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ヤングケアラーとソーシャルワーカーの役割

はじめに──「疲れた」と言えた小学生の声から考える

先日、テレビ番組『探偵ナイトスクープ』で、「小学6年生の長男が『兄弟の面倒を見るのが疲れた』と訴えた」という内容が放送され、大きな話題になりました。番組の演出や、保護者のSNSでの発信をきっかけに、インターネット上では批判や心配の声が入り混じり、いわゆる“炎上”状態になりました。
ただ、この出来事を「テレビのやり方がよかったのか」「親としてどうなのか」という議論だけで終わらせてしまってよいのでしょうか。
ソーシャルワーカーの立場から見ると、ここにはもう一つ、とても大切な視点があります。それが「ヤングケアラー」という問題です。
このコラムでは、「ヤングケアラーとはどんな状態なのか」「なぜヤングケアラーが生まれてしまうのか」「そのときソーシャルワーカーは何ができるのか」を高校生や保護者の方にもイメージしやすい言葉でお伝えしていきます。

ヤングケアラーとは?

「ヤングケアラー」とは、家族の介護や世話・心の支えなどを18歳未満の子どもが日常的に担っている状態のことをいいます。
たとえば、 病気や障害のあるきょうだいの世話をしている・小さな弟や妹の面倒を毎日見ている・精神的に不安定な親の話し相手になっている・家事(料理、洗濯、掃除)をほぼ一人で担っている
こうしたことは、一見すると「しっかりした子」「家の手伝いをよくする良い子」に見えるかもしれません。しかし、断れない、休む時間がない、学校生活や友だちとの時間に影響が出ている状態であれば、それは“手伝い”ではなく“ケア”です。
今回番組に登場した小学生が口にした「疲れた」という言葉は、とても重要なサインです。子どもがそこまで感じるほどの役割を背負っていた可能性があるからです。

なぜヤングケアラーが生まれてしまうのか

ヤングケアラーの問題は「特別な家庭」だけに起こるものではありません。どの家庭にも起こり得るとても身近な問題です。

1.家族だけで抱え込まざるを得ない社会

核家族化が進み、親戚や近所とのつながりが少なくなった今、家庭の中の困りごとは外から見えにくくなっています。「誰にも頼れない」「相談できる人がいない」状況の中で家の中の役割が子どもに集まってしまうことがあります。

2.経済的・時間的な余裕のなさ

共働きやひとり親家庭が増え、大人が仕事や生活に追われているケースも少なくありません。外部サービスを使いたくても、費用や情報の壁があり「家の中で何とかする」選択をせざるを得ないことがあります。

3.支援制度があっても届かない

実は、日本には介護や子育て、障害に関する支援制度がたくさんあります。しかし、 制度を知らない、手続きが難しそう、どこに相談すればいいかわからないといった理由で必要な支援につながれていない家庭も多いのが現実です。

4.「家族のことは家族で」という思い込み

「家のことを外に話すのはよくない」「迷惑をかけたくない」 こうした思いが強いほど、困りごとは表に出にくくなります。子ども自身も「自分が頑張らなきゃ」と無理をしてしまいます。
今回の番組が炎上した背景にも「親の責任」「子どもにやらせすぎだ」という声が多くありました。しかし同時に「本当は社会がもっと支えられたのではないか」という問いも私たちに投げかけられているのではないでしょうか。

 

ヤングケアラーはなぜ気づかれにくいのか

ヤングケアラーは、とても見えにくい存在です。
学校では「真面目で優しい子」「頼りになる子」と見られ、家では「しっかり者のお兄ちゃん・お姉ちゃん」と期待されます。その結果、周りの大人が困りごとに気づきにくい、本人も「これが普通」と思い込んでしまうという状況が生まれます。
今回のケースでは、テレビという形ではありますが子どもが「疲れた」と言葉にできたこと自体がとても大切な一歩だったといえるでしょう。

ソーシャルワーカーは何ができるのか

では、こうした状況に対してソーシャルワーカーはどんな役割を果たすのでしょうか。

1.誰かを責めるのではなく、一緒に整理する

ソーシャルワーカーは、「誰が悪いか」を探す専門職ではありません。家庭の状況を丁寧に聴きながら、何が負担になっているのか、どんな支えがあれば楽になるのか を一緒に整理していきます。

2.子どもの声を大人や社会につなぐ

子どもは、自分のつらさをうまく言葉にできないことが多くあります。ソーシャルワーカーはその気持ちを受け止め、学校や行政、支援機関につなぐ役割を担います。

3.制度を「使える形」にする

制度はあっても難しく感じられることが多いものです。ソーシャルワーカーは、家庭の状況に合った支援を分かりやすく説明し、必要な手続きもサポートします。

4.子どもが“子どもでいられる時間”を取り戻す

支援が入ることで、家の中の負担が軽くなり子どもが友だちと過ごしたり、休んだりする時間が戻ってきます。それは、将来にわたってとても大きな意味を持ちます。

おわりに──相談していい。知っていい。

ヤングケアラーの問題は、誰かを責めることで解決するものではありません。大切なのは、「家庭だけで抱えなくていい」と知ることです。
もし家のことで毎日いっぱいいっぱいな子どもがいる、子どもに負担をかけているかもしれないと感じている、どこに相談すればいいかわからない、そんなときはソーシャルワーカーという存在を思い出してください。
ソーシャルワーカーは困りごとがはっきりしていなくても相談できます。「これって相談していいのかな?」という段階から一緒に考える専門職です。
学校、病院、福祉施設、地域の相談窓口などさまざまな場所にソーシャルワーカーはいます。知ること、つながることが子どもと家庭を守る大切な一歩になります。
ヤングケアラーを生まない社会は、特別な誰かがつくるものではありません。気づき、聴き、つなぐ。その輪を少しずつ広げていくことから始まります。

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