コラム

未来の作業療法士ロボット?

ここ数年の情報・通信技術の発展により、私たちの生活においても大きな変化が起きています。

インターネットやクラウド技術の発達、スマートフォンに代表される携帯機器の普及やコンピュータの処理能力の向上といった情報通信技術(ICT)の発達によって、あらゆるものがインターネットでつながるIoT (Internet of Things)や、人工知能(Artificial Intelligence)技術の実用化により、100年に1度と言われる「デジタル革命」が始まっています。

 

作業療法士が働く身近な医療や福祉の分野においても、ICTの導入が進んでおり、診療やカンファレンスなどがデジタルネットワークに接続されることにより業務の効率化が進み、連絡・連携不足や人手不足やなどの課題解決に期待されています。

 

例えば、体の関節可動域の角度を映像データから判別したり、筋力の強度を簡単に数値化できる機器が出てきたりと、学生時代に必死で練習していた実技の技術も、簡単・正確・短時間で行えるようになってきました。

また最近では作業療法士が得意として行っていた「もの作り」が、デザインを考えるだけで3Dプリンターから自助具などが自動作成されたり、作った作品を販売し就労に繋げる支援としての活用も行われ始めています。

 

この様なICT化の波は私たちの生活や職務を一変させてしまうほどの可能性を秘めており、現在行われてる作業療法士の仕事の一端も機器やロボットが担っていく時代になるのでしょうか。

 

<10年後には作業療法士ロボットが誕生する??>

ICT化の波によって、急激に私たちの職務が変わってしまう事は間違いありませんが、その中でも作業療法士という職業は最新型ロボットによって置き換えることが出来るのでしょうか?

例えば、現在でも問診表をタッチパネルで入力し自動血圧器で血圧測定をすることなどの体調管理は人が介入しなくてもできるようになっており、今後もリハビリ器具の使い方や運動のサポートなども自動で行えるようになっていくと思います。

 

2013年に「雇用の未来」という論文(マイケル・オズボーン機械学習教授)では、米国の702の職業を分析し10年後にAIによって雇用が失われやすい職業の順位を発表しました。その中で作業療法士はAIに置き換わりにくい仕事として医療職の中で2番目に位置しており、看護師や薬剤師、理学療法士と比較しても格段に継続できる職業であるという事が明らかになりました。

 

これは作業療法士の強みである「心理的な支援」が出来る職業であるからだと思います。

 

AIが得意なことは計算やタスクの処理から結果を出すこと。苦手なことは結果を説明することやその過程を共感することです。

 

例えば、転倒して骨折した患者さんが「痛いから歩きたくない」と言われたら、言葉の通り歩かないことを選択することは解決にはならないし、痛みについて追及し鎮痛剤の使用することも本意の解決には結びつかないことがあります。

痛いから歩きたくないという「辛く苦しく感じている感情」をくみ取り、共感をもってから話し合うことで「歩く」作業を受け入れてくれるようになることがあります。人と人とが気持ちを通わせる対人援助の仕事こそが、ロボットにはできないことではないでしょうか?

 

人が人を支援する、対人援助職は、今後のAIやICTが普及する時代においても変わらずに求められていく事かと思います。今後ますます発展していくAIやICTといったツールを、使用する際の適性や対象者との適合をサポートする作業療法士が求められるようになっていくのではないのでしょうか。

恐らく10年後も全自動の作業療法士ロボットはできないと思いますが、作業療法士とロボットが共に作業療法を提供する時代は来るのかもしれません。

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この記事を書いた人

大塚 真史 先生

本校 作業療法士科を卒業後、都内の総合病院にて勤務。主に脳血管・整形外科疾患の方を対象とした入院・外来・訪問での作業療法を実施。その後埼玉県内の急性期病院にてリハビリテーション科の立ち上げで作業療法士科の外来リハビリテーション・がん患者リハビリテーション・在宅復帰チームの開設に貢献。 Projects Abroard にてカンボジア(NBIC)とタイ王国(KSEC)で障害児のケアプロジェクトにも参加し、国際的にも貢献している。

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