だからです。 ですから、お金がないと学校には入学できないとは思わないで下さい。その方法を良く知るのは介護福祉士養成校の職員ですから、是非話を聞いてみてください。

結局、どちらを選ぶのが良いの?

本校は介護福祉士養成校ですから、やはり介護福祉士養成校ルートでの資格取得をお勧めします。何故そう考えるかと言えば次のような点があげられます。

・2年間専門的な知識や技術を、教育という専門的技能を持った教員から学ぶことができる。

・様々な実習先で多くの利用者と関わり、自分を成長させることができる。

・介護の現状を広く知る事ができる、多様な背景を持ったクラスメイトと話し合いながら、一人ひとりの利用者に合ったこれからの介護を考える場が多くある。

・卒業時には介護福祉士国家試験受験に向けて、力を高めることができる。

学校での2年間は、学びに集中し、これからの介護を考える貴重な時間にもなります。みんなで励ましながら介護福祉士合格を目指す環境となります。2年という時間は、学生の皆さんが成長する時間でもあります。この成長が介護福祉士となって現場に出た際には、大きな力になることは、私たち教員が日々実感していることです。

実務者ルートで、働きながら介護福祉士国家試験の学び続けるためには、「試験に合格する」というモチベーションを持続させていく必要もあります。学ぶ時間の確保、学びの方法など、自分で情報を収集するのが苦手な人には、難しいルートでもあると思います。

おわりに

どちらのルートでも、私達介護教員は「介護福祉士になりたい」という思いのある方々支援していきたいと思っています。

日本の介護は世界でも認められていることをご存じですか。何故認められているのでしょうか。介護は知識や技術だけが重要なのではありません。介護福祉士として介護が必要な人の立場に立って考え、行動できる力が必要です。日本の介護は、介護が必要な人を中心に考えていくものです。人権尊重、自立支援というキーワードは、日本では当たりまえの考え方ですが、世界ではまだその考えが普及しているとはいえません。このあたり前の考え方としてきたのは、利用者を支援し考え、実践してきた介護福祉士が培ってきたものです。新しい歴史をつくってきた介護福祉士はこれからも成長していく専門職の1つです。一緒に成長し、介護福祉士の歴史をつくっていきましょう。

 

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