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コラム

ノーマライゼーション

福祉とは何か?福祉とはふくし 

福祉とは何か、という難しい質問に対して、「ふ」「く」「し」の音に合わせて、「ふつうのくらしのしあわせ」と説明することがあります。わかりやすく簡潔に、現在の福祉の考え方の特徴を示していると思います。

福祉というと、実際にわれわれ専門職などが行っている仕事のこと、つまり福祉サービスが必要な方にサービスを提供すること、またはそのサービスを指すと思いがちです。しかし「福」も「祉」も、どちらも元々「しあわせ」という意味です。今日では、言葉の意味をもっと広くとらえる観点から、福祉サービスが必要な人にそれを提供するだけではなく、すべての人のしあわせを実現していくのが社会福祉の課題である、という考え方が広まっています。いろいろな解釈はあるにせよ、福祉が目指しているものが、普通の暮らしの中にある幸せだとすれば、誰にとっても身近なものと言えそうです。

普通とは何か?

普通とは何か、という問いに簡単に答えることはできませんが、一方でわれわれが「普通」に営んでいる日常生活の中には、直接的・間接的に幸せを生み出す行為が少なからず含まれています。例えば、こだわりのおいしいコーヒーを飲むことや、友人と一緒に食事を楽しむこと、散歩に出て街の空気を感じること、愚痴を言いながらも毎日健康に仕事ができることなどは、普通の生活の中にある小さな幸せではないでしょうか。ところが、障害者や高齢者など、身体や精神(こころ)、環境に課題を抱えた人の中には、こういった自分の望む「普通の暮らし」を実現することが困難な方も数多くいます。

1950年代のデンマークで、バンク-ミケルセンという人が、有名な“ノーマライゼーション”の理念を唱えました。現在では福祉先進国と言われるデンマークですが、当時は障害のある人が、一般社会と隔絶された施設で生活することは珍しいことではありませんでした。バンク-ミケルセンは、知的障害のある人が他の人々と等しく生活し活動することの必要性を訴え、施設の劣悪な生活環境の改革と人間的な支援を推進しました。

さて、60年余りのときが流れた現在の社会は、誰でもノーマルな生活を実現できるものと言えるでしょうか。確かに、時代の変化と共に、福祉サービスのあり方や人々の意識は大きく変化しました。しかし、障害を抱えた人々の社会生活ということにおいては、まだまだ課題があることは否めません。バリアフリー化が進んでも、都心部の巨大な駅で階段を使わずに移動するためには、大変な迂回をしなければならないことがほとんどです。こういった身近な障壁は、障害者や高齢者の社会的な活動の機会を容易に奪ってしまいます。その不便さを、障害があるのだから仕方がないと片付けてしまうのであれば、ノーマルな社会の実現には、まだまだ程遠いと言えるでしょう。また、私は現在、学校業務の傍ら、地域の障害者の相談支援にも携わっていますが、そこでは上述の「普通の暮らしの中のなかにある小さな幸せ」は、あたかも大きな夢のように語られることが多いのが実情です。

誰もが自分が望む社会生活を実現していくためには、環境の整備と人々の意識改革の両方が必要であることは言うまでもありません。私はノーマライゼーションの実現を、結構本気で考えている者のひとりです。コラムを読んでいただいた皆さんも、私と一緒に考えてみませんか。

参考文献

『新・社会福祉士養成講座6相談援助の基盤と専門職』中央法規出版(2015年)

『社会福祉士シリーズ14障害者に対する支援と障害者自立支援制度』弘文堂(2018年)

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この記事を書いた人

西園寺 弘久 先生

横浜ほうゆう病院勤務、その後 東京福祉専門学校が運営している地域活動相談支援センターかさいで精神保健福祉士として業務に従事しその後東京福祉専門学校専任教員として働いている
座右の銘
神様は越えられない壁を作らない

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