コラム

介護福祉士としてキャリアップしていくには

介護福祉士の現実

介護福祉士という職業は、その存在が当たり前となり過ぎているため、その重要性が見過ごされてしまうことがあります。介護福祉士は高齢者や障害者の生活を支えるため、毎日の介護に努力を惜しまない素敵な存在です。しかし、介護の現場では多くの困難が待ち受けており、その挑戦には、多くの人が気づきにくいことがあります。

例えば、介護福祉士は利用者の身体的なケアだけでなく、精神的なサポートも行います。昼夜を問わず、利用者の心身の健康を守るため利用者を観察して、時には家族との調整役を担うこともあります。

心温まるエピソード

介護福祉士が体験する日常には、多くの心温まるエピソードがあります。

一つ目は、私がデイサービスで勤務していたときにあった場面です。認知症のあるAさんが、いつも施設内を歩いて(徘徊)いて、落ち着かない様子がありました。認知症のケアで大切なことは、直前の記憶が消えていくこと、若いころの記憶が鮮明になることがわかっています。そこで、Aさんの昔のライフスタイルを家族から聞いて情報を集めました。家族から、野球がとても好きで、昔、草野球の4番でエースであったことがわかりました。私は介護福祉士として、Aさんの昔の記憶を大切にして、安全にキャッチボールを行いました。すると、サウスポーでボールをキャッチャー役の介護職員に投げていました。そのときは、とても笑顔になり、感情も落ち着いて、歩くこともありませんでした。その後、草野球時代に帰ってもらうために、当時の草野球のグランドに行きました。Aさんは、「変わったなぁ」と話して、会場で投球を行いました。とても喜んでいる姿を見られることが、介護福祉士としてこの上ない至福の時です。

二つ目は、看取りの場面でした。特別養護老人ホームに入居されているBさんはビールがとても好きな男性でした。毎日少量のビールを夕食に飲むことが、ささやかな生活の楽しみでした。Bさんが体調を崩してしまい、衰弱して、いよいよ看取りになりました。私たち介護チームは、Bさんに最後の日まで、Bさんの大好きなビールを飲んでほしいと考えて、看護師、医師、栄養士などを相談、検討して、亡くなる日まで、毎日ビールを飲むという個別の介護計画を立てました。ビールをそのまま液体で飲むにはリスクがありましたので、トロミをつけて、あめ玉のようにして、少しずつなめてもらい最期まで「幸せ」な時間を過ごしていただけるようにケアをしてきました。

Bさんが亡くなり、本当にこのケアで良かったのか・・・と自問自答していたところ、数日後、ご家族が施設にいらしゃり「おじいちゃんに亡くなる前日まで大好きなビールを飲ませてくれて、ありがとうございました。」と感謝のお言葉をいただきました。このとき、私たちチームは、Bさんの望んでいることを考え、チャレンジしたことをチーム全員で喜び、涙したことを今でも覚えています。

介護は楽しく、素敵で、奥深い、いろいろと心温まる場面がたくさんある仕事です。

このようなエピソードは、介護福祉士の仕事が単なる業務の遂行だけではなく、利用者や家族の心のケアにまで及ぶものであることを物語っています。介護福祉士や介護チームが利用者や家族の毎日の生活にどれほど大きな変化をもたらすのかを理解することで、介護の仕事に対する評価や意識がより高まっていくことになります。

未来を切り開くチャレンジ

介護の現場は今、大きな変革の時を迎えています。技術の進化と新しい介護モデルの導入により、介護福祉士の役割や働き方も大きく変わりつつあります。特に、ICT(情報通信技術)の導入は、介護現場に新たな可能性をもたらしています。

例えば、ICT(情報通信技術)の導入により、心理面の介護の負担が軽減され、介護福祉士はより多くの時間を利用者とのコミュニケーションや心理的なサポートに充てることができるようになりました。また、AIを活用した健康管理システム(睡眠センサーやおむつセンサーなど)により、利用者の健康状態をリアルタイムで把握し、迅速に対応することが可能になっています。

さらに、ボディメカニクスの原則(腰痛にならないようにするためにある介護するための原則)を活用した身体の負担の少ない介護技術を使えば、身体的な介護の負担が軽減され、介護福祉士の腰痛になるリスクも少なくなります。介護現場では、腰痛のリスクが大きく取り上げられていますが、未だに力任せの介護を行っているところが多く散見されます。私が介護施設やデイサービス、訪問介護の現場にお伺いして、ボディメカニクスの原則を活用した身体の負担の少ない介護技術をお伝えしていますが、ほとんどの現場で腰痛のリスクが改善しています。また、介護職員の介護に対するモチベーションアップにもつながっています。皆さんもボディメカニクスの原則を活用した身体の負担の少ない介護技術を是非、学校で習得してください。

 

 

介護福祉士としての成長への道筋

介護福祉士として、スキルアップの方法も、たくさんの道筋があります。資格取得や専門的な研修を受けることで、より高いレベルのケアを提供できるようになります。さらに、リーダーシップやマネジメントのスキルを身につけることで、介護現場のリーダーとしてキャリアアップができ、活躍する道も開かれています。

また、シニア産業の拡大に伴い専門的な知識を活かして活躍する介護福祉士も多数おります。また、次世代の介護福祉士の養成、介護職員初任者研修等の講師や専門学校教員など活動の場も増えて、多くの人々に専門的な知識と自らの介護職としての多くの経験を提供することができます。

このように、介護福祉士のポテンシャルは、多くの可能性が広がっており、専門性を高めることでより充実したプロの介護を極めていくことができるのです。

介護の価値を再認識するために

介護福祉士の仕事のバリューを再認識し、多くの人々に理解してもらうためには、社会全体の意識を変えていくことが必要です。介護福祉士、介護職員の役割が、どれほど社会的に重要なのか、またその仕事に携わる人々の努力やパッション、仕事の楽しさや面白さを伝えていくことが大切です。

例えば、介護福祉士の労働環境の改善や、適切な評価をすることが求められます。さらに、介護に対するポジティブなイメージを広めるための啓発活動や、介護職に対する理解を深めるためにいろいろな場面に介護福祉士の皆さんが参加することが重要になります。

介護福祉士のバリューを理解し、介護職員を支援することは、介護福祉士を社会に高く認知させ、     社会全体の福祉を支えることにも繋がります。日本国民の皆さんが、介護の現場で働く人々の努力とチャレンジを認識し、そのバリューを尊重することで、より良い社会を構築することになります。

まとめ

介護福祉士の仕事は、日々の努力とチャレンジによって支えられています。その仕事には多くの困難がありながらも、多くの心温まるエピソード、これからの介護の変革の兆しが見え、介護技術の進化やICTの導入により、未来の介護福祉士の仕事はますます充実し、社会全体に大きな影響を与えていくことになります。

介護福祉士の役割を理解し、そのバリューを再認識することで、日本の社会はより温かく、支え合うことができるでしょう。介護福祉士たちのチャレンジとその先にある希望を、日本全体で応援し、一緒に未来を切り開いていくことが大切になります。

 

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