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遊びの専門家、作業療法士

● 子どもと関わる仕事を探しているあなたへ

子どもに関わる仕事といえば、何を思い浮かべるでしょうか?
きっと学生の方であれば、「保育園や幼稚園、学校の先生」などを想像するかもしれません。あるいは、自身の経験や身近な人の話から、「カウンセラー」や「小児科の先生」などを思い浮かべる方もいるでしょう。
でも実は、世の中には「まだ知られていない」子どもと関わる仕事がたくさんあります。
作業療法士も、そんな仕事のひとつかもしれません。

● 子どもと関わる仕事あれこれ

子どもと関わる仕事を分類すると、以下のような分野があります。
1.教育系(保育園・幼稚園・学校の先生など)
2.医療系(医師・看護師・リハビリセラピストなど)
3.福祉系(児童発達支援・社会福祉士・相談員など)
4.心理系(心理士・カウンセラーなど)
5.サービス系(塾講師・民間スクールなど)
私たちは子どもを中心に分野を越えて連携しながら、子どもの命や幸せ、学びを支えています。
作業療法士は病院や児童発達支援施設はもちろん、近年では保育園や幼稚園に勤務する人も増えました。さらに、「学校作業療法(SchoolOT)」の必要性が注目され社会全体が動き始めています。
では、なぜ作業療法士はこれほど多くの場で求められているのでしょうか?

● 作業療法士ができること

作業療法士の「作業」とは、人が行うすべての活動を指します。
つまり、子どもや家族、周囲の人たちが「やりたい!」と思う大切なことを様々な理論や方法で支援していくのが私たちの仕事です。
作業療法の中心には「PEOモデル」という考え方があります。
これは「人(Person)」「環境(Environment)」「作業(Occupation)」の3つの要素が調和することで、その人らしい作業活動が実現できるという考えです。
この考えは、作業療法士の3つの強みにつながります。
1.心と体の医学的知識
2.作業・動作の分析力
3.環境調整の技術
これらの強みを活かして医療・福祉・教育など、あらゆる分野で活躍できるのです。

● 私の仕事は「子どもと遊ぶ」こと!

私の作業療法の対象は、重症心身障害児、自閉スペクトラム症やADHDのお子さん、あるいは特に障害を持たない学生まで多岐にわたります。
その中でも私が特に情熱を注いでいるのが、未就学の特別な支援を必要とする子どもたちです。
「言葉が出ない」「感覚過敏がある」「感情、情緒が乱れやすい」そんな子どもたちには、発達的な問題が背景にあるのかもしれません。
そしてその問題は、巡りめぐって「うまく遊べない」という状態を引き起こします。
子どもが自然に行う遊びには発達を促す多くの要素が含まれています。つまり、「うまく遊べない」ことは「うまく発達できない」ことに繋がっているのです。
私は作業療法士として、子どもたちとコミュニケーションを取り、楽しく遊びながら発達支援を提供しています。
毎朝「おはよー!その靴、かっこいいね!」とハイタッチをし、手をつないでダンスをしたり、乗り物に乗って「キャーキャー」と遊んだり、時には失敗してみんなで笑い合ったり。そんな毎日を過ごしています。
「困りごとのある」「難しい」と思われがちな子どもたちも、「人と関わりながら遊ぶ力」を必ず持っています。
その力が発揮され、「楽しく遊ぶ」子どもの姿を見て保護者の方は喜び、時には嬉し涙を流すこともあります。
子どもと関わる作業療法士には、とても大きな力があるのです。
ここでは、そんな「子どもの作業療法のコツ」をこっそり皆さんにお伝えします。

● 子どもの作業療法のコツ

① 子どもをよく観察する

子どもをよく観察してみましょう。どんな体つきかな?どんな動き方かな?
こんなことが分かるんだな、勘違いしてるかも? あれが好きで、これが嫌いなんだな……。
そんなふうに観察していると、「もしかしたらこんなことが出来るかも?」「こんなふうにしたら伝わるかも!」と、新しい発見があるかもしれません。

② 子どもの“周り”をよく観察する

子どもに向けていた目線を、少し周囲に移してみましょう。
空間があり、床や壁、家具などもあるかもしれません。あ、棚の中には玩具が入っているようです。
さっきの子どもは……何をしたらいいかわからず、ウロウロしているようです。
「彼の好きなボールを出そうかな……」。これは立派な環境調整という手法です。
作業療法士は、対象者の環境(周囲の人や物、場所など)にアプローチして、遊びを引き出していきます。

③ 遊びを分析する

次は、「何をするか」というところに目を向けてみましょう。
仮にキャッチボールをするとして、相手の正面に立ち、ボールをちょうどいい力で相手の方に投げる。
相手が受け取ったら、投げ返してくるのを待ち、返ってきたボールをキャッチする。
一つの遊びの中にも、実は手順やルールがたくさん存在しています。

この子は何が出来るかな? どこを手伝えば、あとは自分で出来るかな?
ここまで考えることが出来れば、あなたはすでに立派な作業療法士といえるでしょう。

● 発達を促すいろんな遊び

私が作業療法に取り入れてきた遊びの一部をご紹介します。

1.感覚遊び

触る・揺れる・見るなどの感覚刺激を楽しむ遊び。子どもたちはこの遊びが大好きです。目をキラキラさせる子どもたちの姿はあなたの宝物になるでしょう。

2.運動遊び

登る・渡る・滑る・くぐるなど、基本的な身体運動を取り入れた遊びやブランコなどに乗って揺れたりする遊び。人は自分の身体の大きさや動き、姿勢の細かな調整など様々なことを脳で処理をしていますが、上手になるにつれて無意識に処理できるようになっていきます。何より「楽しい!」と思えることが上達の近道です。

3.制作遊び

お絵かき、ハサミや糊を使った制作などの遊び。作品を完成させることも良いですが、姿勢や道具の使い方、構成力やイメージなど多くの要素を含んでいます。友達が集まって大きな作品が出来ていくところは非常に見応えがある遊びでもあります。

● 子どもは減っているのに、子どもの作業療法士になって大丈夫?

大丈夫です!
作業療法士の主な領域は「身体障害」「老年期」「精神障害」「発達(子ども)」の4つですが、発達領域はまだ全体の5〜10%ほどと言われています。
一方で、支援が必要な子どもは増えており、児童発達支援事業所や学校作業療法の推進も進んでいます。地域では、5歳児健診に発達領域の作業療法士が関わる動きもあります。
また、作業療法士は保育園や幼稚園、学童などのコンサルテーションをすることが出来ます。先生たちのやりたいことと子どもたちの想いを繋げ、「その子らしい(その先生らしい)やり方」を見つけるお手伝いができるのです。
就職率も高く、まだまだ求められている分野です。
子どもと関わる就職先としては以下のような場があります。
•児童発達支援事業所
•放課後等デイサービス
•保育園、幼稚園
•小児病院
•小学校、特別支援学校
•地域の子育て支援現場
ぜひ、将来の選択肢のひとつとして考えてみてください。

● まとめ

子どもたちは、とても人懐っこく、かわいらしい存在です。
周囲の大人たちは、そんな子どもたちを大切に育んでいこうとしています。
あなたが「子どもに目を向け」「かわいいな」と思い、手を振りかえす。
それはもう、子どもの作業療法士としての立派な才能です。
実は、理論や技術以上に大切なものかもしれません。
あなたが笑いながら子どもと遊び、その遊びが子どもの成長につながる。
そんな作業療法士を、みんなが待っています。

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関連学科

作業療法士科 4年制【高度専門士】

高校卒業以上

国家資格:作業療法士、幼稚園教諭

コラム:カテゴリー

作業療法士幼稚園教諭

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