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医療ソーシャルワーカーの役割とは。話を聴いて支える医療職。

ドラマ『コウノドリ』が教えてくれた“もうひとつの医療”

2015年に放送されたドラマ『コウノドリ』を覚えていますか?
産婦人科医・鴻鳥サクラが、命の誕生に関わる人々の想いや葛藤を描いた作品です。
このドラマの中で、医療現場の裏側にいる“もうひとりの医療職”が紹介されました。
それが**医療ソーシャルワーカー(社会福祉士)**です。

ドラマのある回で、経済的に出産費用を払えない母親や、夫からのDVに苦しむ妊婦、身寄りのない高齢の患者など、医師や看護師だけでは支えきれない「生活上の困りごと」を抱えた人たちが登場します。
その時、患者さんの話を丁寧に聴き、関係機関とつなげ、退院後の生活を整えていく――。
それを行っていたのが、医療ソーシャルワーカーでした。

このドラマを見て、「こんな仕事があるんだ」と初めて知った人は少なくありません。
実際に東京福祉専門学校の在校生にも、「コウノドリを見て医療ソーシャルワーカーを目指した」という人がいます。

では、医療ソーシャルワーカーとは、どんな仕事なのでしょうか?
そして、なぜ今この仕事が必要とされているのでしょうか。

医療の現場で“生活”を支える専門職

病院には、医師や看護師だけでなく、薬剤師、理学療法士、管理栄養士など、さまざまな専門職がいます。
その中で医療ソーシャルワーカーは、病気を治すことではなく、病気を抱えながら生きる人の生活を支えることを専門としています。

たとえば、こんな相談があります。

  • 「がんの治療で仕事を休まなければならず、収入が減ってしまう」
  • 「高齢の親が退院しても、家でどう介護していいかわからない」
  • 「医療費が払えず、治療を続けられない」
  • 「家族が突然の事故で入院し、これからの生活が心配」

こうしたとき、患者さんや家族の話を丁寧に聴きながら、社会保障制度や支援サービスをつなぎ合わせていくのが医療ソーシャルワーカーの役割です。

病気や障害は、誰にでも起こり得ます。
そして、病気になることで、お金・仕事・家族・住まい・心の支えといった「生活の土台」が揺らいでしまうことがあります。
医療ソーシャルワーカーは、その揺らぎを支え直すために働いています。

ある患者さんの物語――退院支援の現場から

ここで、実際の医療ソーシャルワーカーの仕事の一例を紹介します。

一人暮らしのおじいさんの退院

70代のAさんは、一人暮らし。
ある日、転んで骨折し、入院しました。
手術は無事に終わり、少しずつ歩けるようになってきましたが、医師が「そろそろ退院ですね」と言うと、Aさんは困った顔をしました。

「家には誰もいないし、まだうまく歩けない。
買い物も風呂もできそうにない…どうしたらいいんだろう。」

そこで登場したのが、医療ソーシャルワーカーです。
Aさんの話を丁寧に聴きながら、「どんな生活を望んでいるのか」「どんなことが不安か」を一緒に整理していきました。

その中で、「できるだけ自宅で暮らしたい」というAさんの思いを尊重し、
介護保険を使ってヘルパーさんに来てもらえるように手続きをサポートしました。
さらに、デイサービスや食事の配達も利用できるように、地域の人たちと連携しました。

退院の日、Aさんは少し照れくさそうにこう言いました。
「もう家には帰れないと思ってたけど、話を聴いてもらって、支えてくれる人がいるって分かって、気持ちが軽くなったよ。」

こうした一人ひとりの「生活を取り戻す」お手伝いこそ、医療ソーシャルワーカーの大切な仕事なんです。

チーム医療の中で「心」と「暮らし」を担当

病院では、たくさんの職種がチームになって患者さんを支えています。
医師は治療を、看護師はケアを、リハビリ職は体の回復を。
そして、医療ソーシャルワーカーは、患者さんの“心”と“生活”を支える役割を持っています。

たとえば、がん治療を続けながら仕事をしている人がいたとします。
治療のスケジュール、職場への報告、収入のこと、家族の心配――。
医療ソーシャルワーカーは、そうした一つひとつの問題を整理し、社会制度(高額療養費制度、傷病手当金など)を紹介したり、会社や地域とつないだりします。

つまり、「病院で終わらないサポート」。
治療の“その後の人生”まで見据えて、患者さんを支えるのです。

 

高校生に伝えたい――“誰かの力になりたい”という気持ちが出発点

「医療ソーシャルワーカーって、難しそう…」
そう感じる人もいるかもしれません。

でも実は、この仕事の原点はとてもシンプルです。
それは、“困っている人の力になりたい”という気持ちです。

医療ソーシャルワーカーは、人の話を聴くことから始まります。
相手の気持ちに寄り添いながら、「この人に今、何が必要なのか?」を一緒に考えていきます。
答えはいつもひとつではありません。
だからこそ、社会の制度を学び、チームで考え、相手に合った支援を探していく力が必要です。

東京福祉専門学校の在校生も、「病気の祖母を支えてくれた人がいて、自分もあんな風になりたい」「誰かの“ありがとう”を支えたい」といった思いからこの道を選んでいます。
資格を取るまでには専門的な学びが必要ですが、その学びの先には、人の人生を支えるやりがいがあります。

これからの社会で、ますます求められる存在に

今、日本は高齢化が進み、医療や介護を必要とする人が増えています。
また、がんや難病、メンタルの不調など、長く病気と付き合いながら生きる人も少なくありません。
そんな時代だからこそ、医療ソーシャルワーカーの存在がますます重要になっています。

病気を治すことだけではなく、その人が「自分らしく生きる」ことを支える。
それが、これからの医療に欠かせない視点です。

最後に――「誰かの人生を支える医療職」という選択

『コウノドリ』の中で、医療ソーシャルワーカーはこんな言葉を口にします。
「私たちの仕事は、患者さんの“その後の人生”を支えることです。」

医療ソーシャルワーカーは、命の現場で“もうひとつの医療”を担う存在です。
それは、薬や手術では治せない「生活の不安」や「心の痛み」に寄り添う医療職。
ときには涙し、ときには笑いながら、人の生きる力を信じて伴走します。

高校生のあなたがもし、「誰かの支えになりたい」「人の話を聴ける人になりたい」と感じるなら、医療ソーシャルワーカーという道は、きっとあなたに向いています。

病院の中で、静かに、でも確かに人の人生を支える――。
そんな医療の形が、ここにあります。

 

東京福祉専門学校社会福祉科には、【児童福祉専攻】【医療福祉専攻】【総合福祉専攻】の3つの専攻があります。3年次からは自分が興味のある専攻を選択し、その分野を深く探求することができます。

医療の現場で起きている、医師や看護師では解決できない患者さんの生活を、医療ソーシャルワーカーとして支えるソーシャルワーカーを目指しましょう。

 

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社会福祉科 4年制【高度専門士】

高校卒業以上

国家資格:社会福祉士・精神保健福祉士

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