作業療法士と理学療法士の違いは? どっちがいいか、仕事内容を紹介
「作業療法士」と「理学療法士」の仕事内容は共通することが多いです。しかし、どちらの職も患者の健康を治すことは同じであり、仕事内容の違いについて区別しづらいのが現状です。作業療法士や理学療法士を目指す場合は、それぞれの仕事の違いについて具体的に知っておくとご自身の希望するほうを選択できるでしょう。
そこで今回は、作業療法士と理学療法士の違いについて詳しく解説します。それぞれの資格を取得するために、専門学校を探している方もぜひ参考にしてください。
目次
理学療法士と作業療法士との違いを比較
理学療法士と作業療法士は、以下のような違いがあります。国家資格の合格率や目的、仕事内容、就職先について確認しましょう。
理学療法士 | 作業療法士 | |
国家資格 | 〇 | 〇 |
合格率(令和6年度) | 89.2% | 84.1% |
目的 | 立つ動作や座る動作などの基本動作の回復を目指す。社会復帰することを目的とする | 機能の回復が主な目的であり、身体的だけでなく精神的にも回復を目指す |
仕事内容 | 基本動作の回復、リハビリの提供 | 応用動作などの機能回復、リハビリの提供 |
就職先 | リハビリテーション、医療機関、福祉施設など | リハビリテーション、総合病院、一般病院、福祉施設など |
理学療法士と作業療法士の共通点
理学療法士と作業療法士の仕事内容にはいくつか違いがありますが、まずは共通する仕事内容について紹介します。
1.資格と資格取得までの流れ
作業療法士と理学療法士の資格を取得するには、どちらも国家試験に合格しなければいけません。また、国家試験を受験するためには、国に定められたカリキュラムを履修することで受験資格を満たせます。したがって、学校に通わず独学では資格を取得できないため注意が必要です。
作業療法士や理学療法士を目指せる学校の種類は、4年制大学、短期大学(3年制)、専門学校(3、4年制)、特別支援学校(視覚障害者対象)などがあります。視覚障害者の方が特別支援学校に通って資格を取得するのは、理学療法士のみです。
2.合格率・難易度
作業療法士と理学療法士の合格率をみると、どちらとも80%を超えています。どちらの試験もそれほど難易度は変わらず、国家試験のなかでは比較的易しい試験です。したがって、養成学校で決められたカリキュラムを取得し、しっかり受験対策を行えばそれほど難しい試験ではないといえます。
学校により、国家試験の対策を丁寧に行ってくれる学校もあります。一発合格できるか不安な方は、専門学校や大学に通う生徒の合格率を確認しましょう。80%の合格率を下回っている学校は、あまりサポートを行っていない可能性があります。学校の公式ホームページで合格率を掲載していることが多いです。
3.就職場所
作業療法士と理学療法士の共通する働き先としては、医療機関が挙げられます。医療機関では総合病院やリハビリテーションなどのあるところで働くことが多いです。
作業療法士は教育や就労機関、保険などの領域で働けることがあり、就職の幅が広い特徴があります。理学療法士の就職場所としてはスポーツ関連の施設で働けることがあり、スポーツ関連の仕事を目指したい方は理学療法士がおすすめです。
4.給与
作業療法士と理学療法士の給与は、ほぼ変わりません。どちらもリハビリ職に該当するため、厚生労働省の給与調査では同じ分類で集計されます。作業療法士と理学療法士の給与の平均額は、月額36万程度です。就職先や勤続年数に応じて収入が変わるため一概にいえませんが、看護師の給与よりは少し少なめです。
しかし、作業療法士と理学療法士はどちらとも技術職でもあるため、資格取得や昇給を目指せば年収を上げられます。将来的に作業療法士と理学療法士の需要が増すことが考えられるため、とくに給与について心配する必要はないでしょう。
5.就職状況
作業療法士と理学療法士は、高齢化の影響により需要が高まりつつあります。どちらも求人数が多く働き先も豊富なため、ご自身の希望の就職先を選べるでしょう。作業療法士と理学療法士はAIが発展したとしても、仕事がなくなることはないといわれています。なぜなら、作業療法士と理学療法士は人と人との関わりが必要なため、AIには行えない業務だからです。
作業療法士と理学療法士の需要が高いということは、転職しやすい職種といえます。国家資格を持っておくと、転職活動で大きくアピールすることにつながります。
理学療法士と作業療法士との主な違い
ここまで理学療法士と作業療法士の仕事内容の共通点について解説しましたが、異なる点もいくつかあります。作業内容や目的の違いなどを把握しておくことで、ご自身がどちらの職を選ぶべきかがわかるでしょう。ここでは、理学療法士と作業療法士の主な違いについて解説します。
1.仕事内容
理学療法士の仕事内容は、主に身体機能のリハビリテーションを行います。たとえば、歩行が困難な方に向けて平行棒を使用して歩く練習をしたり、筋肉を動かす練習を行ったりします。動かすトレーニングだけでなく、マッサージや電気刺激などを与えて療法を行う場合もあります。
理学療法士の仕事内容は、高齢化が進んだ影響により仕事の需要は高まりました。健康を維持し症状を軽減するためにも、理学療法士の活躍が期待されています。また、理学療法士は高齢者だけでなく、スポーツ選手などのサポートも積極的に行います。スポーツのけが予防や復帰の手助けなども業務の一環のため、スポーツ関連で働きたい方には理学療法士がおすすめです。
一方、作業療法士の仕事内容は日常生活で必要な動作や応用的動作を目的とし、社会で適応していくためのリハビリを主に行います。たとえば、着替えや入浴、食事、料理の練習などが挙げられます。訓練する内容は患者の状態や環境により異なり、必要な動作を作業療法士といっしょに訓練します。
作業療法士の仕事は、身体的だけでなく精神的サポートも行います。病気やけがが原因で身体機能が低下した方もいるため、患者の気持ちを考えながらサポートを行う必要があります。
2.目的
作業療法士と理学療法士の目的は共通する部分が多いですが、細かく分けると少し違いがあります。理学療法士の仕事は、立つ動作や歩行動作などの基本動作に加えて、運動機能の向上や回復を行う目的があります。
一方、作業療法士の仕事は日常生活で行う動作を訓練することから、精神面のサポートまで幅広く支援を行う目的があります。どちらの業務も患者の身体機能の向上を目的とすることは同じですが、どのような目的で訓練を行うかは少し異なります。
理学療法士は運動機能の回復を行う専門家であり、作業療法士は生きがいを提供する専門家と考えるとよいでしょう。理学療法士は高齢者からスポーツ選手など、幅広い方を対象としています。運動機能の向上だけでなく、症状を予防することや健康を維持することなど、その方に応じた施術が求められます。
作業療法士は、細かい動作の訓練を行います。理学療法士のリハビリテーションでは大きな動作が多いですが、作業療法士の訓練は手先の訓練だけのものもあります。患者が自分らしく生活できるように、精神面のサポートも行うため精神科で働く作業療法士もたくさんいます。
3.勉強内容
理学療法士と作業療法士になるための勉強内容は、どちらもリハビリテーションの専門職であるため、学ぶべき内容が同じことが多いです。1年次には、「生理学」や「運動学」、「リハビリテーション」、「解剖学」などの勉強内容が共通しています。
2年次以降では、理学療法士の場合は「運動療法」や「物理療法」などの運動機能の専門的なことを学びます。作業療法士の場合は、「精神障害治療」や「発達障害治療」などの精神的な治療法についても学びます。
これらのカリキュラムは大学や専門学校などにより学ぶ順序が異なりますが、理学療法士と作業療法士の学ぶ勉強内容は共通している内容が多いです。
学校で学ぶべき必修カリキュラムは決められていますが、ご自身の目指す職種が決まっている場合は、仕事で活かせる資格を取得することも検討しましょう。ほかの資格をもっておくことで就職に活かせる場合があり、ご自身の希望の企業に就職しやすくなります。学校選びで迷う場合は、資格取得のサポートが充実しているところを探すのが望ましいです。
理学療法士と作業療法士どちらか悩んだ場合
理学療法士と作業療法士の仕事内容は共通していることが多く、どちらを選ぶとよいか迷う方が多いです。最後まで決められない場合は、仕事内容で決めましょう。
理学療法士の場合は、運動機能の改善を行う専門家であるためスポーツに関わる仕事がしたい方に向いています。今まで部活動などスポーツをしていた方は、理学療法士のほうがよいかもしれません。スポーツ経験者はケガした方の気持ちがわかるため、患者の気持ちに寄り添って働ける可能性が高いです。
作業療法士の場合は、患者の生活をサポートしたいと思う方に向いています。高齢者だけに限らず、小児分野の現場で働ける場合があるため、子どもが好きな方にもおすすめです。身体的だけでなく、精神的にもサポートできる優しい気持ちを持っている方は作業療法士を目指しましょう。
最終的な判断で迷った場合は、具体的な仕事内容で決める方法がよいです。それぞれの仕事内容を詳しく知ることで、ご自身がその仕事に向いているかがわかります。詳しく仕事内容を調べても判断がつかない場合は、両方の資格を取得する選択肢もあります。
理学療法士と作業療法士、両方の資格を取る場合の流れ
理学療法士と作業療法士の両方の資格を取得する方もいます。両方の資格を取得する流れとしては、まずはどちらかの資格取得を目指します。どちらかの資格を取得すると共通する科目が免除されるため、学校に通う期間が短くなります。まずは、先に取得したいほうを選び資格を取得しましょう。
両方の資格を取得すると、就職の幅が広がりご自身の希望の就職先をみつけやすくなります。両方の資格を持っている方はそれほど多くはなく、採用試験においてダブルライセンスは大きなアピールとなります。両方の資格を持っていると昇給や給与の高い企業に転職できる可能性が上がるため、興味のある方はダブルライセンスも視野に入れましょう。
理学療法士も作業療法士もそれほど難しい試験ではありません。きちんと国家試験対策を行うと、一発合格を目指せます。作業療法士と理学療法士の試験内容は共通する問題も出題されるため、どちらかの資格を取得している方なら合格しやすいといえます。
まとめ
今回は、作業療法士と理学療法士の違いについて解説しました。作業療法士と理学療法士の仕事内容は異なる部分もありますが、患者の身体的機能回復を目指す点では共通しています。リハビリを行い、健康を目指す目的があるため、患者に寄り添って働ける方がどちらの職にも向いているでしょう。作業療法士と理学療法士の違いについてよく理解を深めて、資格取得を目指してください。