絵を描かせる作業療法士〜芸術療法について〜
目次
絵を描くことが好きなあなたへ
さっそくですが!そこのあなた!絵を描くことは好きですか?
絵というか、アートというか、芸術の力はすごいですよ!
美大に進もうとしている学生さん!アーティストを目指そうとしている学生さん!イラストレーター、デザイナーを目指そうとしている学生さんもちょっと待って!
絵を描く力を活かす進路はなにも美大だけではないですよ!
“人を救う”力が絵にはあります。

作業療法士というお仕事について
絵とか芸術について熱く語りたい気持ちがちょっとばかり暴走気味ですが、その前に。
タイトルにある作業療法って一体・・・
まずは作業療法士というお仕事についてお話したいと思います。
この作業療法士こそ絵の力で人を救うお仕事!!?
作業療法士ってあんまり聞き慣れない言葉ですよね。
“療法”は治療とかセラピーを意味する言葉なので、作業療法士は“作業”を用いて患者さんの治療、セラピーを行うお仕事です。そしてこの“作業”という言葉がすごく、すっごーく幅広い!
たとえば・・・
ご飯を食べる、寝る、走る、怒る、喜ぶ、テレビを見る、料理をする、電車に乗る、友達と遊ぶ、恋人とデートをする、家族で旅行に行く、勉強する、仕事をする、これぜーんぶ作業!
え?それじゃあなんでも作業じゃないかって?大正解!
人が生きていく中でしている動作や行為はすべて作業(と捉える)。
ひとつひとつの作業がその人の生活を、なんなら人生を形作っているんです。
だからケガや病気で今まで当たり前にしていた生活ができなくなった患者さんに対して、作業を通じて作業の再獲得、その方の生活を、人生を再構築していく、そんなお仕事。
えーなんて素敵なお仕事なの!かっこいい!
そうでしょう?
絵を描くという作業
当然絵を描くという行為も作業療法で扱われる作業のひとつであるわけなのですが、私はこの絵を描くという作業に大きな夢とロマンを抱いております笑
絵を描くという作業は、はるか昔、人類がまだ文字を持たない時代から行われていた行為であり、現在記録されている最古の絵画は6万5千年以上前にスペインで発見された洞窟壁画と言われています。洞窟壁画は世界各国で続々と発見され、当時の人々の生活を反映していたり、祈りや儀式の一環として描かれていたとされています。

ほぇー。すごいですよね。この大昔の時代、当然今みたいにテレビやスマートフォンもカードゲームなどの娯楽もない時代にですよ、狩る、食べる、寝るといった人が生きていくために必要不可欠な作業と並んで“描く”という作業がすでに行われていたんです。人間の数少ない本能で行われる作業のひとつとも言えるかもしれませんね。
また、昔読んだナショナルジオグラフィックの雑誌にこんなふうに書かれていました。
「アートは人類の最も偉大な発明と言われることがあります。なぜなら、アートは抽象的な感情や思考を具体的な形に変え、目に見えるかたちにすることができるからです」と。そう、絵を描く作業は人の目に見えない心までも表現できる作業なんです。
絵を治療に活かす芸術療法/Art Therapy
私は作業療法士として医療・福祉・療育・教育の臨床の場で、患者さんや子どもたち、学生たちに絵を描くプログラムを提供してきました。その考え方の基盤としているのが芸術療法です。
芸術療法とは、絵を描くというプロセスの中で得られる感覚や感情を心地いいものにして患者さんのメンタルの安定を図ったり、描いた絵をセラピストが分析して、患者さんの抱える悩みや課題を読み解いていくもの。また、表現された絵から患者さん自身が気づきを得て成長につながることだってあります。
私はこの芸術療法の知識と技術を、対象者に合わせて絵を描くという作業の強みを取り入れて提供してきました。2つほどご紹介します。
精神科病院での絵本づくりプログラム
統合失調症という精神疾患を抱えた患者さんがいて、その方の抱えていた症状は妄想症状。どんな症状かというと、どうやら刀を持ったお侍さんが病院のまわりを周回していて、私(患者さん)の命を狙っている。だから身を隠している、怯えていると話し、夜もなかなか眠れないと悩みを打ち明けてくれていました。患者さんはこの制御できない妄想にとらわれて、恐怖し、夜も眠れない毎日を過ごしていました。
私がこの患者さんの妄想がどうしたら消えるかなーって悩んで行ったのは絵本づくり。患者さんと一緒にどんな内容にしようか話し合った末、恐怖の対象であった侍を退治しに行く物語を作ることになりました。きっとはじめはどうやって侍を追い払おうかとか、そうゆうことを考えながら絵本を描き進めていたんだと思うのですが、物語が展開していくうちに侍は敵ではなく味方、実はいい人とだったという展開になっていったのです。そしたら今まで妄想で病院のまわりを周回していたお侍さんは命を狙う存在ではなく、現代でいう警官のような存在で私を守ってくれていて、恐怖から安心の存在に変わったと話してくれました。頭の中だけに存在していたお侍さんを絵に表現したことで、視覚的にも客観的に見つめ、悪循環を抜け出すきっかけになり、そして絵本という最後はハッピーエンドで終わるものだといういい意味での固定観念が妄想に変化を起こした体験になったのだと思います。

放課後等デイサービスでのペア描画プログラム
発達障害を抱える子どもが通うデイサービスで担当した自閉症の子ども。この子はコミュニケーションが苦手で、他人に対する興味が薄く、いつも一人で遊ぶことが多い子でした。もちろん一人で好きなことをして遊ぶのもこの子にとってすごく大切な時間。だけど、他の子と関わり、コミュニケーション力を身につけることもまた大切なこと。人と一緒に遊ぶことが難しかったので、プログラムの中であえて絵を描くことが好きな友達と一緒に同じ画用紙に絵を描く時間を作りました。この子は今までほとんど絵を描いたことがない子だったのではじめは席を立ってしまうこともありました。でも次第にペアのお友達の描く絵を真似して描くようになったり、友達とクレヨンの貸し借りを行うなど、言語ではないコミュニケーションが生まれるようになりました。夕方、お母さんが迎えに来ると、その子は描いた絵を自慢げに見せると褒められ、その褒めてもらったのがよほど嬉しかったのか、後日お母さんから、今まで家で絵を描くことなんてほとんどなかったのに毎日描くようになりましたと報告がありました。


日本で芸術を治療に活かすなら作業療法士!
ほんと“絵”っていろんな絵があるし、いろんな描き方があるし、いろんな活かし方がある。ちなみにさっき話した芸術療法って、ドイツとかイギリスとかでは国家資格なんだって!アメリカとかでも大学院まで学ばないとなれない仕事!
ただ日本では公的な資格で芸術を医療福祉の現場で、専門職として、人のために治療として扱える職業は限られています。
そして作業療法士は芸術療法士に最も近い職業と言われることが多いお仕事です。ぜひ絵を描くことが好きな人に作業療法士を知ってもらえたら、力を貸して頂けたら嬉しいなと思います。
東京福祉では日本で唯一!絵も活かせる幼稚園教諭資格の同時取得可能
そして東京福祉専門学校ではなんと幼稚園教諭の資格も追加学費なしで取得可能。誰しも夢中になってお絵描きをしていた子ども時代、こどもの描画発達も欠かせない学び!作業療法士+幼稚園教諭、両方の学びで芸術を活かしきる!他校では学べない学びが東京福祉にはあります。ぜひオープンキャンパスにお越しください。絵についてお話しましょー!