コラム

運動学の視点で対象者を支援する~作業療法の面白さ~

みなさんは「作業療法」「運動学」と言われてどんなイメージを持たれますか?
どちらも聞きなれない方には難しい印象を受けるかもしれません。
今回は「作業療法」と「運動学」について簡単に解説していきたいと思います。

作業療法ってなんだろう?

日本作業療法士協会の定義によると

【作業療法は、人々の健康と幸福を促進するために、医療、保健、福祉、教育、職業などの領域で行われる、作業に焦点を当てた治療、指導、援助である。作業とは、対象となる人々にとって目的や価値を持つ生活行為を指す。作業療法は「人は作業を通して健康や幸福になる」という基本理念と学術的根拠に基づいて行われる。】
とされています。

簡単にまとめると、以下のようになります。
目的:人々の健康と幸福を促進すること。
手段:作業に焦点を当てた治療、指導、援助。

曖昧な表現が多いように感じるかもしれません。
作業療法の取り扱う領域はとても広く、障害の有無に関わらず作業に困難さが生じて健康や幸福が十分でない方が対象となります。

そして作業が行えることと人の健康と幸福は密接な関係があるという前提があります。

作業ってなんだろう?

「作業」とは、人々にとって目的や価値を持つ生活行為を指すと表現されています。
人は様々な作業を行いながら生活しています。
朝起きたら顔を洗う、着替える、トイレに行く。
家族のために料理を作る、掃除をする、洗濯をする。
金銭を稼ぐため、家族を養うために仕事をする。
楽しむために趣味である釣りをする、ゴルフをする、ゲームをする。
これらすべてが作業です。

人それぞれ一日、一生のなかで行う作業は異なります。
その人が価値を置いている作業を把握し、その作業が行えるように支援することが作業療法士の役目といえます。

そのため、対象者一人一人に合わせたオーダーメイドのリハビリを提供することが作業療法士の仕事です。

以上のことから作業療法の取り扱う範囲はとても広く、たくさんの魅力があります。
そんな作業療法の中でも今回は「運動学」に焦点を当てて紹介します。

運動学ってなんだろう?

みなさんは体を動かす際にどんな力が働いて体が動いているかわかりますか?

運動学とは運動に影響する要素、原因を考慮しないで物の運動と記述を関係させる古典的な力学の部門であり、基本的に位置の移動とその時間的変化を対応させて考える学問です。
言葉だけ見るととても難しく感じますね。
しかし、みなさんが座っている・立っている・歩いている・作業をしている際にはなにかしらの運動を行っており、力が働いています。
無意識のうちに体は「運動学」に基づいて動いています。

運動学を学ぶことで人間が運動をするために重力やてこの影響を受けながらどのように筋肉を働かせて関節を動かすのか、身体に負荷をかけるのかを分析することができます。

作業療法と運動学

作業療法においては運動障害により作業を遂行することが困難となった対象者について、なぜ作業遂行が困難となっているのかを運動分析し、原因を特定することができます。

また、原因となっている運動の困難さに対して適切な体の動かし方姿勢鍛えるべき筋肉道具の使用方法道具の選定などを助言することに役立ちます。

事例

80歳代の女性(Aさん)が洗濯物干しに手が届かず、家庭での役割である洗濯という作業が行えなくなっているとします。

運動学の視点で分析すると女性の姿勢が悪く、物干しに手を届かせるための可動域が足りていないこと、姿勢を悪化させている原因として背中の筋力が不十分であることを把握します。

姿勢の改善のために、
・必要な筋力訓練を治療として行う
・日常的生活上で姿勢を改善するための生活習慣を指導する
・現在の姿勢のまま手を届かせるために物干しの高さを下げる工夫を助言する
こうしたことを行うことで、Aさんが役割である洗濯という作業を行い続けることを支援します。

結果、Aさんの姿勢は改善し洗濯物干しという家庭内での役割を安全に行うことができるようになりました。

運動学をもとに考えることで作業の困難さの原因が特定でき、どのように支援すればその作業を行うことができるのかを一緒に考えることができます。

また、機能の改善のみが目的ではなくAさんにとって大事な洗濯物干しという役割を担えることが作業療法においては重要です。

なぜなら作業療法士は役割作業が与える健康への影響を知っているからです。
人は他者のために働きかけることができたとき、満足感や自己効力感を得て精神的な健康へ向かうことができます。
運動学はその一助となる学問です!!

おわりに

運動学を学んでいなければその姿勢が正常なのかどうかを分析できません。
作業を行うためになぜその運動が行えないのかを分析できません。
運動を完遂するために必要な筋肉の働きを考えることができません。

運動学を扱いながら作業療法を行えることで、対象者の困っている作業がどのように運動すれば安全に効率よく行えるのかを考えることができます。

もちろん作業療法のすべてを運動学で網羅することはできません。
なぜなら作業を行うために必要な要素は運動だけではないからです。
その幅広さが作業療法の面白さであると言えると思います。

作業療法にはたくさんの魅力があります。
今回はその一つ、運動学に焦点をあてて紹介しました。
ぜひ作業療法に興味を持っていただけたら幸いです。

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