ソーシャルワーカーはSNSとどう向き合うのか
目次
デジタル時代の孤立を支える専門職の役割
「今の子どもたちはSNSばかり見ている」
そんな言葉を耳にすることがあります。
確かに、現代の子どもや若者にとってSNSは生活の一部になっています。友人との連絡、情報収集、動画視聴、趣味の交流など、多くの時間をSNSとともに過ごしています。
一方で、SNSをめぐる問題も増えています。
誹謗中傷による精神的なダメージ、SNS依存、ネットいじめ、フェイクニュース、闇バイトへの勧誘、孤立感の増大など、その影響は子どもたちの生活や将来にまで及んでいます。
こうした状況の中で注目されているのが、社会福祉の専門職であるソーシャルワーカーです。
ソーシャルワーカーというと、高齢者や障害のある方を支援する仕事というイメージを持つ人もいるかもしれません。しかし現在では、子どもや若者が抱えるSNS時代特有の課題にも深く関わっています。
SNSが当たり前になった社会において、ソーシャルワーカーはどのような役割を果たしているのでしょうか。
SNSは悪者ではない
まず理解しておきたいのは、SNSそのものは悪いものではないということです。
SNSによって私たちは世界中の人とつながることができます。
海外の文化を知ることもできますし、自分の考えや活動を発信することもできます。
例えば、地方に住んでいる高校生が海外の学生と交流したり、同じ夢を持つ仲間と出会ったりすることも珍しくありません。
また、不登校の子どもがSNSを通じて同じ経験を持つ仲間と出会い、「自分だけではない」と感じることもあります。
支援を必要とする人にとっても、SNSは大切な情報源です。
福祉制度や相談窓口の情報、地域のイベントや支援活動などがSNSを通じて広く発信されるようになりました。
実際に、厚生労働省や自治体ではLINEやチャットを活用した相談窓口を整備しており、若者が気軽に相談できる環境づくりが進められています。
つまりSNSは、人と人をつなぎ、社会との接点を広げる大きな可能性を持っているのです。
なぜSNSが問題になるのか
しかし、便利な道具には必ず使い方の難しさがあります。
SNSの問題として最もよく挙げられるのが依存です。
気が付けば何時間も動画を見ている。
勉強中も通知が気になる。
寝る直前までスマートフォンを触っている。
こうした経験をしたことがある人も多いでしょう。
SNSは人の興味を引き続ける仕組みでできています。
次々と新しい情報が流れてきて、終わりがありません。
そのため、利用時間を自分でコントロールすることが難しくなります。
さらに問題なのは、SNS依存の背景には別の悩みが隠れている場合があることです。
学校に居場所がない。
家庭で安心できない。
友人関係に悩んでいる。
将来に不安を抱えている。
そうした苦しさから目をそらすためにSNSへ没頭しているケースも少なくありません。
ソーシャルワーカーは、単に「スマホの使い過ぎ」という表面的な問題だけを見るのではなく、その背景にある生活環境や人間関係にも目を向けます。
SNSの中で起こる「見えないいじめ」
SNSの問題でもう一つ深刻なのが誹謗中傷です。
以前のいじめは学校の中で起こることが中心でした。
しかし現在では、SNSを通じて24時間続く可能性があります。
グループLINEから外される。
悪口を書き込まれる。
無視される。
写真を勝手に拡散される。
大人から見ると小さな出来事に見えるかもしれません。
しかし、子どもたちにとっては非常に大きな問題です。
学校に行きたくなくなる。
人を信じられなくなる。
心身の不調につながる。
そのようなケースも少なくありません。
ソーシャルワーカーは、被害を受けた子どもの話を丁寧に聞きながら、学校や家庭、必要に応じて行政機関や専門機関と連携して支援を行います。
重要なのは、被害者だけを支援するのではなく、なぜそのような状況が生まれたのかを考え、再発を防ぐ環境づくりを行うことです。
スクールソーシャルワーカーの現場
学校には「スクールソーシャルワーカー」と呼ばれる専門職が配置されている場合があります。
例えば、ある生徒がSNSでのトラブルをきっかけに不登校になったとします。
そのときスクールソーシャルワーカーは、
- 本人への面談
- 保護者への相談支援
- 担任や学年主任との情報共有
- 関係機関との連携
などを行います。
そして、「学校に戻すこと」だけを目的にはしません。
本人が安心して生活できる環境を整えることを優先します。
場合によってはフリースクールや地域の居場所につなげることもあります。
ソーシャルワーカーは問題そのものではなく、その人の生活全体を支援する専門職なのです。
SNSを支援の手段として活用する
興味深いことに、ソーシャルワーカーはSNSを問題として扱うだけではありません。
SNSそのものを支援の手段として活用しています。
近年ではLINE相談やチャット相談が全国で広がっています。
厚生労働省が紹介している相談事業では、LINEやチャットを通じて若者の悩みを受け付け、必要に応じて電話相談や対面支援、地域の支援機関につなげる取り組みが行われています。
また自治体でもSNS相談窓口を整備する動きが進んでいます。千葉県でも子どもたちが利用できるSNS相談窓口を紹介しています。
電話は緊張する。
対面では話しづらい。
知らない大人に会うのは怖い。
そんな若者にとって、SNSは支援につながる最初の入口になることがあります。
ソーシャルワーカーは、この入口を広げる役割も担っています。
「助けて」が言えない子どもたち
現代の子どもたちは、必ずしも助けを求めることが得意ではありません。
特にSNSの世界では、自分を良く見せようとする傾向があります。
楽しそうに見える投稿をしていても、実際には深い悩みを抱えていることがあります。
周囲からは順調に見えても、
「誰にも相談できない」
「迷惑をかけたくない」
「どうせ理解してもらえない」
と思い込んでいる場合があります。
ソーシャルワーカーは、そのような声にならないSOSを見つけようとします。
教室での様子。
友人関係の変化。
欠席や遅刻の増加。
家庭状況の変化。
そして近年ではSNS上で発信されるサインにも注意が向けられています。
もちろんSNSを監視するのではありません。
大切なのは、「何かあったら相談できる人がいる」と感じてもらうことです。
孤立を防ぐための居場所づくり
ソーシャルワーカーの役割は問題が起きてから対応することだけではありません。
問題が起きる前に孤立を防ぐことも重要な仕事です。
例えば、
- 子ども食堂
- 学習支援活動
- 地域の交流イベント
- フリースペース
- 若者向け相談会
などの取り組みがあります。
こうした場所には共通点があります。
それは、「何か困っている人だけが来る場所ではない」ということです。
誰でも来ていい。
話さなくてもいい。
ただそこにいてもいい。
そんな居場所があることで、人は孤立しにくくなります。
SNS上のつながりも大切です。
しかし、人と人が実際に顔を合わせ、安心して過ごせる場所には別の価値があります。
ソーシャルワーカーは、そうした地域のつながりを生み出す役割も担っています。
これからのソーシャルワーカーに求められる力
これからの時代、ソーシャルワーカーには新しい力が求められます。
それはSNSを敵視するのではなく、理解する力です。
若者がどのようにSNSを利用しているのか。
どのような悩みを抱えているのか。
どのような情報に影響を受けているのか。
それらを理解しなければ適切な支援はできません。
また、SNSを活用した相談支援や情報発信も重要になっていくでしょう。
つまり、これからのソーシャルワーカーは「人と人をつなぐ専門職」であると同時に、「オンラインとリアルをつなぐ専門職」でもあるのです。
おわりに
SNSは現代社会に欠かせない存在です。
世界中の人とつながることができる。
必要な情報を得ることができる。
助けを求めることもできる。
その一方で、依存や誹謗中傷、孤立といった問題も抱えています。
だからこそ必要なのは、「SNSをやめること」ではなく、「SNSと上手に付き合うこと」です。
そして、そのためには一人ひとりを支える存在が必要です。
ソーシャルワーカーは、人と人とのつながりを支える専門職です。
SNS時代だからこそ、人との関係、居場所、安心できる環境の大切さはますます大きくなっています。
画面の向こうにいる一人ひとりの人生に目を向け、誰も孤立しない社会をつくる。
それが、SNS時代に求められるソーシャルワーカーの大切な役割なのです。
東京福祉専門学校社会福祉科では、このような社会課題についても学んでいくことができます。国家試験に合格するだけでなく、世の中の課題に向き合い、どのように解決していくかを考えて実行する力を身につけます。
東京福祉専門学校社会福祉科で学び、苦しんでいる人を支えることができる力を身につけましょう。