コラム

NEW

作業療法とゲームの関係について

「ゲームが好き」、「人の役に立つ仕事がしたい」
もしこの2つに興味があるなら、「作業療法士」という仕事を知ってほしいと思います。
作業療法士は、病気やけが、障害などによって生活が難しくなった人が、その人らしい生活を取り戻すためのサポートをするリハビリテーションの専門職です。
子どもから高齢者まで、さまざまな人と関わりながら「その人がやりたいこと」を大切に支援していきます。そして最近、作業療法の世界でもゲームやe-sportが新しい可能性として注目されています。
今回は「ゲーム」と「作業療法」がどのようにつながるのかを紹介します。

「作業」とは、生活の中の大切な活動

「作業」という言葉を聞いてどんなことをイメージするでしょうか。
DIY? 手芸? 何かものを作ることを作業として思い浮かべる人が多いかもしれません。
でも、作業療法士が支援する「作業」にはとても広い意味があります。
・食事をする
・着替える
・学校に行く
・友だちと遊ぶ
・スポーツをする
・趣味を楽しむ
こうした生活の中で人が行うすべての活動のことを「作業」と呼びます。
つまり、ゲームをすることも大切な「作業」の一つなのです。

ゲームがリハビリになる?

「ゲームって遊びでしょ?」と思う人もいるかもしれません。
しかし、ゲームをするためには実は多くの能力が必要とされていたりします。
例えば
・画面を見て状況を判断する力
・画面に合わせて指をすばやく動かす力
・先を予測して作戦を考える力
・注意を向けて集中する力
・仲間と協力するコミュニケーション
また、これらはすべて生活をするためにも必要とされる大切な能力です。
例えば、手にけがをした人が、リハビリとして指を動かす練習をするとき、ただ同じ動きを繰り返すだけでは退屈になってしまうことがあります。
そんなとき、ゲームを使ってみると、
「もう一回やりたい!」、「次は勝ちたい!」と、
楽しみながら複雑に指を動かす練習になることもあるのです。

子どもの発達とゲーム

作業療法士は、発達に課題のある子どもたちの支援も行います。
例えば
・手先を器用に動かすことが苦手
・座っていられない、集中が続きにくい
・友だちと遊ぶのが難しい
こうした子どもたちに対して、ゲームはとても良いツールになることがあります。
ゲームの中では
・手を動かす、集中する
・タイミングを合わせる
・ルールを守る
・仲間を応援する、協力する
といった力を自然に練習することができます。
また、ゲームが好きな子どもや得意な子どもは多く、ゲームによって難しさも調整できるので、「できた!」という成功体験を感じやすいのも大きなポイントです。
成功体験は、子どもの自信につながり、「もっと挑戦してみよう」という気持ちを育みます。

ゲームの成功体験を、生活の力につなげる

もちろん子どもがゲームをする上では、気をつけなければいけないこともあります。
例えば、ゲーム依存、視力の低下、生活リズムの乱れなどが心配されることがあります。
だからこそ大切なのは、ゲームを「しない」ことではなく、「上手につきあう」ことです。
そのためにも、子どもの発達においてはゲームの中で「できた!」という経験をしたとき、その成功体験をゲームの中だけで終わらせないことがとても大切です。
作業療法士は、ゲームで得た成功体験を、日常生活の力につなげていく工夫をします。
例えば、ゲームで集中してミッションをクリアできた場合には、
「さっきみたいに集中すれば、学校の課題にもチャレンジできそうだね」と声をかけることがあります。また、ゲームの中で友だちと協力できた経験があれば、
「さっきチームで協力できていたね。同じように友だちとも相談しながら協力できそうだね」
と、ゲームの経験と現実の生活を結びつけていきます。
さらに、ゲームのルールを守って遊べた経験は、
・順番を守る
・約束を守る
といった社会のルールを学ぶことにもつながります。
このように作業療法士は、子どもの感じた「できた!」「楽しい!」「もう一回やりたい!」という気持ちを大切にしながら、その経験を生活の中の自信へと広げていくサポートをしています。
正しく扱うことができれば、ゲームは子どもの成長につながる大切なきっかけになることもあるのです。

e-sportsとリハビリ

最近では、e-sportsとリハビリを組み合わせた取り組みも広がっています。
e-sportsは、ゲームを競技として楽しむスポーツです。
世界中で大会が開かれ、プロの選手もいるほど大きな文化になっています。
このe-sportsは、障害のある人や高齢者にも新しい可能性を広げています。
例えば
・手が動きにくい人でも操作しやすいコントローラーを使う
・車いすの人も同じ舞台で競技できる
・たとえ寝たきりであってもオンラインで世界中の人とつながる
など、身体の違いをこえて参加できるスポーツでもあるのです。
作業療法士は、こうした活動を通して
「好きなことをして生活を楽しむ」、「社会や仲間とつながる」という大切な経験をサポートします。

「やりたいこと」を大切にする仕事

作業療法士が大切にしているのは、「その人がしたいと思う、その人らしい生活」です。
例えば
・家族のために料理をしたい
・仕事がしたい、会社に復帰したい
・スポーツをしたい、観に行きたい
・旅行や趣味を楽しみたい
人によって夢や目標は違います。
作業療法士は、その人の身体や心の状態、生活環境を一緒に考えながら、
「どうすればできるようになるか」を考え、練習や工夫を提案します。
ときには道具を作ったり、環境を整えたり、やり方を工夫することもあります。
ゲームが好きな人には、ゲームをリハビリの手段にすることもあります。
作業療法士の仕事とは「その人の生活に寄り添う仕事」なのです。

好きなことが、誰かの力になる

ゲームが好きな人の中には、「ゲームばかりしていていいのかな」
と思ったことがある人もいるかもしれません。
でも、好きなことがあることで、毎日に楽しみがあって生活は豊かになります。
ゲームが好きだからこそ
・ゲームの面白さがわかる
・人が夢中になる理由がわかる
・仲間と協力する楽しさがわかる
そうした経験は、将来誰かを支える力になるかもしれません。
作業療法士の仕事は、医療やリハビリの知識だけでなく、
人の想いを理解すること、そして相手の好きなことを大切にすることがとても重要です。

これからの作業療法

これからの社会では、ゲームやe-sports、AR・VR、いろいろなデバイスやアプリケーションなど、新しい技術とリハビリが組み合わさっていく可能性がたくさんあります。
まだ誰もやったことのない方法で、人の生活を支える仕事が生まれていくかもしれません。
「人の役に立つ仕事がしたい」、「医療やリハビリに興味がある」、「ゲームや趣味を大切にしたい」と思っているなら、作業療法士という仕事があることを、ぜひ覚えておいてください。
あなたの「好き」が、誰かの生活を支える力になるかもしれません。
それが、作業療法という仕事の魅力だったりします。

(一般社団法人 東京都作業療法士会  中里 武史)

 

東京福祉専門学校の作業療法士科についてはこちら

関連学科

作業療法士科 4年制【高度専門士】

高校卒業以上

国家資格:作業療法士、幼稚園教諭

コラム:カテゴリー

作業療法士

カテゴリー