コラム

介護福祉士の国家試験の変更について(2024年最新版)

はじめに

 令和6年(2024年)3月、厚生労働省から1件の報告書が発表されました。報告書は「介護福祉士の国家試験の検証に資するデータ分析報告書」~介護福祉士国家試験の検証に資するデータ分析に関する検討会~というものでした。聞きなれない言葉が続くので、いったい何を言いたいのかわかりにくいと思います。これは、年に1回実施されている介護福祉士国家試験の受験方法について、変更を考えていますよ。という報告書です。

介護福祉士を目指す方にとって、とても大切な内容です。この報告書で示された内容の詳しい事は、これから検討される事も含まれるといっていますが、今、決まっていることや、今実施されている介護福祉士の国家試験に関して、説明していきたいと思います。

令和6年3月厚生労働省の発表概略(何故変更しようとしたのか)

 介護福祉士は高齢者や障害のある方々の支援をする専門職です。少子高齢化が進む我が国では、2040年(令和22年)度末までに、新たに約69万人の介護人材が必要とされています。また高齢者が多くなることで、認知症高齢者や一人暮らしの高齢者が増加すること想定されています。そのことで、介護職員の高い能力が求められことになります。しかし、少子化が進んできている我が国では、年々介護福祉士を目指す方々が少なくなってきています。また、外国人介護人材(留学生以外)については、在留期間に制約があるので、受験機会が限られています。そのため、日本で働き続けたいと思う外国人介護人材も帰国してしまう場合があります。そこで、介護福祉士になって我が国の高齢化社会の役に立ちたいと思ったすべての人が、受験しやすくなる仕組みとして、主として「パート合格、受験方法、分割パターン」の見直しが発表されました。

しかし、受験しやすくする仕組みとしてあるので、決して問題を簡単にするものではないということも、記されています。

想定される資格取得方法の変更(どんなことが変わるのか)

1 パート合格の導入
例えば、国家試験に不合格であった場合、2回目以降の受験時には不合格パートの学習に注力できるようにする。

2 受験方法
初受験時は全員が全科目を受験、再受験時には合格したパートの受験は希望制とし受験申込時に受験者に選択してもらう。

3 分割パターン
学習への取り組みやすさを重視し、再受験時に注力すべき科目を特定するために3分割がより適切であるとする。

上記内容に関して、厚生労働省は令和6年(2024年)に検討会を開催するとしているので、ここ数年で、変化していくことが明確になりました。
✳今の受験方法等については、後半部分でまとめてあります。

受験者にとっては良いことなの?

受験しやすくする工夫ですから、悪いことではありません。発表概略(何故変更しようとしたか)にもあるように、介護福祉士になりたいと思う人達は、知識や技術を学び、介護が必要な人を支える重要な人材になるので、その人たちを支援するためには良いものです。介護が必要な人を支えるためには、知識と技術が必要だから、学びを深めてほしいという思いが込められていると考えることができます。

今の介護福祉士国家試験について確認してみる

・介護福祉士になるためには、どんなルートがあるのか。

介護福祉士になるためにはどんなルートがあるのでしょうか。今の状況を少し確認していきましょう。まず、介護福祉士になるためには、大きく2つのルートがあります。1つは高校卒業後、介護福祉士養成校(専門学校、短期大学、大学等)で2年~4年間学んで、介護福祉士国家試験を受験するルートです。もう一つは、介護職員として介護等の現場で3年以上現場での実務経験を積み、さらにその3年間のあいだに介護職員実務者研修を受験し、受験資格を得て介護福祉士国家試験を受験するルートです。

 

・介護福祉士国家試験はどんな試験なの?

今後検討されることは主に、この部分に大きく関係するものです。現状を確認しておきましょう。

介護福祉士国家試験は、毎年1月末の日曜日に実施される1年に1回行われる試験です。筆記試験の会場は日本各地で35試験地(2024年1月実施で)があります。基本は本人の希望する試験地で受験します。

試験科目は筆記試験で介護等に関する専門的技能、4領域11科目群です。合格基準は、11科目群すべてに得点があった者です。合格基準点は総得点の60%程度とされています。問題数は125問出題されます。具体的には、もし総得点が120点取れていても、1つの科目群が0点だと、すべてに得点があった者にはならないので、この場合は不合格となります。

✳注:実務ルートの一部には、筆記試験合格後の実技試験がありましたが、今後実技試験は廃止されることが決まっています。

・受験のための主なルートの主な比較

ここでは、以下の主な2つのルートについて確認していきます。

ルート1 介護福祉士養成校に入学して、介護福祉士国家試験を受験する。
ルート2 介護福祉現場等で実務経験を3年以上+介護職員実務者研修受講して介護福祉士国家試験を受験する。

 

比較内容 1養成施設ルート 2実務経験ルート
介護福祉士国家試験受験までの要件 ・1850時間以上の介護福祉士に必要なカリキュラムを学ぶ

・専門学校・短期大学は2年間で、大学は4年間の学び

・介護現場での3年以上の実務経験が必要

・その間に介護実務者研修

450時間を受講する

(通学・通信等+スクーリング7日間程度と最終試験合格が必要)

国家試験受験後の配慮 ①     経過措置という枠がある。

令和9年(2027年)3月31日までに卒業した者は、介護福祉士国家試験に不合格でも、5年間は介護福祉士となる資格を有する者とされる。

これは、介護福祉士国家試験に合格しなくても、5年間継続して介護現場で働き続けた場合、介護福祉士となることができる。

②     留学生への配慮

留学生の場合も経過処置対象である。在留ビザは「介護」を取得できるので、施設以外に在宅現場でも働くことができる。家族を日本に呼び一緒に生活すること等ができる。などがある。

養成施設ルートのような配慮はない。不合格の場合は、合格するまで受験することが必要。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

資格にかかる費用 入学費用や実習等の学費が必要

年間約100万円程度

介護実務者研修にかかる費用が必要

10万~15万円程度

 

学校で学ぶ意義はなに?

2つのルートを示すことで、学校で学ぶ意義は何かと思う方がいるかもしれません。ここでは、学校で学ぶ意義について考えてみました。

・専門的な知識や技術を、教育という専門的技能を持った教員から学ぶことができる。

・様々な実習先で多くの利用者と関わり、自分を成長させることができる。

・介護の現状をみて、多様な背景を持ったクラスメイトと話し合いながら、一人ひとりに合ったこれからの介護を考える場が多くある。

・卒業時には介護福祉士国家試験受験に向けて、力を高めることができる。

ということがあげられると思います。

また、学校で学ぶという事は、入学から卒業まで、入学者にとってより良い方向を考えた中に、入学したい皆さんを迎えるという事ですから、今回のように受験しやすい仕組みを利用しなくても、卒業時には「介護福祉士に合格できる」だけの力をつけていただく工夫が多くされています。

一度就職し、働きながら学び続けるためには、「試験に合格しなくてはいけない」というモチベーションを、長期間持続させていく必要があります。なかなか難しい事だと思います。

学校でみんなで励ましながら合格を目指す環境と、働くことが主となる環境では、ずいぶん異なる環境であることが想像できます。

 

おわりに

介護福祉士の資格取得方法が変化することをお伝えしました。ご理解いただけましたでしょうか。わからないことや、疑問があれば、LINEで気軽にお問い合わせください。

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対象:高校卒業以上の方/留学生

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この記事を書いた人

白井 孝子 先生

東京福祉専門学校副学校長。看護師、介護支援専門員。葛飾福祉館理事。 労働省内診療所にて看護師を経験後、その後東京福祉専門学校設立に携わり輩出した学生は2000人以上

座右の銘:実るほど頭をたれる稲穂かな

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