発達障害×IT分野について
「無事に学校へ通えるようになった。でも、この先ちゃんと就職して、一人で生きていけるのだろうか……」
進路に悩む高校生や、一度は大学に進んだものの行き詰まってしまった若者たち。そして、彼らを一番近くで見守る保護者の方々から、そんな切実なため息が聞こえてくることが増えているのではないかと感じます。
近年、発達障害やその傾向を持つ「グレーゾーン」と呼ばれる若者が増え、社会の認知も確かに進んでいます。小・中学校でのサポート体制はもちろん、高校進学の際にも通信制高校やサポート校など、毎日の通学や集団生活が苦手でも「自分のペースで学べる居場所」はずいぶんと見つけやすくなりました。不登校を経験した子どもたちにとっても、これは非常に喜ばしい変化です。しかし、学校という守られた環境から「社会」という大海原へ出る瞬間、そこには依然として、想像以上に高く険しい「崖」がそびえ立っています。
目次
「就活」という名の厚い壁と、隠された数字
日本学生支援機構(JASSO)の調査を見ると、胸が締め付けられるような現実が浮かび上がってきます。現在、全国の大学等で学ぶ発達障害の学生数は年々増加の一途をたどっています。しかし、彼らの卒業時の就職率は、おおむね60%前後にとどまっているのです。全学生の平均就職率が75~80%を超える現代において、この数字の低いと言えます。
彼らの中には、知的好奇心が旺盛で学業成績も優秀な人もいます。しかし、日本の就職活動は「空気を読むグループディスカッション」や「臨機応変な受け答えが求められる面接」など、彼らが最も苦手とする『高度なコミュニケーション能力』を容赦なく要求してきます。何十社と履歴書を送り、そのたびに不採用通知を受け取るうち、「自分は社会から必要とされていない人間なんだ」と深く傷つき、社会に出る手前で立ちすくんでしまう若者が後を絶ちません。
制度の狭間で悲鳴をあげる「グレーゾーン」の若者たち
もちろん、社会もただ指をくわえて見ているわけではありません。企業側の受け入れ体制は国を挙げて進められており、2026年7月からは企業の障害者法定雇用率が「2.7%」へと引き上げられ、対象となる企業規模も拡大されます。自分の特性を会社に伝えて配慮を受ける「オープン就労」であれば、就職後1年間の定着率(働き続けられる割合)は約71.5%と、比較的安定しているというデータ(高齢・障害・求職者雇用支援機構調べ)もあります。
しかし、ここでこぼれ落ちてしまうのが、確定診断が下りない、あるいは障害者手帳を取得できない「グレーゾーン」の若者たちです。彼らは手帳がないため、手厚い配慮を受けられる障害者雇用枠を活用できません。結果として、何の配慮もない一般枠(クローズ就労)で厳しい競争社会に飛び込まざるを得なくなります。職場の暗黙のルールや、同時に複数の業務をこなすマルチタスクについていけず、「やる気がない」「努力が足りない」と誤解され、孤立してしまう。クローズ就労の1年後の定着率が約30%にまで激減するというデータは、彼らが職場でどれほど孤独な戦いを強いられているかを如実に物語っています。
IT活用の可能性と「IT業界で才能を発揮!」というニュースの落とし穴
IT(コンピューターやインターネット)の仕事には、システムやアプリを作るときに「設計図(作り方が書かれたメモ)の通りにプログラムを書いたり、ちゃんと動くかチェックしたりする役割」があります。この仕事は「なにをするべきか」がはっきりしていて、ルールや順番の通りに進めやすいのが特徴です。そのため、発達障害がある人の「一つのことにすごく集中できる力」や「決まり通りにきっちりやりとげる力」が、とても活かせる仕事だと言われています。
実際に最近のニュースでも、「発達障害の人の特徴は、IT業界で大きな武器になる」と明るく取り上げられることが増えました。ものすごい集中力や細かいところへの強いこだわりを活かして、プログラマーや不具合を見つけるエンジニアとして大活躍している若者たちの姿がよく紹介されています。しかし、こうした「IT業界で才能を発揮!」という華々しいニュースには大きな落とし穴もあります。
それは、「発達障害があれば、ITの天才になれる」という偏ったメッセージとして伝わってしまい、かえって若者たちを追い詰めていることです。成功した人のニュースを見るたびに、「自分にはあんな複雑なプログラムを書く才能なんてない」「特別な才能を持った、ほんの一握りの人しか結局は社会に認められないんじゃないか」とプレッシャーを感じ、自信をなくしてしまう当事者が少なくないのです。誰もが世界に名を残すような天才プログラマーになれるわけではありません。発達障害を持つ人がIT業界で活躍できる可能性は確かに広がっています。しかし、「特別な才能がなければ生き残れない」という極端な風潮は、ごく普通の心優しい若者たちにとってあまりにも残酷であり、「天才でなければいけない」と思い込んでしまうことには注意が必要です。
才能より「基礎体力」。当たり前のPCスキルこそが最強の武器
では、特別な才能がない若者は、どうすれば社会で生き抜いていけるのでしょうか。ここで少し、視点を変えてみましょう。現代のビジネスシーンを見渡せば、福祉、介護、販売、飲食、物流、事務など、あらゆる業界で急速にIT化が進んでいます。介護施設ではタブレットで利用者の記録をつけ、小売店ではシステムで在庫を管理し、事務職ではExcelでデータをまとめ、Wordで報告書を作ります。つまり、今の社会で自立して働くために必要なのは、高度なプログラミング技術ではありません。「簡単なパソコン操作ができること」が、もはや特別なスキルではなく「働くうえでの当たり前の前提」になっているのです。これは希望の光です。一部の天才的な才能がなくても、「Word、Excel、PowerPointといった基礎的なパソコンスキル」さえしっかりと身につけていれば、それはどの業界に行っても通用する、安定して働き続けるための「強力な武器」になるからです。一発逆転の魔法を探す前に、まずは社会で生き抜くための「基礎体力」をつけること。それが何よりの近道です。
自分らしさを取り戻す場所「東京福祉専門学校 キャリアデザイン科」
「難しいITスキルには自信がないけれど、働くための基礎をしっかり学びたい」「過去の失敗で自信を失ってしまったから、自分のペースでゆっくりと社会に出る準備をしたい」そんな若者たち、そして彼らを支える保護者の方々に、ぜひ知っていただきたい場所があります。それが「東京福祉専門学校のキャリアデザイン科(1年制)」です。この学科は、進路に迷ったり対人関係に不安を抱えたりしている若者たちが、1年という時間をかけて無理なく社会へ羽ばたくための「橋渡し」となる場所です。ここには、若者を急かしたり、無理な競争をさせたりする空気はありません。
いきなり難解なプログラミングを押し付けて挫折させるようなこともありません。まずはビジネスの現場で誰もが使うWordやExcelの基礎を、電源の入れ方やタイピングから丁寧に学びます。目標は、就職活動で大きな武器になる「MOS(マイクロソフト・オフィス・スペシャリスト)」の資格取得。「できた!」「資格が取れた!」という小さな成功体験の積み重ねが、彼らの失いかけていた自己肯定感を少しずつ、しかし確実に回復させていきます。そして何より素晴らしいのが、一人ひとりの特性に合わせた「完全個別の就活サポート」です。自分の強みを引き出す履歴書の書き方から最も苦手意識を持ちやすい面接の練習まで、内定を獲得できるように個々の対応を行い、寄り添います。「とりあえず何十社も受けて、落ちながら学べ」という乱暴な指導はしません。その人の性格や特性を深く理解し、無理なく自分らしく働ける職場を、一緒になって探します。さらに、クラス担任制や専門カウンセラーによる心理サポート、保護者向けの「保護者会」なども充実しており、孤独になりがちな就職活動を「学校と家庭のチーム戦」で乗り切っていきます。
焦らなくていい。回り道は、決して無駄にならない
もし今、過去のつまずきや将来への不安で足がすくんでしまっているのなら、どうか焦らないでください。自分を無理に社会の厳しい枠に押し込んで、心をすり減らす必要はありません。世の中には、東京福祉専門学校のキャリアデザイン科のように、個性を認め、基礎から丁寧に育ててくれる環境が必ず存在します。特別な才能なんて、なくても大丈夫です。自分に合ったペースで基礎を固め、あなたらしく輝ける場所を見つけること。その確かな第一歩を踏み出すための選択肢は、ちゃんと用意されています。