『介護福祉士』って大変なの⁈
「介護はやりたいけど大変そう、、、、、、、」
あるいは、
「どんな仕事でも大変だろうから別に気にならない。」
よく聞くフレーズです。「介護あるある」かもしれません。
介護=大変 というイメージを持っている方はまだまだ多いようですが、それを
覆す可能性があるのがIOTやロボットの活用です。
少子高齢化、人口減少による将来の財源不足に関する懸念…
だからこそSGDsのように、介護も「持続可能」な未来を描く必
介護とロボット
ロボットが介護だなんて冷たいイメージがある…という声も良く聞
しかし、そもそも介護ロボットって何だろう?その定義は実はあま
ません。
ロボットの定義は諸説ありますが、2019年3月に創設された新
士のテキストには、厚生労働省が定める介護ロボットの定義として
情報を感知(センサー系)
判断し(知能・制御系)
動作する(駆動系)
これらの要素技術を有する、知能化した機械システムです。
さらに、ロボット技術が応用され、利用者の自立支援や介護者の負
立つ介護機器を、介護ロボットと呼んでいます。
と記載があります。
機械が人を持ち上げたり、ベルトコンベアで運ばれてガソリンスタ
の洗車機のようにお風呂に入れたりするわけではないのです。
ロボットやICTの先端技術を駆使して、新しい介護の形を作り出
のです。これは世界に先駆けた高齢化の国だからこそのチャレンジ
ではないでしょうか?
介護のみらい
2050年に日本は65歳以上人口(3841万人)、高齢化率(37.7%)を迎えると予想されています。日本以外も高齢化率の上昇が予想されていますが、世界の先駆けは日本です。
そこで本校の介護福祉士科では“みらいの介護”を一早く捉え、対応できる学生を輩出する為、また世界よりも早く高齢化を迎える機会をチャンスと捉え、卒業後リーダーシップを発揮できる人材となる事ができるよう通年カリキュラムに介護ロボット、ICTに関する授業を2年間行っています。
高齢化を迎えることも世界に先駆けてのことですが、介護福祉教育で2年間にわたって毎週1回1コマ・計60コマの介護ロボット、ICTに関する授業を設置している介護養成校は専門学校と大学を含めて世の中にほとんど存在していません(気軽に本校へ見学においで下さいね)
さて、2050年に向けて高齢化率が上昇する一方で人口減少を迎えます。介護に従事する人が不足していると言われていますが、他のIT業界や運送業界でも状況は同じです。”人間ができること”・”介護ロボットができること”を見極めて、人間を減らしても介護の質は維持または向上できるもの、“介護福祉士×介護ロボットの共存”が介護業界には今後必要です。
介護福祉士が中心となり、介護ロボットができることや得意なことを理解した上で施設にいる高齢者の方や障害者の方へ最適なアプローチができるもの、生活を支えることができるロボットは何かをチームで考えていくことができる世界が求められていくと予想しています。
たとえば、施設で生活されている高齢者の方や障害者の方がどのような性格で口癖や考え方の癖があって日々どのような生活を送っているのかといった細かい状況を把握するのは“人間ができること”です。一方で一定以上の筋力(パワー)を持続することや常に集中力を必要とする場面に人間には限界があります。時に人は非力で疲労や集中が切れることもあります。
介護ロボット
介護ロボットはどうでしょうか。一定のパワーを持続しながら稼働することはお手のものだと思います。そして量の計測や行動パターンといったデータ収集・蓄積から一定の法則や根拠を見出すことは“介護ロボットができること”です。
“最強チートスペック”となるヒントがここにあると個人的に考えています。
人間個々が選択や判断してとる行動やその思考パターン、その積み重ねが生活歴、人生歴となるものだと言えるでしょう。前述のように仮にこれらデータに関して日本総人口分の収集・蓄積ができれば、人工知能(AI)の力で一定の法則や根拠を見出せるかもしれません(それはそれで興味深い世界であり、非常に好奇心を駆り立てられます)しかし現実問題、そのデータ収集・蓄積には時間が必要であることは容易に想像できると思います。50年または100年かけてなのか膨大な量のデータを収集・蓄積し続けることになります。100年間を費やして過去100年分のデータ収集・蓄積ができたとしてもデータ1つ1つの信憑性に果たして疑念の余地はないものでしょうか?
人工知能(AI)が過去100年間推移してきた人間の価値観や情緒を汲み取ることができて、時代背景や環境を加味してデータ分析の判断ができたと仮にします。しかし、判断する基となるデータ(100年間に渡って収集・蓄積されてきたもの)の1つ1つ、つまり人間ひとりひとりの行動・思考パターン、生活歴、人生歴と提出されたデータは果たして本当に正しいものでしょうか?それが正しくなければ判断が正しくとも意味がないことは誰もが容易に想像できます。
人間の行動・思考だけを考えてみれば、単純な話です。雨が降っているだけで外に出るのが億劫になりませんか?気分・気持ちは落ち込み、行動が鈍りませんか?人間は行動に至る前に気分・気持ちに大きく左右されています。その左右される要因には天候・気温・湿度・気圧、学校や職場の人間関係など様々あるでしょう。そこに個人がもつ性格や嗜好、快・不快の基準や価値観、日々蓄積した疲労、睡眠不足など複雑に絡み合って人間の生活は構成されています。
介護福祉士
ここからが介護福祉士の出番です。
高齢者の方と「はじめまして~」と挨拶して関わるところから仕事は始まります。他人の人生に関わる瞬間です。そして、この日から生活に関わり、相手について知り、理解を深めていきます。これが介護福祉士の真骨頂ではないでしょうか。データ収集目的で定められたフォーマットだけの人間像の把握にとどまらない人間への理解が介護福祉士には求められます。人間関係が続く限り、その理解は深まっていきます。たとえば、笑顔を引き出せる話題のポイントは人によって違います。そして笑顔ひとつとっても“目尻のシワが5本入っていなければ愛想笑いで合わせてくれている”と分かる間柄、関係性を介護福祉士は構築していきます。
前述のような人間への理解を言語化することは介護福祉士に求められる大切な能力の1つであり、介護福祉士のもつ視点を周りに示すことができます。場合によっては多職種と専門職同士のチーム連携がこれまでも行われてきましたが、より一層の連携強化が”人間ができるもの”として残る部分なのではないでしょうか。
今後の課題
最後に積み残された課題として”介護ロボットができるもの”その強みや必要とする機能を介護福祉士の視点で模索、発信し続ける必要があると思います。人間工学やロボット工学、ITプログラマー、各分野メーカーといった産学問わずエンジニアや専門家の方も介護ロボット開発・普及に日々関わっておられます。そこに介護現場で介護を直接担う介護福祉士も声を挙げて参加していくことが“最強チートスペックな介護ロボット”の早期誕生に繋がるではないかと密かに信じています。
高橋 利明 先生
大学で社会福祉士を学び、卒業後社会福祉士・介護福祉士として介護施設に勤務。学生時代は野球ばかりの生活を体験し、自ら教育の重要さを痛感し転身。現在介護福祉士科の責任者を務めると共に「日本の福祉現場力を高める研究大会」企画委員として活躍。
座右の銘:早寝、早起き!